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046 テオドールとの決闘②
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魔法というのはMP、つまり魔力と呼ばれる不思議な力を代償に発現している。
目の前に迫るファイアボール。これだって一見ただの火の玉に見えるが実は違う。まるで純水に絵の具を一滴落としたように、絵の具という魔力が純水を汚すように現実を書き換えているのだ。
そう。ファイアボールという魔法は、魔法を構成する魔力の塊と、書き換えられた火の玉という現実の二重構造になっている。
だからよく見れば、ファイアボールの中心に揺らめく未熟な魔力の塊が見えるのだ。
だから斬る!
「ぜああっ!」
体を限界までねじり、まるで居合術のように鞘の中で走らせた剣を解放する。
剣の描く逆袈裟の銀弧は、狙い通りファイアボールの中心にある魔力の塊を真っ二つ切り裂いた。
ファイアボールは爆発することなく、空気に溶けるように霧散する。
そして、オレはファイアボールだったものの中心を突っ切る。
熱々の空気の中を突っ切るのは苦しいが、これくらいは我慢である。
灼熱で肺が焼かれないように息を止め、髪の毛の先がチリチリを焦げるのを感じながらも疾走する。
「なにいっ!?」
テオドールはひどく驚いた顔をして固まっていた。自慢のファイアボールが斬られるとは夢にも思わなかったようだ。
距離を取って二発目を準備するなり、いくらでもできる行動があると思うのだが、テオドールは固まったまま動かない。たぶん実戦経験が少ないのだろう。
オレは遠慮なくテオドールの突き出た腹に剣の峰を叩き込んだ。
「へぶッ!?」
よくわからない声を出して、テオドールが僅かに飛んでグラウンドに転がった。追撃することもできたが……。まぁ、必要ないだろう。テオドールはオレの一撃を受けて気絶したようだ。
「な、何が……?」
「え? ファイアボールが当たったよな?」
「なんで無事なんだ!?」
「どういうことですの!?」
集中が途切れ、周りの音が聞こえ始める。クラスメイトたちは、ざわざわとしていた。オレが魔法を斬ったのが意外だったのかな?
「まさか、魔法を斬った……?」
さすがにコランティーヌ先生はオレが何をしたのかわかったらしい。だが、呆然とした顔でオレを見ていた。そんなに珍しいことはしていないつもりなんだが……?
「ッ!」
コランティーヌ先生は、ビクリと体を震わせると、怖い顔をしてオレの方へツカツカと速足で歩いてきた。
「アベル・ヴィアラット! あ、あなたは本当に魔法を斬ったのですか?」
「魔法を斬った!?」
「まさかそんな」
「そんなことが可能なのか!?」
「辺境の貴族は武芸に優れるとは聞いていましたが……」
「いったいどれほどの高みに……!」
コランティーヌ先生の言葉に、生徒たちが一斉に騒ぎ出す。よほど魔法を剣で斬ったというのが信じられないようだ。
まぁ、オレも父上が実際に目の前で魔法を斬らなきゃ信じられなかっただろうなぁ。
しかし、これが現実だ。この世界の魔法は剣で斬ることができるのである。
「斬りましたよ、先生。テオドールの魔法は未熟だったので楽でした」
言葉通り、テオドールのファイアボールは未熟だった。魔力の揺らぎが大きく、おそらく真っ二つに斬らなくても、剣が掠っただけで魔法は消えていただろう。とても不安定な状態だったのだ。
それに比べると、『ゴブリンの地下王国』の中ボス、ゴブリンシャーマンのファイアボールは見事だったな。
今まで散々斬り続けた甲斐があった。
オレはゴブリンシャーマンの魔法を斬ることで大きく成長できたと思う。
最初はもちろん上手くできなくてファイアボールの爆発に何度も吹き飛ばされたが、何事も練習だね。他の魔法はわからないけど、オレはファイアボールなら確実に斬れる気がするよ。
◇
わたくし、コランティーヌは目の前の生徒の言っている意味がわからなかった。
魔法を斬るのが楽?
そんなわけがない! 魔法を斬るのは、各種剣の流派でも奥義に分類されるような技術のはず!
それを目の前の少年は会得しているというの……?
アベル・ヴィアラット。なんて恐ろしいバケモノ……!
たしかに、魔法にも熟練度があるのは知られているのも事実。テオドール・ダルセーの魔法が未熟というのも本当でしょう。
しかし、だからといって魔法を斬る難易度がそれほど下がるとも思えない。
下級魔法とはいえ、ファイアボールは最悪、死ぬことだってありえる危険な魔法。そんな魔法に正面から突っ込んでいく胆力、そんな極限状態で魔法の急所を正確に見抜く目、そのどちらが欠けても魔法を斬るという偉業は達成できない。
このアベル・ヴィアラットという少年は、弱冠十二歳という年齢でその難事を成し遂げてみせた。
たしかに、辺境の人々は武術に優れるという話は聞いたことがあった。
でも、それだって限度がある。さすがにこれは規格外だ。
なんて恐ろしい怪物。魔法を斬ったことを、まるでなんでもないように言ってのけるその態度が恐ろしい。
目の前に迫るファイアボール。これだって一見ただの火の玉に見えるが実は違う。まるで純水に絵の具を一滴落としたように、絵の具という魔力が純水を汚すように現実を書き換えているのだ。
そう。ファイアボールという魔法は、魔法を構成する魔力の塊と、書き換えられた火の玉という現実の二重構造になっている。
だからよく見れば、ファイアボールの中心に揺らめく未熟な魔力の塊が見えるのだ。
だから斬る!
「ぜああっ!」
体を限界までねじり、まるで居合術のように鞘の中で走らせた剣を解放する。
剣の描く逆袈裟の銀弧は、狙い通りファイアボールの中心にある魔力の塊を真っ二つ切り裂いた。
ファイアボールは爆発することなく、空気に溶けるように霧散する。
そして、オレはファイアボールだったものの中心を突っ切る。
熱々の空気の中を突っ切るのは苦しいが、これくらいは我慢である。
灼熱で肺が焼かれないように息を止め、髪の毛の先がチリチリを焦げるのを感じながらも疾走する。
「なにいっ!?」
テオドールはひどく驚いた顔をして固まっていた。自慢のファイアボールが斬られるとは夢にも思わなかったようだ。
距離を取って二発目を準備するなり、いくらでもできる行動があると思うのだが、テオドールは固まったまま動かない。たぶん実戦経験が少ないのだろう。
オレは遠慮なくテオドールの突き出た腹に剣の峰を叩き込んだ。
「へぶッ!?」
よくわからない声を出して、テオドールが僅かに飛んでグラウンドに転がった。追撃することもできたが……。まぁ、必要ないだろう。テオドールはオレの一撃を受けて気絶したようだ。
「な、何が……?」
「え? ファイアボールが当たったよな?」
「なんで無事なんだ!?」
「どういうことですの!?」
集中が途切れ、周りの音が聞こえ始める。クラスメイトたちは、ざわざわとしていた。オレが魔法を斬ったのが意外だったのかな?
「まさか、魔法を斬った……?」
さすがにコランティーヌ先生はオレが何をしたのかわかったらしい。だが、呆然とした顔でオレを見ていた。そんなに珍しいことはしていないつもりなんだが……?
「ッ!」
コランティーヌ先生は、ビクリと体を震わせると、怖い顔をしてオレの方へツカツカと速足で歩いてきた。
「アベル・ヴィアラット! あ、あなたは本当に魔法を斬ったのですか?」
「魔法を斬った!?」
「まさかそんな」
「そんなことが可能なのか!?」
「辺境の貴族は武芸に優れるとは聞いていましたが……」
「いったいどれほどの高みに……!」
コランティーヌ先生の言葉に、生徒たちが一斉に騒ぎ出す。よほど魔法を剣で斬ったというのが信じられないようだ。
まぁ、オレも父上が実際に目の前で魔法を斬らなきゃ信じられなかっただろうなぁ。
しかし、これが現実だ。この世界の魔法は剣で斬ることができるのである。
「斬りましたよ、先生。テオドールの魔法は未熟だったので楽でした」
言葉通り、テオドールのファイアボールは未熟だった。魔力の揺らぎが大きく、おそらく真っ二つに斬らなくても、剣が掠っただけで魔法は消えていただろう。とても不安定な状態だったのだ。
それに比べると、『ゴブリンの地下王国』の中ボス、ゴブリンシャーマンのファイアボールは見事だったな。
今まで散々斬り続けた甲斐があった。
オレはゴブリンシャーマンの魔法を斬ることで大きく成長できたと思う。
最初はもちろん上手くできなくてファイアボールの爆発に何度も吹き飛ばされたが、何事も練習だね。他の魔法はわからないけど、オレはファイアボールなら確実に斬れる気がするよ。
◇
わたくし、コランティーヌは目の前の生徒の言っている意味がわからなかった。
魔法を斬るのが楽?
そんなわけがない! 魔法を斬るのは、各種剣の流派でも奥義に分類されるような技術のはず!
それを目の前の少年は会得しているというの……?
アベル・ヴィアラット。なんて恐ろしいバケモノ……!
たしかに、魔法にも熟練度があるのは知られているのも事実。テオドール・ダルセーの魔法が未熟というのも本当でしょう。
しかし、だからといって魔法を斬る難易度がそれほど下がるとも思えない。
下級魔法とはいえ、ファイアボールは最悪、死ぬことだってありえる危険な魔法。そんな魔法に正面から突っ込んでいく胆力、そんな極限状態で魔法の急所を正確に見抜く目、そのどちらが欠けても魔法を斬るという偉業は達成できない。
このアベル・ヴィアラットという少年は、弱冠十二歳という年齢でその難事を成し遂げてみせた。
たしかに、辺境の人々は武術に優れるという話は聞いたことがあった。
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