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032 シャルリーヌとヴィアラット領へ
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「嘘よ、嘘! 絶対に嘘! 王都からヴィアラット領まですごく遠いのよ? ちゃんと調べたんだから!」
シャルリーヌが椅子から立ち上がって、ふんすっと鼻息を荒くして叫ぶ。
もしかして、オレと結婚する可能性を考えて調べてくれたのだろうか?
まぁ、馬車を使っても一か月以上かかるし、普通は飛空艇を使っても何日もかかる距離だからなぁ。二十分なんて信じられなくて当然だよね。
「じゃあ、証明しよう。シャルリーヌはこれから時間ある?」
「証明? えっと、時間ならありますけど……?」
「うん。これだけ広さがあれば十分だからね」
「どういうこと……?」
オレは右手の人差し指に填めた銀の指輪をそっと撫でる。この指輪は、ヴァネッサに渡された通信機のようなものだ。これがあればいつでもヴァネッサを連絡を取ることができる。
「ヴァネッサ、聞こえる? オレの現在地に来れるかな? 建物や植物は壊しちゃダメだよ」
『承知いたしました』
「誰っ!?」
急に響いたヴァネッサの声にシャルリーヌが驚いたように周りを見渡した。
しかし、当然辺りには誰もいないのでシャルリーヌは首をかしげていた。
「飛空艇を呼んだんだよ」
『当艦は航空戦艦です。訂正を求めます』
「え!? あ、あれ!」
シャルリーヌが驚いたようにオレの後ろを指差した。振り向くと、陽光を受けて銀色に輝く船体が目に入る。航空戦艦というより、SFアニメに登場する宇宙戦艦のような見た目だ。
早いな。もう来たのか。
「こ、これは!?」
「とにかく、旦那様にお伝えを!」
メイドたち騒いでいる声が騒いでいる声が聞こえる。やっぱりいきなりヴァネッサを呼ぶのはマズかったかな?
でも、もう呼んじゃった後だし、許してほしいところだ。
「じゃあ、行こうか」
オレはシャルリーヌへと手を伸ばした。
「行くって、どこへ?」
「ヴィアラット領だよ。実際にどれくらい時間がかかるのか体験してみよう」
「そんなこと、いきなり言われても……」
「一度だけでいい。オレを信じてくれないか?」
「信じる……」
オレを信じてくれたのか、それとも単純にヴァネッサに乗ってみたくなったのか、シャルリーヌはオレの手を取ってくれた。
「ヴァネッサ、タラップを」
『かしこまりました』
東屋のすぐ近くにヴァネッサからタラップが伸ばされる。
それにしても、ヴァネッサは空中に静止しているのに風や駆動音を感じない。本当に重力を操っているんじゃないか?
「行こう」
「あ、ちょっと!?」
オレはシャルリーヌの小さな手を握ると、タラップを登ってヴァネッサに乗り込んだ。
「中はこんな風になっているのね……」
「こっちだよ」
シャルリーヌの手を引いて搭乗口を船首方向に曲がり、コックピットに着いた。
まぁ、コックピットと言うよりまるでSFアニメの宇宙戦艦の指令室みたいな所だね。壁一面がモニターになっていて、三百六十度外の様子が見渡せる。
シャルリーヌはしげしげと周りを興味深そうに見渡していた。
「外の景色が見える。こんなに高いのね。すごく透明で歪みのないガラスだわ」
まぁ、本当はガラスじゃなくてモニターなんだけどね。
ヴァネッサは空中に浮いているから、かなり視野が高い。王都の隅々まで見渡せた。まるで展望台のような光景に、心なしかシャルリーヌがうっとりしているようだった。
「ヴァネッサ、目的地はヴィアラット領。急いでくれ」
『承知いたしました。航空戦艦ヴァネッサ、発進します』
「動いた!」
シャルリーヌが明るい声をあげている。
周囲の建物に配慮してか、ゆっくりと上昇を開始するヴァネッサ。そして、上昇が止まると、一気に加速する。
普通、こんな動きをされたら慣性の法則で転びそうなものだが、重力加速度どころか振動一つ感じなかった。
「すごい、すごい! 景色がまるで水のように流れていくわ! 飛空艇ってこんなに速いのね!」
まぁ、飛空艇というより、ヴァネッサが特別なんだと思うよ。
「シャルリーヌ、今のうちにヴァネッサの中を案内するよ」
「ええ!」
なんだかシャルリーヌのテンションが高い気がする。
あれかな? ブラシェール伯爵家の財力をもってしても買えなかった飛空艇に乗れて嬉しいのかもしれないね。
素直なシャルリーヌかわいい。
◇
航空戦艦ヴァネッサの艦内には、さまざまな設備がある。たくさんある個室にはトイレやバスルームはもちろん完備だし、食堂やキッチンもある。中には医務室なんて専門的な部屋もあるくらいだ。
艦内をすべて案内するだけでもかなり時間がかかりそうだな。
「飛空艇の中ってこんなに広いのね!」
白い清潔な通路をシャルリーヌが楽し気にステップを踏んで歩いている。その姿はとても優雅で思わず見惚れてしまうほどだ。
『間もなく、ヴィアラット領に到着いたします』
これからまるで艦内放送のようにヴァネッサの声が通路に響いた。
「もう!? だって、まだ出発して少ししか経ってないわよ!?」
「二十分で着くって言ってろ? さあ、行こうか」
「ええ!」
オレはシャルリーヌの小さな手を取ると、ヴァネッサの船首にある指令室の方へと戻っていった。
シャルリーヌが椅子から立ち上がって、ふんすっと鼻息を荒くして叫ぶ。
もしかして、オレと結婚する可能性を考えて調べてくれたのだろうか?
まぁ、馬車を使っても一か月以上かかるし、普通は飛空艇を使っても何日もかかる距離だからなぁ。二十分なんて信じられなくて当然だよね。
「じゃあ、証明しよう。シャルリーヌはこれから時間ある?」
「証明? えっと、時間ならありますけど……?」
「うん。これだけ広さがあれば十分だからね」
「どういうこと……?」
オレは右手の人差し指に填めた銀の指輪をそっと撫でる。この指輪は、ヴァネッサに渡された通信機のようなものだ。これがあればいつでもヴァネッサを連絡を取ることができる。
「ヴァネッサ、聞こえる? オレの現在地に来れるかな? 建物や植物は壊しちゃダメだよ」
『承知いたしました』
「誰っ!?」
急に響いたヴァネッサの声にシャルリーヌが驚いたように周りを見渡した。
しかし、当然辺りには誰もいないのでシャルリーヌは首をかしげていた。
「飛空艇を呼んだんだよ」
『当艦は航空戦艦です。訂正を求めます』
「え!? あ、あれ!」
シャルリーヌが驚いたようにオレの後ろを指差した。振り向くと、陽光を受けて銀色に輝く船体が目に入る。航空戦艦というより、SFアニメに登場する宇宙戦艦のような見た目だ。
早いな。もう来たのか。
「こ、これは!?」
「とにかく、旦那様にお伝えを!」
メイドたち騒いでいる声が騒いでいる声が聞こえる。やっぱりいきなりヴァネッサを呼ぶのはマズかったかな?
でも、もう呼んじゃった後だし、許してほしいところだ。
「じゃあ、行こうか」
オレはシャルリーヌへと手を伸ばした。
「行くって、どこへ?」
「ヴィアラット領だよ。実際にどれくらい時間がかかるのか体験してみよう」
「そんなこと、いきなり言われても……」
「一度だけでいい。オレを信じてくれないか?」
「信じる……」
オレを信じてくれたのか、それとも単純にヴァネッサに乗ってみたくなったのか、シャルリーヌはオレの手を取ってくれた。
「ヴァネッサ、タラップを」
『かしこまりました』
東屋のすぐ近くにヴァネッサからタラップが伸ばされる。
それにしても、ヴァネッサは空中に静止しているのに風や駆動音を感じない。本当に重力を操っているんじゃないか?
「行こう」
「あ、ちょっと!?」
オレはシャルリーヌの小さな手を握ると、タラップを登ってヴァネッサに乗り込んだ。
「中はこんな風になっているのね……」
「こっちだよ」
シャルリーヌの手を引いて搭乗口を船首方向に曲がり、コックピットに着いた。
まぁ、コックピットと言うよりまるでSFアニメの宇宙戦艦の指令室みたいな所だね。壁一面がモニターになっていて、三百六十度外の様子が見渡せる。
シャルリーヌはしげしげと周りを興味深そうに見渡していた。
「外の景色が見える。こんなに高いのね。すごく透明で歪みのないガラスだわ」
まぁ、本当はガラスじゃなくてモニターなんだけどね。
ヴァネッサは空中に浮いているから、かなり視野が高い。王都の隅々まで見渡せた。まるで展望台のような光景に、心なしかシャルリーヌがうっとりしているようだった。
「ヴァネッサ、目的地はヴィアラット領。急いでくれ」
『承知いたしました。航空戦艦ヴァネッサ、発進します』
「動いた!」
シャルリーヌが明るい声をあげている。
周囲の建物に配慮してか、ゆっくりと上昇を開始するヴァネッサ。そして、上昇が止まると、一気に加速する。
普通、こんな動きをされたら慣性の法則で転びそうなものだが、重力加速度どころか振動一つ感じなかった。
「すごい、すごい! 景色がまるで水のように流れていくわ! 飛空艇ってこんなに速いのね!」
まぁ、飛空艇というより、ヴァネッサが特別なんだと思うよ。
「シャルリーヌ、今のうちにヴァネッサの中を案内するよ」
「ええ!」
なんだかシャルリーヌのテンションが高い気がする。
あれかな? ブラシェール伯爵家の財力をもってしても買えなかった飛空艇に乗れて嬉しいのかもしれないね。
素直なシャルリーヌかわいい。
◇
航空戦艦ヴァネッサの艦内には、さまざまな設備がある。たくさんある個室にはトイレやバスルームはもちろん完備だし、食堂やキッチンもある。中には医務室なんて専門的な部屋もあるくらいだ。
艦内をすべて案内するだけでもかなり時間がかかりそうだな。
「飛空艇の中ってこんなに広いのね!」
白い清潔な通路をシャルリーヌが楽し気にステップを踏んで歩いている。その姿はとても優雅で思わず見惚れてしまうほどだ。
『間もなく、ヴィアラット領に到着いたします』
これからまるで艦内放送のようにヴァネッサの声が通路に響いた。
「もう!? だって、まだ出発して少ししか経ってないわよ!?」
「二十分で着くって言ってろ? さあ、行こうか」
「ええ!」
オレはシャルリーヌの小さな手を取ると、ヴァネッサの船首にある指令室の方へと戻っていった。
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