【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
45 / 117

045 テオドールとの決闘

しおりを挟む
 ヴィアラット男爵家は、ダルセー辺境伯家の寄り子だ。

 一応、王族に忠誠を誓う貴族だが。その立場はダルセー辺境伯家の被官に近い。ダルセー辺境伯家に税を納め、いざという時に守ってもらうのだ。

 だが、ダルセー辺境伯家はその勤めを果たさない。税だけ奪って、何も援助してくれないのだ。

 これでは寄り子である意味がない。むしろ、税を奪われるだけマイナスだ。

 だから、ヴィアラット家はダルセー辺境伯家の影響下から抜け出す。そのための決闘だ。

「それは、しかし……」
「どうした、テオドール? まさか、負けるのが怖いのか?」
「口の利き方に気を付けろよ、カスが! いいだろう。もしお前が勝てば、ヴィアラット男爵家の独立を認めてやる。私に勝てれば、な?」

 躊躇する様子をみせるテオドールを煽ると、すぐさま喰い付いてきた。楽でいいな。

 賭けの報酬も決まったことで、いよいよ決闘が始まる。

「絶対、勝ちなさいよ!」
「そんなにテオドールよりオレと結婚したいのか?」
「そんなの当たりま――――ちょっと! 何言わせるのよ! もー! 勝たないと許さないからね!」

 シャルリーヌは怒ったようにアリソンとブリジットを連れてクラスメイトの集団の中に帰っていった。

「やれやれ」

 ちょっとはデレるシャルリーヌが見れるかと思ったんだけど、ダメだった。まぁ、シャルリーヌは怒った顔もかわいいんだけどね。

 なんだかシャルリーヌの「もー!」がクセになってきた気がするよ。

「教室にいないと思えば……。あなたたち、何をやっているの!」
「ん?」

 校舎の方から小走りでやって来たのは、貴族らしく華やかさのあるスーツのようなものを着た妙齢の女性だった。ライトグリーンのウエーブのかかった長い髪が印象的だ。

「あれは……コランティーヌ先生か」

 オレたち一年生の担任になる先生だ。当然、ゲームでも登場し、悩める主人公を慰め、時に叱咤する頼もしい先生である。

 実際は、先生自身がとある伯爵家の庶子の出で、貴族にあまり良い感情を持っていないから主人公を使って憂さ晴らししているだけなのだが……。まぁそのあたりはいいか。

「これは何の騒ぎですか? 早く教室に戻りなさい!」
「私に命令するな! これから神聖な決闘の時間だ! すっこんでいろ!」

 テオドールが吠えると、コランティーヌが一瞬だけイラっとした表情をみせる。だが、すぐに真顔になると、辺りにいた生徒たちに確認を始めた。

「決闘というのはわかりました。双方、異存はないのですか?」
「ない!」
「ありません」
「はぁー……。なんで貴族はもう……」

 テオドールとオレの返事を聞くと、コランティーヌは大きな溜息を吐いた。

 まぁ、学園の初日から決闘騒ぎだしな。溜息も吐きたくなるか。その点は同情するよ。

「では、わたくしが立会人になります。決闘の条件に付いて、わたくしから一つ補足があります。相手を殺さないこと。殺してしまった場合は問答無用で敗北です。いいですね?」

 決闘は貴族の権利とはいえ、さすがに初日から人死にが出たらコランティーヌの査定にも響くのだろう。

「敢えて生き恥をかかせろというのか? 面白い!」

 テオドールは明後日の方向の見解を口に出したが、コランティーヌの提案自体には乗り気のようだ。

「オレもかまいませんよ」

 オレも了承すると、コランティーヌが大きく頷いた。

 強引に決闘自体を止めないのは、もしかしたら貴族なんて痛い目を見ろとか思っているのかもしれないな。

「では、テオドール・ダルセーとアベル・ヴィアラットの決闘を始めます! 両者、準備は良いですね?」
「はい」
「いいぞ」
「では、始め!」
「ファイアボール!」

 決闘開始と同時にテオドールがファイアボールの魔法を発動する。その練度はお世辞にも高いとは言えないだろう。それは発動の遅さと魔法の規模に現れている。

 『ゴブリンの地下王国』のゴブリンシャーマンより弱いだろう。

 テオドールは魔法を使えることを自慢に思っている。それは装備にも表れていた。

 テオドールは剣を装備していない。その代わりに手に持っているのが、豪奢なワンドだ。自分が魔法使いだということを誇示しているのだろう。

 オレはテオドールを観察しながら、距離を詰めていく。

 テオドールとの距離は十メートルほど。いくらテオドールの魔法の発動が遅いと言っても、さすがにオレが剣の間合いに入るよりもテオドールの魔法発動の方が早い。

「喰らえ!」

 テオドールがワンドを振り下ろし、ファイアボールが高速で飛んでくる。

 ゲームでは、魔法は必中の攻撃だった。

 しかし、この世界ではそうではない。魔法が術者から離れてもコントロールすることが可能なため極めて回避しづらいが、回避すること自体は可能だ。

 まぁ、オレはかまわず最短距離を行くが。

「魔法に正面から突っ込んだ!?」
「きゃあああああああ!」
「あいつ、死ぬ気か!?」

 外野の声を意識から遮断し、オレは剣を構えてテオドールのファイアボールに集中する。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ
ファンタジー
普通の会社員だった佐藤隼人(さとうはやと)は、ある日突然異世界に招かれる。 異世界で勇者として10年間を旅して過ごしながら魔王との戦いに決着をつけた隼人。 役目を終えて、彼は異世界に旅立った直後の現代に戻ってきた。 隼人の意識では10年間という月日が流れていたが、こちらでは一瞬の出来事だった。 戻ってきたと実感した直後、彼の体に激痛が走る。 異世界での経験と成長が現代の体に統合される過程で、隼人は1ヶ月間寝込むことに。 まるで生まれ変わるかのような激しい体の変化が続き、思うように動けなくなった。 ようやく落ち着いた頃には無断欠勤により会社をクビになり、それを知った恋人から別れを告げられる。 それでも隼人は現代に戻ってきて、生きられることに感謝する。 次の仕事を見つけて、新しい生活を始めようと前向きになった矢先、とある人物が部屋を訪ねてくる。 その人物とは、異世界で戦友だった者の名を口にする女子高生だった。 「ハヤト様。私たちの世界を救ってくれて、本当にありがとう。今度は、私たちがあなたのことを幸せにします!」 ※カクヨムにも掲載中です。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

処理中です...