【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
33 / 117

033 シャルリーヌとヴィアラット領へ②

しおりを挟む
 プシュッと開いたヴァネッサの外へと続く扉。その瞬間、ひんやりとした風が頬をくすぐった。

 やっぱり王都の空気とは違うね。ヴィアラット領の方が空気がおいしく感じるよ。

「ここが、ヴィアラット領……」

 シャルリーヌは少し呆然としながらタラップの上で呟いた。

 視点が高いので、ここから見ると村の様子がよくわかる。

 目の前に人がるのは木造りのいくつかの民家。そして、その向こうはどこまでも続く森だ。

 王都にいたら、目にすることはなかった光景だろう。

「シャルリーヌ、まずは母上に会いに行こう。きっと驚くはずだ」
「あなたのお母様に?」
「そうそう。母上は今、お腹に赤ちゃんがいるから今回王都には来れなかったけど、すごくシャルリーヌに会いたがっていたんだ」
「まあ!」

 オレはシャルリーヌの手を引いてタラップを降りていく。

「坊ちゃま! もう帰ってきたんですか? 何か忘れものでも? おや、そちらの方は?」

 タラップを降りたところで、ヴィアラット邸から肝っ玉母さんみたいなメイドのデボラが出てきた。

「デボラ! 紹介しよう、こちらはシャルリーヌ・ブラシェールだ。シャルリーヌ、あれはうちのメイドのデボラだよ」
「はあ……」

 シャルリーヌは不思議そうな顔でオレを見ていた。

 なんでだろう?

「ブラシェール!? 坊ちゃま、連れてきちゃったんですか!? こうしてはいられません! 早く奥様にお知らせせねば!」

 そう言ってデボラは出てきたヴィアラット邸にまた入ってしまった。

「おくさまああああああああああああ! 大変です! 坊ちゃまがブラシェールのご令嬢を連れてきちゃいました! おくさまああああああああああああ!」

 すごい騒ぎだな。ここまでデボラの叫び声が聞こえるよ。

 まぁ、たしかにいきなり客を連れてきたら困ってしまうか。歓迎の準備とかあるだろうし。

 でもヴァネッサで移動すると、先触れなんて出せないからなぁ……。

「ん?」

 べつに先触れを出す必要はないか。これから客を連れていくということがわかればいいんだから、ヴァネッサの通信機能を使えばいい。

 オレは自分の右手人差し指に填まっている銀の指輪を撫でる。

 この指輪があれば、ヴァネッサと通信できる。指輪はいくつ作れるのかわからないけど、これを利用すればヴァネッサを介した通信網を構築できるな。これがあれば、辺境での暮らしももっと便利になるかもしれない。

 各領地の領主に配るなんてどうだろう?

 何か問題があれば、速やかに助けを求めることができるはずだ。

 そうすれば、父上の航空戦闘団ももっと活躍できるだろう。

 まぁ、すべては後でだな。今はシャルリーヌを歓迎して楽しませないとね。

「デボラも母上も準備とかあるだろうし、ちょっと待ってもらってもいい?」
「それはかまいませんけど……」

 ちょっとシャルリーヌが暗い顔を浮かべている。

「どうしたの?」
「いえ……。わたくし、お父様にもお母様にも内緒で出てきてしまいました……」
「あの場にいたメイドたちが知らせてくれるんじゃない?」
「そうかもしれませんけど……。お父様とお母様に黙って出てきてしまったことには変わりないのです……」
「怒られる感じ?」
「ええ……」

 王都の貴族って礼儀とかに厳しいのかな? オレなんて黙ってどこかに出かけるなんて日常茶飯事だけどな。

「オレが強引にシャルリーヌを連れ出したことにすればいいよ」
「いいの?」
「ああ。実際、無理やり連れだしたようなものだしね。それでシャルリーヌが怒られるのは申し訳ない。謝る時は、オレも一緒に謝るよ」
「……ありがとう」
「まぁ、オレが言うことじゃないけど、済んじゃったことは仕方ない。少しでもこのヴィアラット領を楽しんでいってよ。たぶん、そろそろ準備できてるだろうし、行こうか」
「ええ!」

 玄関のドアを開けると、肩で息をしているデボラがかしこまっていた。

「おかえりなさいませ、坊ちゃま。いらっしゃいませ、シャルリーヌ様。ヴィアラット領へようこそ」

 今更取り繕っても意味はないと思うのだが、デボラの中の矜持がそうさせるのだろう。先ほどのやり取りはデボラの中ではなかったことになっているらしい。

「応接間にご案内します。奥様もお待ちですよ」
「ああ、頼んだ」
「こちらです」

 もうとっくに日は登っているはすだが、日当たりが悪いのか廊下は少しだけ薄暗かった。いつもなら気にしないけど、今日はシャルリーヌがいる。廊下は明るい方がいいだろう。

「ホーリーライト」

 オレは指先に光の玉を生み出す。光る以外に何の効果もない魔法だが、電気がないこの異世界では活躍の場が多い。

「まあ! それがあなたの神聖魔法?」

 シャルリーヌが魅入るようにホーリーライトの光の玉を見ていた。

「優しい魔法ね」

 シャルリーヌはホッとしたような優しい笑みを浮かべていた。ホーリーライトの明かりは、強過ぎず弱過ぎないホッとする明かりだからね。

「こちらが応接間になります」

 それからすぐにオレとシャルリーヌは応接間に通されたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

処理中です...