94 / 117
094 帰還と贈り物
しおりを挟む
「ふぃー」
ボス部屋のさらに奥の小部屋にある帰還用の魔法陣でダンジョンの外に出る。
上を見上げれば青い空が広がり、少し傾いた太陽がオレを出迎えてくれた。いい天気だなぁ。こんないい天気に臭くてジメジメしたダンジョンに潜っていたとか、なんだか損した気分さえする。
「うお!?」
「ん?」
声のした後方を見れば、そこには武装したエロワとポールがいた。二人とも手には松明を持ち、マスクを着けて、今まさにダンジョンから出てきた感じだな。
「どうしたんだ、二人とも?」
そうして二人がここにいるんだ?
「どうもこうもねえって! お前がいつまで経っても帰ってこないから、怪我でもしてんじゃねえかと思って探してたんだぞ!」
「そうなんだな」
「んで、どうにか第三階層まで潜ったんだが、毒消しが足りなくなって戻ってきた感じだな。どうしてお前はここにいるんだ? さっきまでいなかったろ?」
「突然現れたんだな。もしかして……」
「ああ、ダンジョンならクリアした。心配かけて悪かったな」
オレがそう答えると、二人は驚いたように目を見開き、口もあんぐりと開いていた。
「ま、マジかよ!? ダンジョンをクリアって言ったか!? 一人で!?」
「驚きなんだな!」
「アイテムとか足りなくならなかったのかよ!?」
「そういえば、まだ言ってなかったか……」
オレはエロワとポールの二人に見えるように腰のポシェット叩いた。
「実は、マジックバッグを買ってな。松明もポーションも毒消しも全部この中に入ってるんだ。すごいぞ、これ」
「すごいんだな!?」
「マジックバッグ……? そんな小さな鞄の中に松明が入るわきゃねーだろ。夢でも見てんのか?」
ポールは素直に驚いてくれたが、エロワはどうやらマジックバッグの存在を知らないらしい。
まぁ、オレと同じく辺境の出身だからね。知らなくても無理はないか。
「本当だって、ほら」
オレはマジックバッグのすごさを証明するために、松明よりも大きな槍をポシェットから取り出してみせた。
「うお!? どうなってんだ!?」
「ほんとにマジックバッグなんだな!」
「な? すごいだろ?」
ちょうどいい。ついでにエロワに槍を渡してしまおう。
「ほら」
「お、おう。ちゃんと重いな……。なにか仕掛けがあるわけじゃなさそうだ。それにしても気色悪い槍だな……」
「それ、やるよ」
「はあ!?」
ボスドロップの槍は、ちょっと黄ばんでいるが、白い骨を組み合わせて作られた大槍だ。攻撃力も高いし、攻撃時に確率で敵を麻痺させることができる。なかなか使える槍なのだ。
「だってこれ、ワイトのドロップアイテムだろ!? 売ればそれなりに金になるぜ!? そんな貰っていいのかよ!?」
「金か……」
そうか。売るという選択肢もあったな。シャルリーヌに借金がある現状では、少しでも金が欲しいところだが、一度口に出したことをひっこめるのはかっこ悪い。
「いいって。やるよ。これでもっと強くなってくれよ」
「アベル……、お前ってやつは……!」
エロワが感極まったようにオレの首に腕を回してきた。
正直お金は欲しいが、オレにはまだテオドールくんから回収していないお金もあるし、マヨネーズの利権もある。シャルリーヌに返す分のお金には困らないだろう。
早く返したいけどね。
「よっし! んじゃこれからアベルのダンジョンソロ攻略を祝ってパーティーだ!」
オレの首に腕を回していたエロワが、今度はポールの首にも腕を回して宣伝した。
「パーティ?」
「どうするんだな?」
「食堂で金払えば、ケーキが食えるのはお前らだって知ってるだろ? あれを食うぞ!」
「おぉ?」
たしかに、食堂ではお菓子の販売をしている。しかし、その値段はけっこう高い。
いつもなら付き合っただろうが、今は金欠なんだよなぁ。
「いや、すまんがマジックバッグを買ったら金がなくなちゃってさ……。二人で楽しんできてよ」
「オラもそんなお金持ってないんだな……」
「気にすんなって! 今日は俺のおごりだ!」
「「え!?」」
思わずポールと一緒に驚いた声をあげていた。
あのケチでエロいエロワからおごりなんて言葉が出るとは思わなかったのだ。
「その、疑うわけじゃないが、大丈夫なのか? 金貨が吹っ飛ぶぞ?」
「任せとけって。俺の槍ってボロボロだったろ? 実はよ、俺は新しい槍を買うために節約して金貯めてたんだよ。なのにアベルに槍も貰っちまったからな。こりゃお礼するしかないべ?」
なるほどなぁ。オレもエロワを見習って貯金をするべきかもしれない。
武器はゲームみたいに手に入れたら永遠に使えるわけじゃない。ちゃんと手入れしないと錆びたりするし、使い込めば使い込むほど痛んでいく。
オレも両親から貰った盾の表面を撫でると、凸凹と傷が走っていた。そろそろ買い換えるべきだってのはわかってるんだが、手に馴染むんだよなぁ。それに愛着もあって手放しづらい。
まぁ、いつかは手放さなくてはならないのだが……。
ボス部屋のさらに奥の小部屋にある帰還用の魔法陣でダンジョンの外に出る。
上を見上げれば青い空が広がり、少し傾いた太陽がオレを出迎えてくれた。いい天気だなぁ。こんないい天気に臭くてジメジメしたダンジョンに潜っていたとか、なんだか損した気分さえする。
「うお!?」
「ん?」
声のした後方を見れば、そこには武装したエロワとポールがいた。二人とも手には松明を持ち、マスクを着けて、今まさにダンジョンから出てきた感じだな。
「どうしたんだ、二人とも?」
そうして二人がここにいるんだ?
「どうもこうもねえって! お前がいつまで経っても帰ってこないから、怪我でもしてんじゃねえかと思って探してたんだぞ!」
「そうなんだな」
「んで、どうにか第三階層まで潜ったんだが、毒消しが足りなくなって戻ってきた感じだな。どうしてお前はここにいるんだ? さっきまでいなかったろ?」
「突然現れたんだな。もしかして……」
「ああ、ダンジョンならクリアした。心配かけて悪かったな」
オレがそう答えると、二人は驚いたように目を見開き、口もあんぐりと開いていた。
「ま、マジかよ!? ダンジョンをクリアって言ったか!? 一人で!?」
「驚きなんだな!」
「アイテムとか足りなくならなかったのかよ!?」
「そういえば、まだ言ってなかったか……」
オレはエロワとポールの二人に見えるように腰のポシェット叩いた。
「実は、マジックバッグを買ってな。松明もポーションも毒消しも全部この中に入ってるんだ。すごいぞ、これ」
「すごいんだな!?」
「マジックバッグ……? そんな小さな鞄の中に松明が入るわきゃねーだろ。夢でも見てんのか?」
ポールは素直に驚いてくれたが、エロワはどうやらマジックバッグの存在を知らないらしい。
まぁ、オレと同じく辺境の出身だからね。知らなくても無理はないか。
「本当だって、ほら」
オレはマジックバッグのすごさを証明するために、松明よりも大きな槍をポシェットから取り出してみせた。
「うお!? どうなってんだ!?」
「ほんとにマジックバッグなんだな!」
「な? すごいだろ?」
ちょうどいい。ついでにエロワに槍を渡してしまおう。
「ほら」
「お、おう。ちゃんと重いな……。なにか仕掛けがあるわけじゃなさそうだ。それにしても気色悪い槍だな……」
「それ、やるよ」
「はあ!?」
ボスドロップの槍は、ちょっと黄ばんでいるが、白い骨を組み合わせて作られた大槍だ。攻撃力も高いし、攻撃時に確率で敵を麻痺させることができる。なかなか使える槍なのだ。
「だってこれ、ワイトのドロップアイテムだろ!? 売ればそれなりに金になるぜ!? そんな貰っていいのかよ!?」
「金か……」
そうか。売るという選択肢もあったな。シャルリーヌに借金がある現状では、少しでも金が欲しいところだが、一度口に出したことをひっこめるのはかっこ悪い。
「いいって。やるよ。これでもっと強くなってくれよ」
「アベル……、お前ってやつは……!」
エロワが感極まったようにオレの首に腕を回してきた。
正直お金は欲しいが、オレにはまだテオドールくんから回収していないお金もあるし、マヨネーズの利権もある。シャルリーヌに返す分のお金には困らないだろう。
早く返したいけどね。
「よっし! んじゃこれからアベルのダンジョンソロ攻略を祝ってパーティーだ!」
オレの首に腕を回していたエロワが、今度はポールの首にも腕を回して宣伝した。
「パーティ?」
「どうするんだな?」
「食堂で金払えば、ケーキが食えるのはお前らだって知ってるだろ? あれを食うぞ!」
「おぉ?」
たしかに、食堂ではお菓子の販売をしている。しかし、その値段はけっこう高い。
いつもなら付き合っただろうが、今は金欠なんだよなぁ。
「いや、すまんがマジックバッグを買ったら金がなくなちゃってさ……。二人で楽しんできてよ」
「オラもそんなお金持ってないんだな……」
「気にすんなって! 今日は俺のおごりだ!」
「「え!?」」
思わずポールと一緒に驚いた声をあげていた。
あのケチでエロいエロワからおごりなんて言葉が出るとは思わなかったのだ。
「その、疑うわけじゃないが、大丈夫なのか? 金貨が吹っ飛ぶぞ?」
「任せとけって。俺の槍ってボロボロだったろ? 実はよ、俺は新しい槍を買うために節約して金貯めてたんだよ。なのにアベルに槍も貰っちまったからな。こりゃお礼するしかないべ?」
なるほどなぁ。オレもエロワを見習って貯金をするべきかもしれない。
武器はゲームみたいに手に入れたら永遠に使えるわけじゃない。ちゃんと手入れしないと錆びたりするし、使い込めば使い込むほど痛んでいく。
オレも両親から貰った盾の表面を撫でると、凸凹と傷が走っていた。そろそろ買い換えるべきだってのはわかってるんだが、手に馴染むんだよなぁ。それに愛着もあって手放しづらい。
まぁ、いつかは手放さなくてはならないのだが……。
115
あなたにおすすめの小説
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~
キョウキョウ
ファンタジー
普通の会社員だった佐藤隼人(さとうはやと)は、ある日突然異世界に招かれる。
異世界で勇者として10年間を旅して過ごしながら魔王との戦いに決着をつけた隼人。
役目を終えて、彼は異世界に旅立った直後の現代に戻ってきた。
隼人の意識では10年間という月日が流れていたが、こちらでは一瞬の出来事だった。
戻ってきたと実感した直後、彼の体に激痛が走る。
異世界での経験と成長が現代の体に統合される過程で、隼人は1ヶ月間寝込むことに。
まるで生まれ変わるかのような激しい体の変化が続き、思うように動けなくなった。
ようやく落ち着いた頃には無断欠勤により会社をクビになり、それを知った恋人から別れを告げられる。
それでも隼人は現代に戻ってきて、生きられることに感謝する。
次の仕事を見つけて、新しい生活を始めようと前向きになった矢先、とある人物が部屋を訪ねてくる。
その人物とは、異世界で戦友だった者の名を口にする女子高生だった。
「ハヤト様。私たちの世界を救ってくれて、本当にありがとう。今度は、私たちがあなたのことを幸せにします!」
※カクヨムにも掲載中です。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる