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第二章
070 罠
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「ここが内壁の城門ですか……」
石の庭園を抜けた僕たちは、ついに本城……ではなく、本城をぐるりと囲むように建つ城壁の城門へとたどり着いた。先程くぐった城門は外壁の城門と呼ばれ、今度は内壁の城門だ。『万魔の巨城』の本城は、二重の城壁に守られた堅牢な城なのである。
「ここで初戦闘なのよね?」
「そうだよ」
僕はルイーゼに頷いて応え、僕はおさらいの意味も込めて口を開く。
「この内壁の城門が『万魔の巨城』での初戦闘になるね。相手はリビングアーマーって呼ばれる中身は空っぽの動く全身鎧だよ。壁に隠れて見えないけど、あの城門に入ってすぐの所で、大剣を振りかぶった状態で待機しているんだ。なにも知らずに入ったら、そのまま斬られて即死だろうね。完全に初見殺しの罠みたいなものだよ」
「うへー。感じ悪ぅー……」
マルギットが眉を寄せて苦い顔をする。マルギットのギフトは【罠師】。どんなトラップでも感知、無力化、応用ができるすごいギフトだけど、こういったモンスターの待ち伏せのような罠は、感知も無力化できない。
おそらく、情報が無ければ、犠牲になるのは、パーティの斥候であるマルギットだ。トラップを全て感知できるがゆえに、なんの警戒も無くモンスターの罠に嵌まってしまうだろう。マルギットにとっては天敵のような罠だ。嫌そうな顔をするのも分かる
「そのリビングアーマーって中身が無いのよね? どうしたら倒せるの? 鎧をバラバラに引き裂くとか?」
「バラバラに引き裂くって……」
ルイーゼの発想、暴力的過ぎない?
「胸の真ん中に大きな赤い宝石が填め込まれているんだ。それがリビングアーマーの本体。その宝石を破壊すると倒せるよ」
「なるほど。リビングアーマーは全部で何体居ますか?」
「2体だね。城門の左右の壁の向こうに隠れているよ」
「分かりました」
ラインハルトは僕の答えに頷くと、少し考える様子を見せた後、口を開く。
「……敵はリビングアーマーが2体。問題はどう誘き寄せるかですが……」
「そのままシュッと行ってザシュッじゃダメなの?」
ルイーゼの擬音ばかりでよく分からない話に、ラインハルトは少し困った表情を見せた。
「それでは全員が戦闘に参加できません。できれば全員でレベル7ダンジョンのモンスターの強さを肌身で感じることが理想です」
僕たち『融けない六華』にとっては、ダンジョンレベルを一気に2つも飛ばした初めての高レベルダンジョンだ。自分たちの実力が通じるのかどうか、ここで試しておきたいのだろう。
「じゃーいつもどーり、あーしがパシュッと連れてくるのはー?」
マルギットが背中に担いでいたへヴィークロスボウを構えてみせる。たしかに、それができれば一番良いんだけど……。
「射線が通らないように上手く隠れてるんだよねー……」
「うざー……」
「仕方ないわねー!」
マルギットと一緒にうんざりしていると、ルイーゼが肩にかかった金髪を手で後ろにふぁさっと弾きながら声を上げる。何気ない仕草だけど、ルイーゼの細い首筋が露わになって、ちょっとドキドキする。
「あたしが中に突っ込んで連れてくるわ!」
「それは……」
城門の中のリビングアーマーは、大剣を振りかぶって待っている。そんな所に飛び込むのだから、当然危険だ。下手をすれば、即死もありえる。でも、他に良い手が思い浮かばないのも事実だし……。
「ここはルイーゼに任せてみましょう」
なかなか決断が下せない僕にラインハルトがそっと囁く。
「私たちの中で一番重要な役割は、パーティの盾であるルイーゼです。ルイーゼの実力が通用するのなら、私たちは戦えます」
たしかに、盾役として敵の攻撃を一身に受けるルイーゼが、敵の攻撃を凌げるのなら、戦術次第では敵を倒すこともできるかもしれない。逆に、ルイーゼが敵の攻撃に押し潰されるようなことがあれば、その時はパーティの壊滅だ。盾役を失ったパーティほど脆いものはない。ルイーゼは、まさしくパーティの試金石だ。
でもその方法だと、もしルイーゼが一撃で倒されてしまった場合、どうしたらいいのだろう? 僕たちだけでリビングアーマーを倒し、ルイーゼを復活させることができるだろうか? こんな序盤で、そんな賭けみたいなことして、本当にいいのだろうか?
「………」
いまだに答えを出せずに迷う僕に、ラインハルトが柔らかい笑みを見せる。ホッと安心して、思わず頼りたくなってしまう笑みだ。
「大丈夫ですよ。ルイーゼならやり遂げてくれます」
ルイーゼに目を向けると、ルイーゼは力強く頷いてみせた。
「当然よ! あたしに任せなさい!」
「ルイーゼ……」
心配は完全に晴れたわけじゃない。でも、僕はルイーゼとラインハルトを信じることにした。
「ルイーゼ、頼むよ……」
言ってしまってから後悔する。本当にこれで良かったのだろうか? ルイーゼの命をチップにギャンブルみたいなマネをして……もっといい手があったんじゃないだろうか? いつまでも迷いが残る。
リーダーって……決断するのってこんなに苦しいものなんだ……。
しかし、僕の後悔など知らないとばかりに、ルイーゼが強気な満面の笑みを浮かべてみせた。
「もう! そんな暗い顔しなくても、あたしは大丈夫よ。まぁ見てなさいって!」
石の庭園を抜けた僕たちは、ついに本城……ではなく、本城をぐるりと囲むように建つ城壁の城門へとたどり着いた。先程くぐった城門は外壁の城門と呼ばれ、今度は内壁の城門だ。『万魔の巨城』の本城は、二重の城壁に守られた堅牢な城なのである。
「ここで初戦闘なのよね?」
「そうだよ」
僕はルイーゼに頷いて応え、僕はおさらいの意味も込めて口を開く。
「この内壁の城門が『万魔の巨城』での初戦闘になるね。相手はリビングアーマーって呼ばれる中身は空っぽの動く全身鎧だよ。壁に隠れて見えないけど、あの城門に入ってすぐの所で、大剣を振りかぶった状態で待機しているんだ。なにも知らずに入ったら、そのまま斬られて即死だろうね。完全に初見殺しの罠みたいなものだよ」
「うへー。感じ悪ぅー……」
マルギットが眉を寄せて苦い顔をする。マルギットのギフトは【罠師】。どんなトラップでも感知、無力化、応用ができるすごいギフトだけど、こういったモンスターの待ち伏せのような罠は、感知も無力化できない。
おそらく、情報が無ければ、犠牲になるのは、パーティの斥候であるマルギットだ。トラップを全て感知できるがゆえに、なんの警戒も無くモンスターの罠に嵌まってしまうだろう。マルギットにとっては天敵のような罠だ。嫌そうな顔をするのも分かる
「そのリビングアーマーって中身が無いのよね? どうしたら倒せるの? 鎧をバラバラに引き裂くとか?」
「バラバラに引き裂くって……」
ルイーゼの発想、暴力的過ぎない?
「胸の真ん中に大きな赤い宝石が填め込まれているんだ。それがリビングアーマーの本体。その宝石を破壊すると倒せるよ」
「なるほど。リビングアーマーは全部で何体居ますか?」
「2体だね。城門の左右の壁の向こうに隠れているよ」
「分かりました」
ラインハルトは僕の答えに頷くと、少し考える様子を見せた後、口を開く。
「……敵はリビングアーマーが2体。問題はどう誘き寄せるかですが……」
「そのままシュッと行ってザシュッじゃダメなの?」
ルイーゼの擬音ばかりでよく分からない話に、ラインハルトは少し困った表情を見せた。
「それでは全員が戦闘に参加できません。できれば全員でレベル7ダンジョンのモンスターの強さを肌身で感じることが理想です」
僕たち『融けない六華』にとっては、ダンジョンレベルを一気に2つも飛ばした初めての高レベルダンジョンだ。自分たちの実力が通じるのかどうか、ここで試しておきたいのだろう。
「じゃーいつもどーり、あーしがパシュッと連れてくるのはー?」
マルギットが背中に担いでいたへヴィークロスボウを構えてみせる。たしかに、それができれば一番良いんだけど……。
「射線が通らないように上手く隠れてるんだよねー……」
「うざー……」
「仕方ないわねー!」
マルギットと一緒にうんざりしていると、ルイーゼが肩にかかった金髪を手で後ろにふぁさっと弾きながら声を上げる。何気ない仕草だけど、ルイーゼの細い首筋が露わになって、ちょっとドキドキする。
「あたしが中に突っ込んで連れてくるわ!」
「それは……」
城門の中のリビングアーマーは、大剣を振りかぶって待っている。そんな所に飛び込むのだから、当然危険だ。下手をすれば、即死もありえる。でも、他に良い手が思い浮かばないのも事実だし……。
「ここはルイーゼに任せてみましょう」
なかなか決断が下せない僕にラインハルトがそっと囁く。
「私たちの中で一番重要な役割は、パーティの盾であるルイーゼです。ルイーゼの実力が通用するのなら、私たちは戦えます」
たしかに、盾役として敵の攻撃を一身に受けるルイーゼが、敵の攻撃を凌げるのなら、戦術次第では敵を倒すこともできるかもしれない。逆に、ルイーゼが敵の攻撃に押し潰されるようなことがあれば、その時はパーティの壊滅だ。盾役を失ったパーティほど脆いものはない。ルイーゼは、まさしくパーティの試金石だ。
でもその方法だと、もしルイーゼが一撃で倒されてしまった場合、どうしたらいいのだろう? 僕たちだけでリビングアーマーを倒し、ルイーゼを復活させることができるだろうか? こんな序盤で、そんな賭けみたいなことして、本当にいいのだろうか?
「………」
いまだに答えを出せずに迷う僕に、ラインハルトが柔らかい笑みを見せる。ホッと安心して、思わず頼りたくなってしまう笑みだ。
「大丈夫ですよ。ルイーゼならやり遂げてくれます」
ルイーゼに目を向けると、ルイーゼは力強く頷いてみせた。
「当然よ! あたしに任せなさい!」
「ルイーゼ……」
心配は完全に晴れたわけじゃない。でも、僕はルイーゼとラインハルトを信じることにした。
「ルイーゼ、頼むよ……」
言ってしまってから後悔する。本当にこれで良かったのだろうか? ルイーゼの命をチップにギャンブルみたいなマネをして……もっといい手があったんじゃないだろうか? いつまでも迷いが残る。
リーダーって……決断するのってこんなに苦しいものなんだ……。
しかし、僕の後悔など知らないとばかりに、ルイーゼが強気な満面の笑みを浮かべてみせた。
「もう! そんな暗い顔しなくても、あたしは大丈夫よ。まぁ見てなさいって!」
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