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29 フアナとフェリシエンヌ
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ゲームでは、フェリシエンヌとフアナは仲良しだった。フェリシエンヌが落ち込んだ時、エステルではなくフアナが慰めて叱咤激励するシーンもあったほどだ。
二人を接触させるのはヤバい。そんな直感がオレの脳内を走った。
フアナの目がフェリシエンヌとエステルを捉える。
「だれ?」
「フアナ! 帰ってきたのか。ちょっと難しい話してるから、オレと一緒に外で遊んでようか!」
オレは即座に立ち上がると、フアナを家の外に押し出そうとする。
しかし、フアナはオレの手をひょいと避けると居間に上がってしまった。
「フアナか。ちょうどいい、ここに座ってワシの話を聞いていろ」
「ちょ!? ホアキン!? フアナにはまだ難しいだろ!?」
「族長になるのに必要な知識だ。いずれ習う必要がある」
「そういうのはあんたの子どもに教育してやれ!」
「ワシに子はおらん」
「知ってるぞ、ホアキン! あんた最近エレナちゃんといい感じらしいな! さっさと子どもを作れ!」
「お、おま!? フアナの前で何を言ってるんだ!?」
「叔父さん、本当?」
「んぐ!? いや、その……な?」
フアナに訊かれてたじたじのホアキンだった。
まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。どうにかしてフアナを外に出さないと!
「フアナ、ホアキンも困ってるから、早く外に行こう」
「あなただれ?」
しかしフアナはオレの言葉を無視してフェリシエンヌに尋ねてしまった。
「わたくしはフェリシエンヌ・マルブランシェですわ。あなたのお名前は?」
「フアナはフアナ」
くっ!? フアナがフェリシエンヌを認知してしまった。早くしないと!
「ほら、挨拶も済んだだろ? 早く外に行くぞ」
「や」
「ぐッ!?」
オレも居間に上がってフアナを抱っこして強制的に連れて行こうとしたらオレを手で押し退けるようにして拒否されてしまった。
たしかに、たしかに強引だったけどさ……。そんな全力で拒否しなくてもいいじゃん。傷付くわぁ……。
「で、でも、フアナには難しいお話してるし、退屈だよ?」
「大丈夫」
「え?」
何が大丈夫なんだろう?
「フアナ、成績優秀。きっとわかる」
「くっ!?」
オレは居間になってようやく覚った。そうだった。フアナは負けず嫌いだった。フアナには難しいなんて言ったら、反発するに決まってる!
ど、どうする?
「ぐぬぬ……」
「バルタザールはどうしたんだ? べつにフアナに伏せる理由なんてないだろ?」
ホアキンにこう言われてしまえば、オレにはもう為す術はない。
「たしかにないが……」
「聞いて毒になる話でもないんだ。むしろ勉強になる。フアナ、よく聞いてるんだぞ」
「ん」
まぁ、一度や二度会ったからといって、フェリシエンヌとフアナが即親友になるわけじゃないよね。この場は仕方がないと諦めて、次回から二人の接触を防いでいこう。
そう思っていたのだが……。
「かわいそう……」
フェリシエンヌの話を聞いて、フアナはめちゃくちゃ感情移入していた。今にも泣いちゃいそうなほどだ。
これ、やっぱりマズいんじゃね?
「叔父さん……」
「うむ……」
いやホアキン! うむ……。じゃねえよ!
「ホアキン、フアナに族長の何たるかを教えるんじゃなかったのか?」
「そ、そうだったな。フアナ、たしかにこの者たちは憐れではある。助けたいか?」
「助けたい」
「そうか。では、この者たちを助けるために、一族の者たちに死んでこいと命じられるか?」
「……できない」
フアナは悔しそうにふるふると首を横に振った。オレとしては一安心だ。
「そうだ、できない。それでいい。いいか、フアナ? お前のこの者たちを助けたいという気持ちは本物だろう。だが、族長の決定は一族全員の決定だ。軽々しく決めてはいけない。いいな?」
「ん……」
「よし。さて……」
ホアキンがフェリシエンヌたちを見やった。
「勝手に教材にして悪かったな。だが、そういうわけだ。虎族としてお前たちに協力することは難しい。わかってくれ」
「そう、ですか……」
フェリシエンヌはがっくりと肩を落としてホアキンの言葉を飲み込んだ。
「ワシは仕事に行く」
そう言ってホアキンが家を出て行った。残されたのは冷たく沈んだ空気と俯いたフアナたち。
「ごめん。力になれない……」
「いえ、フアナさんが謝ることでは……。わたくしたちもお暇しますわ」
「ん。そこまで送る……」
やれやれ。なんだか肩の荷が下りた気分だ。
フアナと一緒にフェリシエンヌたちを村の外に送った。
もう日は傾き、赤い夕陽が辺りを照らしていた。
「では、本日はありがとうございました。ここまででけっこうですわ」
「ん……。また来る?」
「来てもよろしいのですか? わたくしたちは……」
「いい」
「ありがとうございます」
また来るのか……。
正直、これ以上接触してほしくない。だが、あんまり野暮なことは言えないな。
そんなことを思いながら、オレはフアナと一緒に森へと消えていくフェリシエンヌたちを見送った。
二人を接触させるのはヤバい。そんな直感がオレの脳内を走った。
フアナの目がフェリシエンヌとエステルを捉える。
「だれ?」
「フアナ! 帰ってきたのか。ちょっと難しい話してるから、オレと一緒に外で遊んでようか!」
オレは即座に立ち上がると、フアナを家の外に押し出そうとする。
しかし、フアナはオレの手をひょいと避けると居間に上がってしまった。
「フアナか。ちょうどいい、ここに座ってワシの話を聞いていろ」
「ちょ!? ホアキン!? フアナにはまだ難しいだろ!?」
「族長になるのに必要な知識だ。いずれ習う必要がある」
「そういうのはあんたの子どもに教育してやれ!」
「ワシに子はおらん」
「知ってるぞ、ホアキン! あんた最近エレナちゃんといい感じらしいな! さっさと子どもを作れ!」
「お、おま!? フアナの前で何を言ってるんだ!?」
「叔父さん、本当?」
「んぐ!? いや、その……な?」
フアナに訊かれてたじたじのホアキンだった。
まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。どうにかしてフアナを外に出さないと!
「フアナ、ホアキンも困ってるから、早く外に行こう」
「あなただれ?」
しかしフアナはオレの言葉を無視してフェリシエンヌに尋ねてしまった。
「わたくしはフェリシエンヌ・マルブランシェですわ。あなたのお名前は?」
「フアナはフアナ」
くっ!? フアナがフェリシエンヌを認知してしまった。早くしないと!
「ほら、挨拶も済んだだろ? 早く外に行くぞ」
「や」
「ぐッ!?」
オレも居間に上がってフアナを抱っこして強制的に連れて行こうとしたらオレを手で押し退けるようにして拒否されてしまった。
たしかに、たしかに強引だったけどさ……。そんな全力で拒否しなくてもいいじゃん。傷付くわぁ……。
「で、でも、フアナには難しいお話してるし、退屈だよ?」
「大丈夫」
「え?」
何が大丈夫なんだろう?
「フアナ、成績優秀。きっとわかる」
「くっ!?」
オレは居間になってようやく覚った。そうだった。フアナは負けず嫌いだった。フアナには難しいなんて言ったら、反発するに決まってる!
ど、どうする?
「ぐぬぬ……」
「バルタザールはどうしたんだ? べつにフアナに伏せる理由なんてないだろ?」
ホアキンにこう言われてしまえば、オレにはもう為す術はない。
「たしかにないが……」
「聞いて毒になる話でもないんだ。むしろ勉強になる。フアナ、よく聞いてるんだぞ」
「ん」
まぁ、一度や二度会ったからといって、フェリシエンヌとフアナが即親友になるわけじゃないよね。この場は仕方がないと諦めて、次回から二人の接触を防いでいこう。
そう思っていたのだが……。
「かわいそう……」
フェリシエンヌの話を聞いて、フアナはめちゃくちゃ感情移入していた。今にも泣いちゃいそうなほどだ。
これ、やっぱりマズいんじゃね?
「叔父さん……」
「うむ……」
いやホアキン! うむ……。じゃねえよ!
「ホアキン、フアナに族長の何たるかを教えるんじゃなかったのか?」
「そ、そうだったな。フアナ、たしかにこの者たちは憐れではある。助けたいか?」
「助けたい」
「そうか。では、この者たちを助けるために、一族の者たちに死んでこいと命じられるか?」
「……できない」
フアナは悔しそうにふるふると首を横に振った。オレとしては一安心だ。
「そうだ、できない。それでいい。いいか、フアナ? お前のこの者たちを助けたいという気持ちは本物だろう。だが、族長の決定は一族全員の決定だ。軽々しく決めてはいけない。いいな?」
「ん……」
「よし。さて……」
ホアキンがフェリシエンヌたちを見やった。
「勝手に教材にして悪かったな。だが、そういうわけだ。虎族としてお前たちに協力することは難しい。わかってくれ」
「そう、ですか……」
フェリシエンヌはがっくりと肩を落としてホアキンの言葉を飲み込んだ。
「ワシは仕事に行く」
そう言ってホアキンが家を出て行った。残されたのは冷たく沈んだ空気と俯いたフアナたち。
「ごめん。力になれない……」
「いえ、フアナさんが謝ることでは……。わたくしたちもお暇しますわ」
「ん。そこまで送る……」
やれやれ。なんだか肩の荷が下りた気分だ。
フアナと一緒にフェリシエンヌたちを村の外に送った。
もう日は傾き、赤い夕陽が辺りを照らしていた。
「では、本日はありがとうございました。ここまででけっこうですわ」
「ん……。また来る?」
「来てもよろしいのですか? わたくしたちは……」
「いい」
「ありがとうございます」
また来るのか……。
正直、これ以上接触してほしくない。だが、あんまり野暮なことは言えないな。
そんなことを思いながら、オレはフアナと一緒に森へと消えていくフェリシエンヌたちを見送った。
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