【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)

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025 おめでた

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 父上と母上の寝室。貴族の領主の部屋としてはいささか以上に素朴な部屋の中にオレと老婆、父上、そして広いベッドに横になった母上がいた。狭い部屋なのでかなり窮屈だが、そんなことに文句も言っていられない。

 母上が妊娠したかもしれないからな!

「ほお……」

 母上のお腹の上に手を当てていた老婆が溜息のようなものを漏らした。

「それで、どうなのだ?」

 父上がシビレを切らしたように老婆たちに問いかける。

「領主様、おめでとうございます」
「というと?」
「アポリーヌ様、ご懐妊でございます。儂のギフトに反応しましたわい」
「なんとっ!? でかしたぞ! アポリーヌ!」
「あ、あなた!?」

 父上が母上の髪を優しく撫でてキスの雨を降らせていた。

 なんとも情熱的だねぇ。

「あなた、人が見てます」
「かまうものか! でかしたぞ、アポリーヌ!」
「ん……」

 人前ではしないようなディープキスを繰り広げる二人を見ながら、オレは感慨にふけっていた。

 父上も母上も第二子を望んでいたことを知っているからね。オレが生まれてもうすぐ十二年。その長い間、子宝に恵まれなかった二人にようやく訪れた祝福だ。オレも自分のことのように嬉しくなるよ。

「父上、母上、おめでとうございます!」
「うむ! アベルもこれで兄になるのだな。生まれてくる子に尊敬されるような良い兄になってくれ」
「アベル、ありがとう」

 父上が喜びを隠しきれないような笑顔を浮かべ、母上は少し恥ずかしそうに顔を染めていた。

 いやーめでたい限りだね。

「おめでとうごぜえます、領主様、奥方様!」
「おめでとごぜます!」
「これ、オラの畑で取れた野菜です! たくさん食って元気な子を産んでくだせえ!」
「オラからはこの山鳥を!」
「オラんとこは川魚でさあ!」
「森の果物ッス! 甘くておいしいッス!」
「果実酒持ってきました!」

 このめでたいニュースはその日のうちに村中に広がり、村人たちがひっきりなしに屋敷にやって来ては祝いの品を置いていった。

 こんなことになったのも父上が村人全員の生活を向上させたからだ。みんな生活に余裕ができたからね。でも、この日ばかりはそんな余裕を全部吐き出してるんじゃないかと思うくらい大量の祝いの品が届いたのだった。

 これも父上が領民たちに好かれている証だと思うと、オレまで嬉しくなるよ。

 この日は村を挙げてのお祭り騒ぎになったのは言うまでもない。

 オレ? オレも今日ドロップしたゴブリンキングの王笏をプレゼントしたよ。


 ◇


 それから半年。母上のお腹もどんどん大きくなってきた頃、オレは村の広場の中央に作られた台の上に立っていた。

 横には父上と椅子に座った母上がいる。そして、オレたちを取り囲むように大勢の人々が集まっていた。この村の人間だけではなく、他の村からもわざわざ来てくれた人たちもいるらしい。

 父上の人望はすごいな!

「皆、聞いてくれ」

 父上がそう言うだけで、ガヤガヤとうるさかった領民たちが静かになる。

 統率力もバッチリだね。

「皆も知っているだろうが明日、我が息子であるアベルが王都へ向かう! 今日は壮行会だ! しばらくアベルとは会えんからな。皆、存分に別れを惜しむといい。だが、辺境の者たちに湿っぽい涙など不要! 酒も用意したからな。皆、大いに楽しんでくれ!」
「「「「「うおぉおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 領民たちの歓声が巻き起こり、壮行会という名の宴が始まった。

 まぁ、みんななにか理由を付けてはしゃぎたいのだろう。

「坊ちゃん、ついに王都に向かわれるのですなぁ。向こうでもよろしくやってくだせえ!」
「坊ちゃん! 坊ちゃんの剣と盾を修理して磨いておきやした! こいつで存分にご活躍くだせえ! 坊ちゃんの名声がこの辺境まで轟くのを楽しみにしてやす!」
「あの小さかった坊ちゃんがもう王都に行く歳かぁ」

 オレたち親子は用意されたテーブルに移動すると、さっそく領民たちが挨拶に来る。

「坊ちゃん、こいつは狩人に伝わるお守りです」
「どうぞ!」

 コームから受け取ったのは、まるでドッグタグのようなネックレスだった。

「セザール、コーム、ありがとう!」
「アベル様もいよいよ王都に……。王都は誘惑がたくさんありますが、清く正しく生きるのですよ。女神様はいつでもアベル様を見ておいでですぞ」
「シリルは相変わらずだな。気を付けるよ」
「アベル様、こちらは特注の鎖帷子と鎧になります。装飾品も考えましたが、アベル様にはこういった実用品がいいかと思いまして。どうぞ、お納めください」
「エタン、助かるよ。エタンの商売が上手くいくことを祈っている」
「アベル様、帰ってきたら、また稽古付けてくだせえ」
「お帰りをお待ちしていやす」
「次は負けませんぜ」
「バジル、ブリス、ドニ、お前たちも元気でな」

 オレは領民当たちと別れを惜しみながら、それでも初めて行く王都への期待感を大きくしていた。
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