【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
52 / 117

052 決闘リターンズ

しおりを挟む
「先ほどの決闘は無効だ! 同じ条件で決闘を受けてやろう」
「え?」

 テオドール、お前は何を言ってるんだ?

「先ほどのって朝のだろ? あれはコランティーヌ先生が立会人だから、正式なものだぞ? それに、クラスメイトたちも見ている。それを無効だなんてさすがに無理があるんじゃないか? 今頃、先生が辺境伯に手紙を書いてるぞ?」
「くっ! まあいい! だが、お前には先の決闘の条件の白紙を賭けた決闘を受けてもらう! これは絶対だ!」
「なるほど……」

 さすがに辺境伯に怒られると思ったのだろう。何が何でも決闘したいらしい。

 だが……。

「つまり、ヴィアラット男爵家の独立、辺境の貴族たちへの借金の帳消し、土下座での謝罪。この三つを白紙にしたいわけだな?」
「そうだ!」

 テオドールが屈辱そうな顔をして噛み付くように吠えた。

「じゃあ、それと同価値のものを要求してもいいんだろ?」
「ふんっ! せいぜい高望みをしてみせろ!」

 こいつ、一度は負けたのにすごい自信だな。おそらく奴の隣にいる上級生が関係しているのだろうが……。

 しかし、どうしたものか……。

 本来ならば、入学初日にテオドールに絡まれるのは、主人公のイベントなのだ。

 なんでオレに絡んでくるんだ?

 オレが主人公になったという線はないだろう。オレは主人公が持つべきギフトを持っていない。

 なんでテオドールだけ本来のシナリオとは外れた行動を取るんだ?

 このあたりを聞かせてもらおうか。

「その一、オレが勝ったら、テオドールにはある質問に答えてもらいたい」
「そんなことでいいのか? いいだろう」
「その二、今後ヴィアラット男爵家に対して不利益なことをしないこと」
「ふんっ! いいだろう」
「あとは……」

 あとはべつに要求することなんてないんだよなぁ。

 ヴィアラット以外の貴族領も独立というのはさすがに望み過ぎだし、辺境貴族の辺境伯への借金も帳消しにした。

 望めばテオドールの廃嫡もいけるかもしれないが、次に嫡子になる奴がまともかもわからない。それなら、条件を付けたテオドールの方が御しやすいだろう。

「どうするか……。シャルリーヌは何か欲しいものとかある?」
「わたくしも特に……。アベルが欲しいものがないのでしたら、金銭を要求したらいいんじゃないかしら?」
「金銭か」

 父上も王都での生活はなにかと金銭が必要とか言っていたし、ちょうどいいかもしれない。

「どれくらいの金額が妥当かな?」
「わからないわ。アリソンならわかる?」
「そうですね……」

 シャルリーヌに話を振られたアリソンが、指を顎に当てて考える。

「でしたら、先ほどのお話にあった辺境貴族の借金の合計金額を要求してみてはどうでしょう?」
「なるほど……」

 自分たちが貪っていた分だけ罰を受けるということか。因果応報って感じで気持ちがいいね。

「いいね。そうしよう。聞いていたな?」
「わかっている。もういいな? 決闘はここ闘技場でおこなう。立会人にはコランティーヌでも呼ぶ。決闘の形式は一対一だ」

 その時、テオドールが醜悪な笑みを見せた。

「紹介しよう。俺の決闘の代理人であるエルネスト・ラシーヌ先輩だ! 三年生でも上位の使い手にして、今年の武闘祭の優勝候補だ!」
「一年生の決闘に顔を出すなど大人げないと言ってくれるなよ? テオドールくんたっての願いだからね」

 そう言って軽薄に笑うエルネスト。

「そんなの卑怯よ!」
「恥知らず!」
「そうなんだなー!」
「辺境伯の嫡子がそんなこといいのかよ!?」
「うるさい! これが戦略というやつだ。そんなに言うなら、お前たちも上級生を連れてくるんだな!」

 シャルリーヌたちからあがる非難の中、テオドールは太々しく笑って答えた。

 テオドールがエルネストと一緒にいる時点でなんとなくそんな気はしてたが、やっぱりそうだったか。

 しっかし、なんでテオドールは主人公に仕掛けるイベントをオレに仕掛けてくるんだ?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです

やのもと しん
ファンタジー
「カイリ、今日からもう来なくていいから」  ある日突然パーティーから追放された俺――カイリは途方に暮れていた。日本から異世界に転移させられて一年。追放された回数はもう五回になる。  あてもなく歩いていると、追放してきたパーティーのメンバーだった女の子、アリシアが付いて行きたいと申し出てきた。  元々パーティーに不満を持っていたアリシアと共に宿に泊まるも、積極的に誘惑してきて……  更に宿から出ると姿を隠した少女と出会い、その子も一緒に行動することに。元王女様で今は国に追われる身になった、ナナを助けようとカイリ達は追手から逃げる。  追いつめられたところでカイリの中にある「神の使徒」の力が覚醒――無能力から世界最強に! 「――わたし、あなたに運命を感じました!」  ナナが再び王女の座に返り咲くため、カイリは冒険者として名を上げる。「厄災」と呼ばれる魔物も、王国の兵士も、カイリを追放したパーティーも全員相手になりません ※他サイトでも投稿しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。 これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

処理中です...