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045 テオドールとの決闘
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ヴィアラット男爵家は、ダルセー辺境伯家の寄り子だ。
一応、王族に忠誠を誓う貴族だが。その立場はダルセー辺境伯家の被官に近い。ダルセー辺境伯家に税を納め、いざという時に守ってもらうのだ。
だが、ダルセー辺境伯家はその勤めを果たさない。税だけ奪って、何も援助してくれないのだ。
これでは寄り子である意味がない。むしろ、税を奪われるだけマイナスだ。
だから、ヴィアラット家はダルセー辺境伯家の影響下から抜け出す。そのための決闘だ。
「それは、しかし……」
「どうした、テオドール? まさか、負けるのが怖いのか?」
「口の利き方に気を付けろよ、カスが! いいだろう。もしお前が勝てば、ヴィアラット男爵家の独立を認めてやる。私に勝てれば、な?」
躊躇する様子をみせるテオドールを煽ると、すぐさま喰い付いてきた。楽でいいな。
賭けの報酬も決まったことで、いよいよ決闘が始まる。
「絶対、勝ちなさいよ!」
「そんなにテオドールよりオレと結婚したいのか?」
「そんなの当たりま――――ちょっと! 何言わせるのよ! もー! 勝たないと許さないからね!」
シャルリーヌは怒ったようにアリソンとブリジットを連れてクラスメイトの集団の中に帰っていった。
「やれやれ」
ちょっとはデレるシャルリーヌが見れるかと思ったんだけど、ダメだった。まぁ、シャルリーヌは怒った顔もかわいいんだけどね。
なんだかシャルリーヌの「もー!」がクセになってきた気がするよ。
「教室にいないと思えば……。あなたたち、何をやっているの!」
「ん?」
校舎の方から小走りでやって来たのは、貴族らしく華やかさのあるスーツのようなものを着た妙齢の女性だった。ライトグリーンのウエーブのかかった長い髪が印象的だ。
「あれは……コランティーヌ先生か」
オレたち一年生の担任になる先生だ。当然、ゲームでも登場し、悩める主人公を慰め、時に叱咤する頼もしい先生である。
実際は、先生自身がとある伯爵家の庶子の出で、貴族にあまり良い感情を持っていないから主人公を使って憂さ晴らししているだけなのだが……。まぁそのあたりはいいか。
「これは何の騒ぎですか? 早く教室に戻りなさい!」
「私に命令するな! これから神聖な決闘の時間だ! すっこんでいろ!」
テオドールが吠えると、コランティーヌが一瞬だけイラっとした表情をみせる。だが、すぐに真顔になると、辺りにいた生徒たちに確認を始めた。
「決闘というのはわかりました。双方、異存はないのですか?」
「ない!」
「ありません」
「はぁー……。なんで貴族はもう……」
テオドールとオレの返事を聞くと、コランティーヌは大きな溜息を吐いた。
まぁ、学園の初日から決闘騒ぎだしな。溜息も吐きたくなるか。その点は同情するよ。
「では、わたくしが立会人になります。決闘の条件に付いて、わたくしから一つ補足があります。相手を殺さないこと。殺してしまった場合は問答無用で敗北です。いいですね?」
決闘は貴族の権利とはいえ、さすがに初日から人死にが出たらコランティーヌの査定にも響くのだろう。
「敢えて生き恥をかかせろというのか? 面白い!」
テオドールは明後日の方向の見解を口に出したが、コランティーヌの提案自体には乗り気のようだ。
「オレもかまいませんよ」
オレも了承すると、コランティーヌが大きく頷いた。
強引に決闘自体を止めないのは、もしかしたら貴族なんて痛い目を見ろとか思っているのかもしれないな。
「では、テオドール・ダルセーとアベル・ヴィアラットの決闘を始めます! 両者、準備は良いですね?」
「はい」
「いいぞ」
「では、始め!」
「ファイアボール!」
決闘開始と同時にテオドールがファイアボールの魔法を発動する。その練度はお世辞にも高いとは言えないだろう。それは発動の遅さと魔法の規模に現れている。
『ゴブリンの地下王国』のゴブリンシャーマンより弱いだろう。
テオドールは魔法を使えることを自慢に思っている。それは装備にも表れていた。
テオドールは剣を装備していない。その代わりに手に持っているのが、豪奢なワンドだ。自分が魔法使いだということを誇示しているのだろう。
オレはテオドールを観察しながら、距離を詰めていく。
テオドールとの距離は十メートルほど。いくらテオドールの魔法の発動が遅いと言っても、さすがにオレが剣の間合いに入るよりもテオドールの魔法発動の方が早い。
「喰らえ!」
テオドールがワンドを振り下ろし、ファイアボールが高速で飛んでくる。
ゲームでは、魔法は必中の攻撃だった。
しかし、この世界ではそうではない。魔法が術者から離れてもコントロールすることが可能なため極めて回避しづらいが、回避すること自体は可能だ。
まぁ、オレはかまわず最短距離を行くが。
「魔法に正面から突っ込んだ!?」
「きゃあああああああ!」
「あいつ、死ぬ気か!?」
外野の声を意識から遮断し、オレは剣を構えてテオドールのファイアボールに集中する。
一応、王族に忠誠を誓う貴族だが。その立場はダルセー辺境伯家の被官に近い。ダルセー辺境伯家に税を納め、いざという時に守ってもらうのだ。
だが、ダルセー辺境伯家はその勤めを果たさない。税だけ奪って、何も援助してくれないのだ。
これでは寄り子である意味がない。むしろ、税を奪われるだけマイナスだ。
だから、ヴィアラット家はダルセー辺境伯家の影響下から抜け出す。そのための決闘だ。
「それは、しかし……」
「どうした、テオドール? まさか、負けるのが怖いのか?」
「口の利き方に気を付けろよ、カスが! いいだろう。もしお前が勝てば、ヴィアラット男爵家の独立を認めてやる。私に勝てれば、な?」
躊躇する様子をみせるテオドールを煽ると、すぐさま喰い付いてきた。楽でいいな。
賭けの報酬も決まったことで、いよいよ決闘が始まる。
「絶対、勝ちなさいよ!」
「そんなにテオドールよりオレと結婚したいのか?」
「そんなの当たりま――――ちょっと! 何言わせるのよ! もー! 勝たないと許さないからね!」
シャルリーヌは怒ったようにアリソンとブリジットを連れてクラスメイトの集団の中に帰っていった。
「やれやれ」
ちょっとはデレるシャルリーヌが見れるかと思ったんだけど、ダメだった。まぁ、シャルリーヌは怒った顔もかわいいんだけどね。
なんだかシャルリーヌの「もー!」がクセになってきた気がするよ。
「教室にいないと思えば……。あなたたち、何をやっているの!」
「ん?」
校舎の方から小走りでやって来たのは、貴族らしく華やかさのあるスーツのようなものを着た妙齢の女性だった。ライトグリーンのウエーブのかかった長い髪が印象的だ。
「あれは……コランティーヌ先生か」
オレたち一年生の担任になる先生だ。当然、ゲームでも登場し、悩める主人公を慰め、時に叱咤する頼もしい先生である。
実際は、先生自身がとある伯爵家の庶子の出で、貴族にあまり良い感情を持っていないから主人公を使って憂さ晴らししているだけなのだが……。まぁそのあたりはいいか。
「これは何の騒ぎですか? 早く教室に戻りなさい!」
「私に命令するな! これから神聖な決闘の時間だ! すっこんでいろ!」
テオドールが吠えると、コランティーヌが一瞬だけイラっとした表情をみせる。だが、すぐに真顔になると、辺りにいた生徒たちに確認を始めた。
「決闘というのはわかりました。双方、異存はないのですか?」
「ない!」
「ありません」
「はぁー……。なんで貴族はもう……」
テオドールとオレの返事を聞くと、コランティーヌは大きな溜息を吐いた。
まぁ、学園の初日から決闘騒ぎだしな。溜息も吐きたくなるか。その点は同情するよ。
「では、わたくしが立会人になります。決闘の条件に付いて、わたくしから一つ補足があります。相手を殺さないこと。殺してしまった場合は問答無用で敗北です。いいですね?」
決闘は貴族の権利とはいえ、さすがに初日から人死にが出たらコランティーヌの査定にも響くのだろう。
「敢えて生き恥をかかせろというのか? 面白い!」
テオドールは明後日の方向の見解を口に出したが、コランティーヌの提案自体には乗り気のようだ。
「オレもかまいませんよ」
オレも了承すると、コランティーヌが大きく頷いた。
強引に決闘自体を止めないのは、もしかしたら貴族なんて痛い目を見ろとか思っているのかもしれないな。
「では、テオドール・ダルセーとアベル・ヴィアラットの決闘を始めます! 両者、準備は良いですね?」
「はい」
「いいぞ」
「では、始め!」
「ファイアボール!」
決闘開始と同時にテオドールがファイアボールの魔法を発動する。その練度はお世辞にも高いとは言えないだろう。それは発動の遅さと魔法の規模に現れている。
『ゴブリンの地下王国』のゴブリンシャーマンより弱いだろう。
テオドールは魔法を使えることを自慢に思っている。それは装備にも表れていた。
テオドールは剣を装備していない。その代わりに手に持っているのが、豪奢なワンドだ。自分が魔法使いだということを誇示しているのだろう。
オレはテオドールを観察しながら、距離を詰めていく。
テオドールとの距離は十メートルほど。いくらテオドールの魔法の発動が遅いと言っても、さすがにオレが剣の間合いに入るよりもテオドールの魔法発動の方が早い。
「喰らえ!」
テオドールがワンドを振り下ろし、ファイアボールが高速で飛んでくる。
ゲームでは、魔法は必中の攻撃だった。
しかし、この世界ではそうではない。魔法が術者から離れてもコントロールすることが可能なため極めて回避しづらいが、回避すること自体は可能だ。
まぁ、オレはかまわず最短距離を行くが。
「魔法に正面から突っ込んだ!?」
「きゃあああああああ!」
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