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011 VSホブゴブリン
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「ブレイズショット!」
発射された火弾がスライムに命中し、スライムを一瞬で蒸発させる。
灰色の石造りの通路が迷路のように入り組んだ空間。ダンジョンの第四階層にオレはいた。
あれからエドガーの行動を観察していたが、どうやら脅しが効果を発揮しているようでセリアにちょっかいをかける様子はなかった。
それに、エドガーは今勉強の時間だからな。
いざとなればカミラやドミニクたちに頼んでいるし、こうして屋敷から出歩いていても問題は無いだろう。
「そっちに行ったぞ!」
「だりゃあああ!」
元気のいい他の冒険者たちを横目に見ながら、オレはダンジョンをマッピングしながら進んでいく。
ゲームならマップは自動で書いてくれたが、現実にそんな便利な機能はない。
「ブレイズショット」
見つけたツノの生えたウサギを灰にしながら、どんどん進んでいく。
「行き止まりか……。ん?」
なにか小さな木の箱が落ちている。もしかするとアイテムか?
「ふーむ?」
木の箱は片手で持ち上げられるくらいの大きさだったが、まるでよくある宝箱のような見た目をしていた。
宝箱を開けると、中には白くて四角い固形物が入っていた。
「シャボンか……。はずれだな」
シャボン。ようは石鹸だ。ゲームでは換金アイテムとして登場していた。これといって効果のないただの石鹸。だが、いつも嗅いでいるいい匂いがした。
ダンジョンを抱える侯爵家だからね。ダンジョン産の石鹸なんて日常で使っているのだろう。
「一応、持っていくか」
背中に背負ったリュックに石鹸を突っ込むと、オレは手書きのマップを見ながら通路を引き返す。
『天の試練』ダンジョンには何度も挑戦し、クリアしたオレだが、さすがに各階層のマップを正確に覚えているわけじゃない。
だから、わりと行き止まりに行ってしまうが、行き止まりにはランダムで宝箱が湧いている場合がある。道を間違えるのも悪いことばかりじゃないな。
その後もスライムやゴブリン、ホーンラビットなどを倒しながら、オレは第五階層にたどり着いた。
「ボス戦は、どうするか……」
ダンジョンには、五階層ごとにボスが登場する。たしか、第五階層のボスはホブゴブリンだ。通常のゴブリンよりも攻撃力も防御力も高い。それが三体。
「まあ、いけるか」
そんな楽観的な考えでオレは第五階層の通路を進んでいく。
ゴブリンやスライムを『ブレイズショット』で一撃で倒し、どんどん進んでいく。途中でまた宝箱からを木の腕輪を手に入れた。物理攻撃力を+1してくれる初期アイテムだな。まぁ、こんなものでもないよりマシだろう。
「ここがボス部屋か……」
目の前には大きな両開きの扉があった。
ボスはホブゴブリンが三体。一対三ならこれまでに何度か経験してきた。『ブレイズショット』の威力も異常に強くて、これまでのモンスターを一撃で倒せてきたし、たぶんいけるだろう。
オレは大して緊張も覚悟も無く扉を開けてしまった。
ボス部屋は広い灰色の石造りの部屋になっていた。光源が無いのにまるで石自体が光っているように明るいのも同じだ。
その部屋の中央に、筋骨隆々としたマッチョマンがいた。三体のホブゴブリンだ。二メートル近いその体は、まるでゴブリンとは違う。もう別の種族だ。
あっけに取られている間に、三体のホブゴブリンがオレに向かって走り出す。
「ッ!? ブレイズショット! ブレイズショット!」
二体のホブゴブリンはオレの放ったブレイズショットによって激しく燃え上がる。
しかし、それまでだった。
「ブレッ!?」
三体目のホブゴブリンにもブレイズショットを放とうとしたが、距離が近すぎた。このままでは迎撃が間に合わない。もう既にホブゴブリンはオレを射程に収め、そのゴツイ腕でパンチを放っている。
オレはとっさに左手でホブゴブリンのパンチを受け止めようと手を伸ばしていた。混乱していたのか、オレの左手の指先にはいつものように小さな蝋燭のような火が灯っていたほどだ。
オレはダンジョンをナメていた代償をここで支払うことになる。
ボキキキッ! ボキャッ!
「うぐあっ!?」
まるで左腕が爆発したかのような衝撃でオレの体が吹き飛ぶ。
ボス部屋の床に叩きつけられたが、不思議と痛さは感じなかった。
それよりも優先することがある!
オレは急いで振り返ると、そこには盛大に燃え盛る最後のホブゴブリンの姿があった。
「え……?」
オレが疑問の声をあげると同時に、ホブゴブリンの体は崩れ去り、白い煙となって消えた。見渡してみても他にホブゴブリンの姿は無い。
それどころか、ボス討伐報酬である大きな宝箱があるくらいだ。
「倒した……?」
三体目のホブゴブリンに、オレは攻撃していないはずなんだが……。
「なんでだ?」
思い当たる節があるとすれば、それはホブゴブリンのパンチを左手で受け止めた時だ。オレは混乱していて、ついいつもやってるように左手の指先に蠟燭のような火を灯していた。
「その火で燃えた……?」
自分で言っていても、そんなバカなと思ってしまう。
指先に火を灯す魔法は、名前すらないような魔法だぞ?
そんな魔法にホブゴブリンを倒すような威力なんてあるわけがない!
発射された火弾がスライムに命中し、スライムを一瞬で蒸発させる。
灰色の石造りの通路が迷路のように入り組んだ空間。ダンジョンの第四階層にオレはいた。
あれからエドガーの行動を観察していたが、どうやら脅しが効果を発揮しているようでセリアにちょっかいをかける様子はなかった。
それに、エドガーは今勉強の時間だからな。
いざとなればカミラやドミニクたちに頼んでいるし、こうして屋敷から出歩いていても問題は無いだろう。
「そっちに行ったぞ!」
「だりゃあああ!」
元気のいい他の冒険者たちを横目に見ながら、オレはダンジョンをマッピングしながら進んでいく。
ゲームならマップは自動で書いてくれたが、現実にそんな便利な機能はない。
「ブレイズショット」
見つけたツノの生えたウサギを灰にしながら、どんどん進んでいく。
「行き止まりか……。ん?」
なにか小さな木の箱が落ちている。もしかするとアイテムか?
「ふーむ?」
木の箱は片手で持ち上げられるくらいの大きさだったが、まるでよくある宝箱のような見た目をしていた。
宝箱を開けると、中には白くて四角い固形物が入っていた。
「シャボンか……。はずれだな」
シャボン。ようは石鹸だ。ゲームでは換金アイテムとして登場していた。これといって効果のないただの石鹸。だが、いつも嗅いでいるいい匂いがした。
ダンジョンを抱える侯爵家だからね。ダンジョン産の石鹸なんて日常で使っているのだろう。
「一応、持っていくか」
背中に背負ったリュックに石鹸を突っ込むと、オレは手書きのマップを見ながら通路を引き返す。
『天の試練』ダンジョンには何度も挑戦し、クリアしたオレだが、さすがに各階層のマップを正確に覚えているわけじゃない。
だから、わりと行き止まりに行ってしまうが、行き止まりにはランダムで宝箱が湧いている場合がある。道を間違えるのも悪いことばかりじゃないな。
その後もスライムやゴブリン、ホーンラビットなどを倒しながら、オレは第五階層にたどり着いた。
「ボス戦は、どうするか……」
ダンジョンには、五階層ごとにボスが登場する。たしか、第五階層のボスはホブゴブリンだ。通常のゴブリンよりも攻撃力も防御力も高い。それが三体。
「まあ、いけるか」
そんな楽観的な考えでオレは第五階層の通路を進んでいく。
ゴブリンやスライムを『ブレイズショット』で一撃で倒し、どんどん進んでいく。途中でまた宝箱からを木の腕輪を手に入れた。物理攻撃力を+1してくれる初期アイテムだな。まぁ、こんなものでもないよりマシだろう。
「ここがボス部屋か……」
目の前には大きな両開きの扉があった。
ボスはホブゴブリンが三体。一対三ならこれまでに何度か経験してきた。『ブレイズショット』の威力も異常に強くて、これまでのモンスターを一撃で倒せてきたし、たぶんいけるだろう。
オレは大して緊張も覚悟も無く扉を開けてしまった。
ボス部屋は広い灰色の石造りの部屋になっていた。光源が無いのにまるで石自体が光っているように明るいのも同じだ。
その部屋の中央に、筋骨隆々としたマッチョマンがいた。三体のホブゴブリンだ。二メートル近いその体は、まるでゴブリンとは違う。もう別の種族だ。
あっけに取られている間に、三体のホブゴブリンがオレに向かって走り出す。
「ッ!? ブレイズショット! ブレイズショット!」
二体のホブゴブリンはオレの放ったブレイズショットによって激しく燃え上がる。
しかし、それまでだった。
「ブレッ!?」
三体目のホブゴブリンにもブレイズショットを放とうとしたが、距離が近すぎた。このままでは迎撃が間に合わない。もう既にホブゴブリンはオレを射程に収め、そのゴツイ腕でパンチを放っている。
オレはとっさに左手でホブゴブリンのパンチを受け止めようと手を伸ばしていた。混乱していたのか、オレの左手の指先にはいつものように小さな蝋燭のような火が灯っていたほどだ。
オレはダンジョンをナメていた代償をここで支払うことになる。
ボキキキッ! ボキャッ!
「うぐあっ!?」
まるで左腕が爆発したかのような衝撃でオレの体が吹き飛ぶ。
ボス部屋の床に叩きつけられたが、不思議と痛さは感じなかった。
それよりも優先することがある!
オレは急いで振り返ると、そこには盛大に燃え盛る最後のホブゴブリンの姿があった。
「え……?」
オレが疑問の声をあげると同時に、ホブゴブリンの体は崩れ去り、白い煙となって消えた。見渡してみても他にホブゴブリンの姿は無い。
それどころか、ボス討伐報酬である大きな宝箱があるくらいだ。
「倒した……?」
三体目のホブゴブリンに、オレは攻撃していないはずなんだが……。
「なんでだ?」
思い当たる節があるとすれば、それはホブゴブリンのパンチを左手で受け止めた時だ。オレは混乱していて、ついいつもやってるように左手の指先に蠟燭のような火を灯していた。
「その火で燃えた……?」
自分で言っていても、そんなバカなと思ってしまう。
指先に火を灯す魔法は、名前すらないような魔法だぞ?
そんな魔法にホブゴブリンを倒すような威力なんてあるわけがない!
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