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003 ゲームスタート
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馬車でガタゴト揺られながら石畳の道を進んで行く。相変わらず酷い揺れだ。酔っちゃいそう。私は気を逸らそうと窓から外を覗く。
馬車から見える街並みは、石造りの立派なお屋敷が軒を連ねている。このあたりは貴族街なので立派な建物が多い。日本とは全然違う街並みだ。どこか古いヨーロッパの街並みを思わせる。時代はどれくらいなんだろう?貴族とかいるし中世とか?
馬車に揺られること30分程。大きな石造りの門をくぐり抜けて、やって来ました貴族院!ついにゲームの本編スタートの瞬間がきてしまった。今頃はプロローグでヒロインちゃんが自分語りをしている頃だろう。目の前には大きな庭園が広がり、その向こうには石造りの白亜の宮殿みたいな校舎が見える。すごい!ゲームの背景で見たとおりの光景だ!
「セーブ!」
私はおもむろに叫ぶ。今まではできなかったけど、ゲームの本編が開始した今なら、セーブできるんじゃないかと思って試すことにしたんだけど……何の変化もないわね。セーブできたという感覚もない。
「ロード!」
諦めきれず、ロードも試してみるけど、こちらも何の変化もない。やっぱり無理か…。セーブ&ロードができたら便利だと思ったのに。現実はそんなに甘くないみたい。乙女ゲームの世界なんだから、セーブ&ロードくらい実装しなさいよ!
「はぁ…」
私はため息をつき、空を見上げる。別にセーブ&ロードができなくて黄昏ているわけじゃない。攻略に必要なことだ。空は青々としていて、雲一つない晴天だった。でも重要なのは天気じゃない。鳥だ。私は鳥を探してる。それも小鳥とかではなく、大きな鳥、猛禽類を。
鳥を探してきょろきょろと空を見渡す。居ないわね。どこにいるのかしら?ゲーム通りなら現れるはずなんだけど…。木の枝に止まっているとか?街路樹を見ても、大きな鳥どころか、小鳥さえいない。本当にどこにいるのかしら?まさか、現れないとか?でも、ゲームでは現れたし…。やっぱり、ゲームと現実は違うということだろうか?でも、そうすると私の攻略計画を一から見直さないといけなくなる。お願いだから現れて…!
もう一度よく探そうを空を見上げた時、私に影が掛かった。え?
「ひょわ!?」
見ると、巨大な鳥が翼を広げ、足をこちらに向けて襲い掛かってくるところだった。足に生えた鋭い鉤爪に目を奪われる。あんなので引っ掻かれたら怪我じゃ済まない…!恐怖に身が竦み、動けない。私は怖くなって目を固く瞑った。
バサバサと耳元で羽ばたく音が聞こえる。顔に体に風が叩きつけられる。怖い。逃げるなんて考えは浮かばなかった。恐怖で頭が真っ白になった。怖い。
やがて、羽ばたく音が遠ざかり、恐る恐る目を開ける。鳥は居ない。羽ばたく音が聞こえた方に目を向けると、大きな鳥は、貴族院内に植えられた林の中へと消えていく。鳥の足には、何か丸いものがぶら下がっていた。
私は急いで頭上を確認する。無い。被っていた帽子が無い。あの鳥に取られたの?まさか、本当に鳥に帽子を取られるなんて。ということは、アレが私の探していた鳥なの?
ゲームの中で、ヒロインちゃんは帽子を鳥に取られるイベントが起きる。ゲームでは、帽子を取り返そうと鳥を追いかけるか、帽子を諦めるかの選択肢を選ぶことになる。ここでの選択で、第一王子ルートか、第二王子ルートかが決まる重要な選択肢だ。
私は鳥を追いかけることに決めた。第二王子ルートだ。私の好みとしては第一王子の方が好きなのだけど、第一王子ルートは攻略が難しいのだ。第一王子ルートはテストで良い点を取って生徒会に入らないといけない。私にそんな学力は無い。だから、第二王子ルートを攻略することに決めていた。それに、私の目標は王子達を仲直りさせること。王子との恋愛が目的ではないのだ。それには、簡単な第二王子ルートの方が良い。
鳥を追いかけて林の中へと入って行く。あの鳥にも名前があったのよねー。何だったかしら?たしかヘディングみたいな名前だったと思うんだけど……。出てこない。ストーリーで結構大事な役割がある鳥なんだけど、名前忘れちゃった。ゴメンね鳥さん。
鳥に謝りながら追いかけていると、鳥が背の低い木の向こうへと降りていくのが見えた。あそこか。私は立ち止まって、軽く弾んだ息を整えながら、周りを見る。目の前には、綺麗に刈られた背の低い木が、まるで塀の様に密集して生えており、向こうに行けない。どうにかして向こうに行けないかしら…。ん?あれは……!。私は木々の枝が枯れて落ち、這えば通れそうな木のトンネルが空いているのを見つけた。
「よいしょっと」
私はしゃがんでトンネルを覗きこむ。トンネルの向こうには明かりが見える。通り抜けれそうだ。そのまま這って木々の隙間に入って行く。木の枝が体に刺さってちょっと痛い。木陰だからか、地面が湿っていて手が汚れる。せっかくのおニューの制服なのに、汚れちゃったなー…。テンションが下がる。でも、たしかヒロインちゃんも這っていたし、ここで合っているはず…!私は出口に向かって突き進む。
「ん?」
「え?」
さっき男の人の声が聞こえたような…。
「誰だ!其処に居るのは!出て来い!」
男の人が怒鳴っている。もしかして、私に言っているのだろうか?なんか怖いから出ていきたくないなぁ…。
「出て来ないならば…斬る!」
斬る!?いきなり物騒過ぎない!?
馬車から見える街並みは、石造りの立派なお屋敷が軒を連ねている。このあたりは貴族街なので立派な建物が多い。日本とは全然違う街並みだ。どこか古いヨーロッパの街並みを思わせる。時代はどれくらいなんだろう?貴族とかいるし中世とか?
馬車に揺られること30分程。大きな石造りの門をくぐり抜けて、やって来ました貴族院!ついにゲームの本編スタートの瞬間がきてしまった。今頃はプロローグでヒロインちゃんが自分語りをしている頃だろう。目の前には大きな庭園が広がり、その向こうには石造りの白亜の宮殿みたいな校舎が見える。すごい!ゲームの背景で見たとおりの光景だ!
「セーブ!」
私はおもむろに叫ぶ。今まではできなかったけど、ゲームの本編が開始した今なら、セーブできるんじゃないかと思って試すことにしたんだけど……何の変化もないわね。セーブできたという感覚もない。
「ロード!」
諦めきれず、ロードも試してみるけど、こちらも何の変化もない。やっぱり無理か…。セーブ&ロードができたら便利だと思ったのに。現実はそんなに甘くないみたい。乙女ゲームの世界なんだから、セーブ&ロードくらい実装しなさいよ!
「はぁ…」
私はため息をつき、空を見上げる。別にセーブ&ロードができなくて黄昏ているわけじゃない。攻略に必要なことだ。空は青々としていて、雲一つない晴天だった。でも重要なのは天気じゃない。鳥だ。私は鳥を探してる。それも小鳥とかではなく、大きな鳥、猛禽類を。
鳥を探してきょろきょろと空を見渡す。居ないわね。どこにいるのかしら?ゲーム通りなら現れるはずなんだけど…。木の枝に止まっているとか?街路樹を見ても、大きな鳥どころか、小鳥さえいない。本当にどこにいるのかしら?まさか、現れないとか?でも、ゲームでは現れたし…。やっぱり、ゲームと現実は違うということだろうか?でも、そうすると私の攻略計画を一から見直さないといけなくなる。お願いだから現れて…!
もう一度よく探そうを空を見上げた時、私に影が掛かった。え?
「ひょわ!?」
見ると、巨大な鳥が翼を広げ、足をこちらに向けて襲い掛かってくるところだった。足に生えた鋭い鉤爪に目を奪われる。あんなので引っ掻かれたら怪我じゃ済まない…!恐怖に身が竦み、動けない。私は怖くなって目を固く瞑った。
バサバサと耳元で羽ばたく音が聞こえる。顔に体に風が叩きつけられる。怖い。逃げるなんて考えは浮かばなかった。恐怖で頭が真っ白になった。怖い。
やがて、羽ばたく音が遠ざかり、恐る恐る目を開ける。鳥は居ない。羽ばたく音が聞こえた方に目を向けると、大きな鳥は、貴族院内に植えられた林の中へと消えていく。鳥の足には、何か丸いものがぶら下がっていた。
私は急いで頭上を確認する。無い。被っていた帽子が無い。あの鳥に取られたの?まさか、本当に鳥に帽子を取られるなんて。ということは、アレが私の探していた鳥なの?
ゲームの中で、ヒロインちゃんは帽子を鳥に取られるイベントが起きる。ゲームでは、帽子を取り返そうと鳥を追いかけるか、帽子を諦めるかの選択肢を選ぶことになる。ここでの選択で、第一王子ルートか、第二王子ルートかが決まる重要な選択肢だ。
私は鳥を追いかけることに決めた。第二王子ルートだ。私の好みとしては第一王子の方が好きなのだけど、第一王子ルートは攻略が難しいのだ。第一王子ルートはテストで良い点を取って生徒会に入らないといけない。私にそんな学力は無い。だから、第二王子ルートを攻略することに決めていた。それに、私の目標は王子達を仲直りさせること。王子との恋愛が目的ではないのだ。それには、簡単な第二王子ルートの方が良い。
鳥を追いかけて林の中へと入って行く。あの鳥にも名前があったのよねー。何だったかしら?たしかヘディングみたいな名前だったと思うんだけど……。出てこない。ストーリーで結構大事な役割がある鳥なんだけど、名前忘れちゃった。ゴメンね鳥さん。
鳥に謝りながら追いかけていると、鳥が背の低い木の向こうへと降りていくのが見えた。あそこか。私は立ち止まって、軽く弾んだ息を整えながら、周りを見る。目の前には、綺麗に刈られた背の低い木が、まるで塀の様に密集して生えており、向こうに行けない。どうにかして向こうに行けないかしら…。ん?あれは……!。私は木々の枝が枯れて落ち、這えば通れそうな木のトンネルが空いているのを見つけた。
「よいしょっと」
私はしゃがんでトンネルを覗きこむ。トンネルの向こうには明かりが見える。通り抜けれそうだ。そのまま這って木々の隙間に入って行く。木の枝が体に刺さってちょっと痛い。木陰だからか、地面が湿っていて手が汚れる。せっかくのおニューの制服なのに、汚れちゃったなー…。テンションが下がる。でも、たしかヒロインちゃんも這っていたし、ここで合っているはず…!私は出口に向かって突き進む。
「ん?」
「え?」
さっき男の人の声が聞こえたような…。
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