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第九十七話『非戦闘員』

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「私も連れて行ってください!」
とにっこり笑顔でアイリーが言った。

この港の町『リーバー』で一番の天才と名高い、船のエンジニア、美少女アイリーがそう言った。

「え、でも、君、戦闘できないよね?」と僕が聞く。
「私がいないと運転できないですよ!」とにっこり笑う。

笑顔の中にピリッとした空気が流れる。

「う、なにげに、交渉されてる?」
と、美少女アイリーの、大人しい、がその目の奥にあるちからに、気圧されている。その交渉力なにげに手強い。船の販売というビジネスをやっているのだから、実は得意なのかもしれなかった。

みんなに助けを求めるように、周りを見るが、ヒビキさんとキョウちゃんとハーデスちゃんはなんか遊んでるし・・・。
と、思っているとカナデが助け舟を出してくれた。

「命の保証ができないのよ?」
とカナデが言う。そう、それを言いたかった。

「私はどうしても、新しい世界がみたいの!!」
とアイリーも答える。その情熱は凄いものだった、それのためにいろいろ勉強したのだろうな、ということが伺える。

「命はもちろん惜しい。だけど新しい世界に行ってみたいの!そのためにこの蒸気船も作ったわ!」
と情熱を示すアイリー。

「わかった!あなたの命はコータが守るわ!」
とあっさり折れるカナデ。速くないですか?と笑う僕。
「え?僕?」
しかも護衛を僕に押し付けてる・・・。

「僕はハーデスちゃんで手一杯なんだけど・・・」
とカナデにいう。

「ハーデスちゃんは立派な戦闘員だから大丈夫よ!」
と、カナデが言うと、ピクーンとハーデスちゃんが聞きつける。
「ワシが立派じゃと!?!?」
と話に入ってくるハーデスちゃん。

「ハーデスちゃん・・・ややこしくなるから、今は・・・遊んでて・・・」と僕が言うと、ヒビキさんがそれを察して、元の遊びに連れ戻した。

「私が船を運転する!あなた達がモンスターと戦う!どう?取引条件としてはいいと思うけど!」
と言うアイリー。

「成立しないと、どちらも新大陸に行けないし、成立すれば両方新大陸に行けるわ!」
としっかりと交渉してくるアイリー。現代風の言葉で言うと、確かにwin-winだった。

困った僕は、ハーデスちゃんに聞いてみた。
「ハーデスちゃん、アイリーも一緒に新大陸行きたいんだって、良い?」
「もちろんじゃ!!ワシが守ってやるわい!!」
なにげにしっかり聞いていたらしい。ハーデスちゃんだった。

「ほら、ハーデスちゃんが守ってくれるって!」とカナデが微笑む。
「ハーデスちゃんをコータが守れば、ハーデスちゃんがアイリーを守ってくれるわ!完璧じゃない!」とカナデが言う。
「その理論・・・穴だらけな気がするんですけど・・・」
と笑う。けど、他に方法は思いつかない。

「うーん、まあいいか、なんとかなるだろう!」
と根拠の無い結論に落ち着いた。

「じゃあ、一緒に行こう、アイリー!」
「取引成立ね!」

「うん、一緒に新大陸に行こう!」
と僕らは握手した。
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