24 / 35
023 怒られる私
しおりを挟む
「聞きましたよ、マリアベル!貴女、システィーナ様を差し置いて、シュヴァルツ殿下に近づいたんですって!?」
お父様とお母様に呼び出されて食堂に行くと、早速とばかりに顔を赤くしたお母様に問い詰められてしまった。2人は今日、晩餐会に出かけていた。きっとそこで色々と聞いてきたのだろう。いつかバレてしまう時がくるとは思っていたけど、今日がその日だったらしい。できれば永遠に来てほしくなかったな……。
「挙句の果てには、シュヴァルツ殿下ときき、キキキ、キスまで交わしたとか!本当ですか!?」
お母様が更に顔を赤くして問い詰めてくる。お父様が宥めているけど、全然効果が無い。お父様頑張って!
「本当です……」
私は素直に答えた。あんなに大勢の前でしたんだもの、嘘を吐いても意味が無いわ。キスの事を思い出して、胸がトクンと脈打ち、体温が上がり、顔が熱くなる。私、しちゃったんだ……シュヴァルツと、キス……。それもあんなに人が見てる前で……。改めて思い返すと恥ずかしくなる。
私の顔は、今赤くなっているだろう。でも、私の話を聞いたお母様の顔はどんどん青ざめていく。
「まあ!まあ!まあ!ああ、嘘だと言ってください、神様!まさか、わたくしの娘が、こんなふしだらな娘になってしまうだなんて!」
ふしだらって酷いわね。なにもキスくらいで大げさね、と思わなくもない。でも、この国の常識だとお母様の反応の方が普通なのだろう。そのあたりお堅いのよねーこの国。女性には異常なくらい貞淑さが求められるのだ。
「どうしましょう!?こんなに噂がたっていては、まともな婚約者なんて見つかるはずないわ!」
今、社交界はシュヴァルツの婚約破棄と並んで、私の事が噂の中心になっているらしい。なんでも『天才を堕とした希代の悪女』と呼ばれているとか。なんかもう言いたい放題言われてるわね。
きっと、あのパーティに居た貴族の子ども達が、親に報告したのだろう。私の悪評は、貴族院の中だけではなく、今や国中に広まってしまったようだ。
それにしても『天才を堕とした希代の悪女』って……。たしかに、シュヴァルツ派閥の人達から見れば、シュヴァルツを惑わした悪い女に映るんでしょうけど……さすがに酷くない?
今日、両親は私と兄の婚約者を探しに晩餐会に出たみたいだ。そこで自分たちの娘が『天才を堕とした希代の悪女』なんて呼ばれていて、お母様は気絶しちゃったみたい。噂の事実を確かめようと急いで帰って来たらしい。
両親には悪いことをしたと思わなくもないけれど、私に婚約者なんて必要ない。シュヴァルツが、あの天才が「任せておけ」と言ったのだ。何か手があるはず。少なくともシュヴァルツが諦めるまでは私も諦めたくない。シュヴァルツのこと信じていたい。
「わたくしはシュヴァルツ殿下と結ばれます!」
「貴女まだそんなことを!良いですか、王家と我が家ではつり合いが取れないのです!」
そんなことは分かってる。でも!
「シュヴァルツ殿下が任せておけと」
「シュヴァルツ殿下が貴女との婚約を宣言したことも聞いています。でも!そんなものは女を落とすための方便です!事実、貴女は唇を奪われてしまったではないですか!いい加減に目を覚ましなさい、マリアベル!貴女には、貴女に相応しい殿方がきっといるはずです。お母様たちがきっと探してきます。だからシュヴァルツ殿下の事は忘れてしまいなさい」
お母様が心配そうに、まるで懇願するように見つめてくる。お母様は私を一心に心配しているのだと分かる。でも。それでも。私はシュヴァルツの事を信じていたい!
「少なくともシュヴァルツ殿下の婚約者が決まるまでは、わたくしも婚約者を決めません!」
これが私の妥協できるボーダーラインだ。
「マリアベル!」
「まぁまぁフレア。マリーも時間が必要だろうし……」
再びヒートアップしそうなお母様を、お父様が宥めにかかる。
「あなた……。あなたはマリーが心配ではないのですか!?」
「そんなことはない。シュヴァルツ殿下に婚約者ができればマリーも諦めがつくだろう。それにマリーに婚約者を決めるのも今は時期が悪い。時間が必要だよ。それに……」
お父様がお母様を説得し始めた。頑張れお父様!私が心の中でお父様にエールを送っていると、それまで黙って座っていたお兄様が口を開いた。
「母上、マリーはシュヴァルツ殿下を、言うなれば大将を討ち取ったのです。褒めこそすれ、叱るのは……」
お兄様が頓珍漢な事を言い始めた。お兄様……私を擁護してくれる気持ちは有り難いけど……話ちゃんと聞いてた?どこまで脳筋なのよ!
「はぁー…アル……貴方も別の意味で問題ね……。もっと恋愛に興味を持ちなさい。そんなだからその年で婚約者ができないのですよ」
お母様が、頭が痛いと言わんばかりに頭を抱え、ため息を吐いた。
お父様とお母様に呼び出されて食堂に行くと、早速とばかりに顔を赤くしたお母様に問い詰められてしまった。2人は今日、晩餐会に出かけていた。きっとそこで色々と聞いてきたのだろう。いつかバレてしまう時がくるとは思っていたけど、今日がその日だったらしい。できれば永遠に来てほしくなかったな……。
「挙句の果てには、シュヴァルツ殿下ときき、キキキ、キスまで交わしたとか!本当ですか!?」
お母様が更に顔を赤くして問い詰めてくる。お父様が宥めているけど、全然効果が無い。お父様頑張って!
「本当です……」
私は素直に答えた。あんなに大勢の前でしたんだもの、嘘を吐いても意味が無いわ。キスの事を思い出して、胸がトクンと脈打ち、体温が上がり、顔が熱くなる。私、しちゃったんだ……シュヴァルツと、キス……。それもあんなに人が見てる前で……。改めて思い返すと恥ずかしくなる。
私の顔は、今赤くなっているだろう。でも、私の話を聞いたお母様の顔はどんどん青ざめていく。
「まあ!まあ!まあ!ああ、嘘だと言ってください、神様!まさか、わたくしの娘が、こんなふしだらな娘になってしまうだなんて!」
ふしだらって酷いわね。なにもキスくらいで大げさね、と思わなくもない。でも、この国の常識だとお母様の反応の方が普通なのだろう。そのあたりお堅いのよねーこの国。女性には異常なくらい貞淑さが求められるのだ。
「どうしましょう!?こんなに噂がたっていては、まともな婚約者なんて見つかるはずないわ!」
今、社交界はシュヴァルツの婚約破棄と並んで、私の事が噂の中心になっているらしい。なんでも『天才を堕とした希代の悪女』と呼ばれているとか。なんかもう言いたい放題言われてるわね。
きっと、あのパーティに居た貴族の子ども達が、親に報告したのだろう。私の悪評は、貴族院の中だけではなく、今や国中に広まってしまったようだ。
それにしても『天才を堕とした希代の悪女』って……。たしかに、シュヴァルツ派閥の人達から見れば、シュヴァルツを惑わした悪い女に映るんでしょうけど……さすがに酷くない?
今日、両親は私と兄の婚約者を探しに晩餐会に出たみたいだ。そこで自分たちの娘が『天才を堕とした希代の悪女』なんて呼ばれていて、お母様は気絶しちゃったみたい。噂の事実を確かめようと急いで帰って来たらしい。
両親には悪いことをしたと思わなくもないけれど、私に婚約者なんて必要ない。シュヴァルツが、あの天才が「任せておけ」と言ったのだ。何か手があるはず。少なくともシュヴァルツが諦めるまでは私も諦めたくない。シュヴァルツのこと信じていたい。
「わたくしはシュヴァルツ殿下と結ばれます!」
「貴女まだそんなことを!良いですか、王家と我が家ではつり合いが取れないのです!」
そんなことは分かってる。でも!
「シュヴァルツ殿下が任せておけと」
「シュヴァルツ殿下が貴女との婚約を宣言したことも聞いています。でも!そんなものは女を落とすための方便です!事実、貴女は唇を奪われてしまったではないですか!いい加減に目を覚ましなさい、マリアベル!貴女には、貴女に相応しい殿方がきっといるはずです。お母様たちがきっと探してきます。だからシュヴァルツ殿下の事は忘れてしまいなさい」
お母様が心配そうに、まるで懇願するように見つめてくる。お母様は私を一心に心配しているのだと分かる。でも。それでも。私はシュヴァルツの事を信じていたい!
「少なくともシュヴァルツ殿下の婚約者が決まるまでは、わたくしも婚約者を決めません!」
これが私の妥協できるボーダーラインだ。
「マリアベル!」
「まぁまぁフレア。マリーも時間が必要だろうし……」
再びヒートアップしそうなお母様を、お父様が宥めにかかる。
「あなた……。あなたはマリーが心配ではないのですか!?」
「そんなことはない。シュヴァルツ殿下に婚約者ができればマリーも諦めがつくだろう。それにマリーに婚約者を決めるのも今は時期が悪い。時間が必要だよ。それに……」
お父様がお母様を説得し始めた。頑張れお父様!私が心の中でお父様にエールを送っていると、それまで黙って座っていたお兄様が口を開いた。
「母上、マリーはシュヴァルツ殿下を、言うなれば大将を討ち取ったのです。褒めこそすれ、叱るのは……」
お兄様が頓珍漢な事を言い始めた。お兄様……私を擁護してくれる気持ちは有り難いけど……話ちゃんと聞いてた?どこまで脳筋なのよ!
「はぁー…アル……貴方も別の意味で問題ね……。もっと恋愛に興味を持ちなさい。そんなだからその年で婚約者ができないのですよ」
お母様が、頭が痛いと言わんばかりに頭を抱え、ため息を吐いた。
0
あなたにおすすめの小説
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
前世では地味なOLだった私が、異世界転生したので今度こそ恋愛して結婚して見せます
ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。
異世界の伯爵令嬢として生まれたフィオーレ・アメリア。美しい容姿と温かな家族に恵まれ、何不自由なく過ごしていた。しかし、十歳のある日——彼女は突然、前世の記憶を取り戻す。
「私……交通事故で亡くなったはず……。」
前世では地味な容姿と控えめな性格のため、人付き合いを苦手とし、恋愛を経験することなく人生を終えた。しかし、今世では違う。ここでは幸せな人生を歩むために、彼女は決意する。
幼い頃から勉学に励み、運動にも力を入れるフィオーレ。社交界デビューを目指し、誰からも称賛される女性へと成長していく。そして迎えた初めての舞踏会——。
煌めく広間の中、彼女は一人の男に視線を奪われる。
漆黒の短髪、深いネイビーの瞳。凛とした立ち姿と鋭い眼差し——騎士団長、レオナード・ヴェルシウス。
その瞬間、世界が静止したように思えた。
彼の瞳もまた、フィオーレを捉えて離さない。
まるで、お互いが何かに気付いたかのように——。
これは運命なのか、それとも偶然か。
孤独な前世とは違い、今度こそ本当の愛を掴むことができるのか。
騎士団長との恋、社交界での人間関係、そして自ら切り開く未来——フィオーレの物語が、今始まる。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる