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004 魔法と破滅の種
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「魔法だ……」
人差し指を立てたオレの右腕。人差し指の先には、まるで蝋燭のように火が灯っていた。
ゲーム『精霊の国』はファンタジー作品だ。魔法も存在しているのは知っていた。
だが、実際に自分が魔法を使えると、とんでもなくテンションが上がる!
「レオンハルト様は火の魔法がお得意のようですな」
目の前の先の折れ曲がったとんがり帽子を被った老魔法使いが立派なヒゲをしごきながら言った。
「ふむ。セリアも火の魔法が得意のようだね」
隣を見ると、髪を肩口で切りそろえたゲームでもお馴染みの髪型になっていたセリアの指先にも蝋燭のような火が灯っている。
そのことがなんとなく嬉しくなってしまった。
「お揃いだな!」
「はい……」
「ふぉっふぉっふぉ。ようごさいましたな」
目の前のいかにも魔法使いといった格好をした好々爺は、ドミニク。我がクラルヴァイン侯爵家の魔法の先生だ。昔は冒険者として名を挙げた名魔法使いだったらしい。
「ですが、魔法はなにが得意かよりも何属性の魔法を使えるかで力量が決まります。それだけ取れる手段が増えますからな。儂は四属性しか操れませんが、侯爵家の嫡子であるレオンハルト様は六属性を操れると聞いておりますぞ? さて、セリアはいったいいくつの属性が操れるのかの?」
ドミニクの言葉に一瞬だけセリアが体を固くする。王族であるセリアは七つの属性が使えるのだ。それは普通の平民にはありえない。セリアの正体が露見する可能性がある大問題だった。
「まぁ、普通の平民は十五の成人式で自分の使える属性がわかるから知らないのも無理はないの。今度、知り合いの僧侶に頼んで――――」
「それよりもドミニク! 魔法って何なんだ?」
「ふむ。そうですな。一口にいうのは難しいですが、魔法とは、精霊様のお力によるものです。精霊様が、その人間のために力を貸したいと思える相手。それが人の扱える属性の正体と言われております。だから人々は精霊様に感謝の祈りを捧げるのですな。故に、扱える属性が多いほど、人々に貴ばれます。これが貴族の始まりと言われておりますな」
ドミニクが朗々と語る。このあたりは公式設定資料集との矛盾はないな。
そして、レオンハルトが落ちぶれる原因もここにある。
「とはいえ、扱える属性は先天性のものと思われがちですが、後天的に変化することもありますぞ。儂も最初は三属性でしたが、いつの間にか扱える魔法が四属性に増えておりましたわい。ですので、レオンハルト様もセリアも、日々の言動には気を付けるのですぞ。精霊様はちゃんと見ておられます」
「ああ……」
「…………」
この世界では、精霊が信仰の対象になっている。そして、扱える属性の数が精霊から信頼を受けていることの証。
そんな世界において、レオンハルトは扱える属性が六から一に一気に減ってしまった。それだけ精霊の信頼を失ったとみなされ、嫡子から外され、バカにされるのだ。
まぁ、原因はイフリートと契約したからなんだけど、そのことは誰にも言えない。言ったらセリアの正体に気付く人間が出てくるかもしれない。
だから、レオンハルトは甘んじて精霊からの信頼を失くした人間だという周囲の決めつけを飲み込んだ。
それはどんなに悔しかっただろう。だが、それでもレオンハルトはセリアを守るという誓いに殉じた。
そして、それはオレにも確実に訪れる未来でもある。
十歳の誕生日を祝う式典で属性を調べられ、たった一つ、火の属性しか使えないことがバレてしまうのだ。
セリアを守ることは絶対だ。だが、オレは進んで家族との関係を壊したくないし、周囲の人間にバカにされるのも耐えられない。
なんとかしたいのだが……。どうすることができるだろう?
オレになにかできることがあるのか?
だが、たとえなにもできなず、周囲との関係が壊れようとも……。
オレはチラリと隣に座るセリアを見た。周囲の人どころか国まで奪われてしまった彼女を。
彼女を助ける。彼女を心から笑わせてみせる。彼女と一緒に幸せになってみせる。
オレの誓いに嘘はない!
人差し指を立てたオレの右腕。人差し指の先には、まるで蝋燭のように火が灯っていた。
ゲーム『精霊の国』はファンタジー作品だ。魔法も存在しているのは知っていた。
だが、実際に自分が魔法を使えると、とんでもなくテンションが上がる!
「レオンハルト様は火の魔法がお得意のようですな」
目の前の先の折れ曲がったとんがり帽子を被った老魔法使いが立派なヒゲをしごきながら言った。
「ふむ。セリアも火の魔法が得意のようだね」
隣を見ると、髪を肩口で切りそろえたゲームでもお馴染みの髪型になっていたセリアの指先にも蝋燭のような火が灯っている。
そのことがなんとなく嬉しくなってしまった。
「お揃いだな!」
「はい……」
「ふぉっふぉっふぉ。ようごさいましたな」
目の前のいかにも魔法使いといった格好をした好々爺は、ドミニク。我がクラルヴァイン侯爵家の魔法の先生だ。昔は冒険者として名を挙げた名魔法使いだったらしい。
「ですが、魔法はなにが得意かよりも何属性の魔法を使えるかで力量が決まります。それだけ取れる手段が増えますからな。儂は四属性しか操れませんが、侯爵家の嫡子であるレオンハルト様は六属性を操れると聞いておりますぞ? さて、セリアはいったいいくつの属性が操れるのかの?」
ドミニクの言葉に一瞬だけセリアが体を固くする。王族であるセリアは七つの属性が使えるのだ。それは普通の平民にはありえない。セリアの正体が露見する可能性がある大問題だった。
「まぁ、普通の平民は十五の成人式で自分の使える属性がわかるから知らないのも無理はないの。今度、知り合いの僧侶に頼んで――――」
「それよりもドミニク! 魔法って何なんだ?」
「ふむ。そうですな。一口にいうのは難しいですが、魔法とは、精霊様のお力によるものです。精霊様が、その人間のために力を貸したいと思える相手。それが人の扱える属性の正体と言われております。だから人々は精霊様に感謝の祈りを捧げるのですな。故に、扱える属性が多いほど、人々に貴ばれます。これが貴族の始まりと言われておりますな」
ドミニクが朗々と語る。このあたりは公式設定資料集との矛盾はないな。
そして、レオンハルトが落ちぶれる原因もここにある。
「とはいえ、扱える属性は先天性のものと思われがちですが、後天的に変化することもありますぞ。儂も最初は三属性でしたが、いつの間にか扱える魔法が四属性に増えておりましたわい。ですので、レオンハルト様もセリアも、日々の言動には気を付けるのですぞ。精霊様はちゃんと見ておられます」
「ああ……」
「…………」
この世界では、精霊が信仰の対象になっている。そして、扱える属性の数が精霊から信頼を受けていることの証。
そんな世界において、レオンハルトは扱える属性が六から一に一気に減ってしまった。それだけ精霊の信頼を失ったとみなされ、嫡子から外され、バカにされるのだ。
まぁ、原因はイフリートと契約したからなんだけど、そのことは誰にも言えない。言ったらセリアの正体に気付く人間が出てくるかもしれない。
だから、レオンハルトは甘んじて精霊からの信頼を失くした人間だという周囲の決めつけを飲み込んだ。
それはどんなに悔しかっただろう。だが、それでもレオンハルトはセリアを守るという誓いに殉じた。
そして、それはオレにも確実に訪れる未来でもある。
十歳の誕生日を祝う式典で属性を調べられ、たった一つ、火の属性しか使えないことがバレてしまうのだ。
セリアを守ることは絶対だ。だが、オレは進んで家族との関係を壊したくないし、周囲の人間にバカにされるのも耐えられない。
なんとかしたいのだが……。どうすることができるだろう?
オレになにかできることがあるのか?
だが、たとえなにもできなず、周囲との関係が壊れようとも……。
オレはチラリと隣に座るセリアを見た。周囲の人どころか国まで奪われてしまった彼女を。
彼女を助ける。彼女を心から笑わせてみせる。彼女と一緒に幸せになってみせる。
オレの誓いに嘘はない!
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