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019 しゃぶる
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「フィリップ、ミスリル貨を10枚用意してくれ」
「あ、ああ」
フィリップがアレクサンダーの言葉に頷いて部屋を出る。きっと宝物室に行ったのだろう。ミスリル貨は、数々の宝物が飾られた部屋の一番奥にある大きな金庫の中に保管されているのを知っている。
「さて、ミスリル貨は君の要望通りに用意しよう。これで、パーティに入ってくれるね?」
どうして僕がパーティに入ることが当たり前みたいな言い草なんだろうね?
「それは、ミスリル貨を確認してからだね」
「そうか……」
アレクサンダーが机の上で手を組み、僕を見ながら苦笑いを浮かべている。その余裕を崩したいな。笑えなくしてやるよ。
「ところで、あれからアンナの調子が悪いのだけど、なにか知っているかい?」
調子が悪い、ね……。
「知ってるよ」
「ほう?」
僕の答えを聞いて、アレクサンダーがピクリと眉を震わせる。
「クルト、君は何を知っているんだい? やはり君のギフトと関係が?」
「それもミスリル貨の後にしようか」
「ふむ……」
「ねぇクルト。何か知ってるなら教えて。私、本当に困っているの。だから……」
アンナが、まるで縋るような表情で僕を見る。たしかに、当事者であるアンナには、人生を左右するほどの重要な問題だろう。
「クルト、アンナがこれだけ言ってるんだ。お前はなにも感じないのか?」
今まで黙っていたルドルフが、僕を責めるような目で見てくるけど、僕の方こそ疑問だ。
「君たちは、今まであれだけ悪態をついていた相手に対して、なにも感じないの?」
普通、謝罪の1つでもあると思うんだけど? 僕はまだ君達から一度も謝罪の言葉を聞いてないよ。
「それは……」
アンナは気まずそうに顔を伏せるだけかわいげがあるね。
「君の言う通りだ。今まですまなかったね」
「ああ、すまなかった。この通りだ」
アレクサンダーとルドルフは、即座に謝罪の言葉を口にするけど、今更言われてもまったく誠意を感じないよ。
「ごめんなさい、クルト。本当にごめんなさい。だから、意地悪しないで早く教えて……」
アンナの謝罪も情報の欲しさが先走って、いまいち誠意を感じないよね。結局、彼らにとって大事なのは【勇者】のギフトであって僕じゃないと云うことなのだろう。どうして過去の僕は、彼らを仲間だと信じようと努力していたんだろうね……。
「持ってきたぜ」
過去の自分を虚しく思っていると、フィリップが大きめの銀のトレイを両手に持って現れる。トレイの上には、リングケースのような黒のベルベットの張られた箱が10個並んでいた。この中に入っているのかな? まるで高価な装飾品のような扱いだ。
「ほれ」
フィリップに押し付けられるようにしてトレイごと受け取ると、僕はトレイをテーブルに置き、箱を1つ手に取る。パカッと箱を開くと、虹色に煌めく銀のコインが鎮座していた。大きさは親指と人差し指で丸を作ったくらい。けっこう大きい。手に取ると、驚くほど軽いことが分かる。まるで羽でも持っているかのように、その見た目と釣り合わないほど軽い。
七色に輝く羽のように軽い銀。聞いていたミスリルの特徴と一致する。おそらく、本物のミスリル貨だろう。僕はパカパカと箱を開けていくと、次々に中のミスリル貨を回収していく。
「丁重に扱いたまえよ」
アレクサンダーの言葉なんて無視して、僕は左手の中に集まった10枚のミスリル貨を見つめる。僕の片手に収まるほどの10枚のコイン。これだけで王都の一等地に家が建つほどの価値があるとか頭がおかしくなりそうだ。僕は震えそうになる手でミスリル貨をズボンのポケットにしまう。穴なんか開いてないって分かってるけど、ポケットに穴が開いてないか心配になるな。こんな高価な物を持ったのは初めてだ。持っているだけで緊張してしまう。
「気は済んだかね?」
アレクサンダーに無言で頷くと、アレクサンダーの鋭い視線が僕を射抜く。僕は負けずとアレクサンダーを睨み返した。
「では、パーティに入ってくれるね? 教えてもらおうか。君の知っていることを」
「え? 入らないけど?」
「は?」
僕の答えが気に入らないのか、アレクサンダーたちの視線が厳しくなる。
「僕は、慰謝料としてミスリル貨を貰いに来ただけだよ。でも、僕の知ってることを教えてあげてもいいよ?」
その方が絶望してくれそうだからね。
「ふむ……まずは情報だけでも喋ってもらおうか」
僕はアレクサンダーに右手を開いて差し出した。
「じゃあ、払うもの払おうか。情報料だよ?」
「てめぇ、あんまナメてっとぶっ殺すぞ…!」
フィリップがまたキレてるけど無視だ。カルシウム足りてないよ?
僕はアレクサンダーをじっと見つめる。彼はどうするだろう?
「……いいだろう」
少しの間考えたアレクサンダーが出した答えは、情報料を払うだった。まぁそうだろうね。
「それじゃあミスリル貨を用意してもらおうかな。君たちが言っていたように、僕はポーターとしても使えない雑魚だからね。あまり重い物は持てないんだ」
「あ、ああ」
フィリップがアレクサンダーの言葉に頷いて部屋を出る。きっと宝物室に行ったのだろう。ミスリル貨は、数々の宝物が飾られた部屋の一番奥にある大きな金庫の中に保管されているのを知っている。
「さて、ミスリル貨は君の要望通りに用意しよう。これで、パーティに入ってくれるね?」
どうして僕がパーティに入ることが当たり前みたいな言い草なんだろうね?
「それは、ミスリル貨を確認してからだね」
「そうか……」
アレクサンダーが机の上で手を組み、僕を見ながら苦笑いを浮かべている。その余裕を崩したいな。笑えなくしてやるよ。
「ところで、あれからアンナの調子が悪いのだけど、なにか知っているかい?」
調子が悪い、ね……。
「知ってるよ」
「ほう?」
僕の答えを聞いて、アレクサンダーがピクリと眉を震わせる。
「クルト、君は何を知っているんだい? やはり君のギフトと関係が?」
「それもミスリル貨の後にしようか」
「ふむ……」
「ねぇクルト。何か知ってるなら教えて。私、本当に困っているの。だから……」
アンナが、まるで縋るような表情で僕を見る。たしかに、当事者であるアンナには、人生を左右するほどの重要な問題だろう。
「クルト、アンナがこれだけ言ってるんだ。お前はなにも感じないのか?」
今まで黙っていたルドルフが、僕を責めるような目で見てくるけど、僕の方こそ疑問だ。
「君たちは、今まであれだけ悪態をついていた相手に対して、なにも感じないの?」
普通、謝罪の1つでもあると思うんだけど? 僕はまだ君達から一度も謝罪の言葉を聞いてないよ。
「それは……」
アンナは気まずそうに顔を伏せるだけかわいげがあるね。
「君の言う通りだ。今まですまなかったね」
「ああ、すまなかった。この通りだ」
アレクサンダーとルドルフは、即座に謝罪の言葉を口にするけど、今更言われてもまったく誠意を感じないよ。
「ごめんなさい、クルト。本当にごめんなさい。だから、意地悪しないで早く教えて……」
アンナの謝罪も情報の欲しさが先走って、いまいち誠意を感じないよね。結局、彼らにとって大事なのは【勇者】のギフトであって僕じゃないと云うことなのだろう。どうして過去の僕は、彼らを仲間だと信じようと努力していたんだろうね……。
「持ってきたぜ」
過去の自分を虚しく思っていると、フィリップが大きめの銀のトレイを両手に持って現れる。トレイの上には、リングケースのような黒のベルベットの張られた箱が10個並んでいた。この中に入っているのかな? まるで高価な装飾品のような扱いだ。
「ほれ」
フィリップに押し付けられるようにしてトレイごと受け取ると、僕はトレイをテーブルに置き、箱を1つ手に取る。パカッと箱を開くと、虹色に煌めく銀のコインが鎮座していた。大きさは親指と人差し指で丸を作ったくらい。けっこう大きい。手に取ると、驚くほど軽いことが分かる。まるで羽でも持っているかのように、その見た目と釣り合わないほど軽い。
七色に輝く羽のように軽い銀。聞いていたミスリルの特徴と一致する。おそらく、本物のミスリル貨だろう。僕はパカパカと箱を開けていくと、次々に中のミスリル貨を回収していく。
「丁重に扱いたまえよ」
アレクサンダーの言葉なんて無視して、僕は左手の中に集まった10枚のミスリル貨を見つめる。僕の片手に収まるほどの10枚のコイン。これだけで王都の一等地に家が建つほどの価値があるとか頭がおかしくなりそうだ。僕は震えそうになる手でミスリル貨をズボンのポケットにしまう。穴なんか開いてないって分かってるけど、ポケットに穴が開いてないか心配になるな。こんな高価な物を持ったのは初めてだ。持っているだけで緊張してしまう。
「気は済んだかね?」
アレクサンダーに無言で頷くと、アレクサンダーの鋭い視線が僕を射抜く。僕は負けずとアレクサンダーを睨み返した。
「では、パーティに入ってくれるね? 教えてもらおうか。君の知っていることを」
「え? 入らないけど?」
「は?」
僕の答えが気に入らないのか、アレクサンダーたちの視線が厳しくなる。
「僕は、慰謝料としてミスリル貨を貰いに来ただけだよ。でも、僕の知ってることを教えてあげてもいいよ?」
その方が絶望してくれそうだからね。
「ふむ……まずは情報だけでも喋ってもらおうか」
僕はアレクサンダーに右手を開いて差し出した。
「じゃあ、払うもの払おうか。情報料だよ?」
「てめぇ、あんまナメてっとぶっ殺すぞ…!」
フィリップがまたキレてるけど無視だ。カルシウム足りてないよ?
僕はアレクサンダーをじっと見つめる。彼はどうするだろう?
「……いいだろう」
少しの間考えたアレクサンダーが出した答えは、情報料を払うだった。まぁそうだろうね。
「それじゃあミスリル貨を用意してもらおうかな。君たちが言っていたように、僕はポーターとしても使えない雑魚だからね。あまり重い物は持てないんだ」
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