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095 ソロ攻略のお祝い
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「おめでとう、アベル! 一人で『嘆きの地下墳墓』を踏破するなんてすごいわ!」
「でへへ」
男子寮と女子寮の間にある中庭。花壇に囲まれたテラス席で、オレとシャルリーヌ、アリソンとブリジット、エロワとポールはお茶を片手に話に花を咲かせていた。
今日はエロワのおごりらしいが、できればシャルリーヌたちにも祝ってほしかったのだ。
「おいしいんだな!」
ポールがバクバクケーキを食べ、その様子をエロワが青い顔をして胃の痛そうな顔で見ている。
「おめでとうございます、アベル様」
「アベル様って本当にお強いのですね」
「ありがとう、アリソン、ブリジット」
やっぱり女の子がいると華やかなムードになるね。呼んでよかったよ。
エロワ? エロワならテーブルの下でお財布の中身をひっくり返してるよ。どうしたんだろうね?
「毒になると苦しいし、麻痺になると動けなくなるのでしょう? そんな所に一人で行くなんて、危なくなかったの?」
「攻撃に当たらなければいいだけだよ」
「それはそうだけど……」
オレとしては至極まっとうなことを言ったつもりなのだが、みんな微妙な顔を浮かべていた。なんでだ?
やっぱり、「当たらなければどうということはない」って言うべきだっただろうか?
「まぁ、もちろん万全の備えはしたよ。毒消しや麻痺治しはすぐに出せるようにしてたし。それに、オレは神聖魔法も使えるからね。神聖魔法には、毒や麻痺を治す魔法もあるんだ。そうだろ、アリソン?」
オレは同じく神聖魔法が使えるアリソンに話を振る。アリソンはオレよりも神聖魔法の適正が上だ。彼女ならばオレの言うこともわかってくれるはず。
「そうですけど、普通は回復の魔法を唱える前に殺されてしまうのでは……? モンスターと戦いながら、魔法も唱えるというのはあまり聞いたことがございません」
「え? オレ、普通にやってるけど?」
というか、モンスターと剣で戦闘しながら魔法を使うのなんて、ゲームでは当たり前にやっていたテクニックなんだが……。
たしかに、モンスターの攻撃を喰らうと、魔法の詠唱が妨害されちゃうよ? でも、それはタイミングを見計らえばいいだけの問題なのだ。
「そんなことが可能なのですか? 魔法というのは、相応に集中しなければできないのですけど……。アベル様はモンスターに攻撃されている最中も魔法に集中することができると?」
「え? 普通のことだと思ってたけど……?」
そう答えると、アリソンとシャルリーヌが頭が痛いとばかりに額に手を置いていた。
「普通じゃないわよ。少なくとも、わたくしにはそんなことは不可能だわ」
「わたくしもシャルリーヌ様と同意見です」
そうなのか? ゲームでは必須のテクニックだったんだが……。主人公とかすごいぞ? 剣で戦いながら広範囲魔法とか唱えるからな。あれはもう戦略兵器だ。
「俺にはよくわかんねえけどよ、アベルがまた変なことしてるのかよ?」
「変なことって言わないでくれよ……」
なんだかオレが非常識みたいじゃないか。
「そうね。魔法って繊細なのよ。間違えて発動しないなんてこともあるけど、それはまだいい方だわ。最悪、暴発して危ないんだから。なのにアベルったら、いつ暴発してもおかしくないようなことを平気でやるんだもの。もう変というか、おかしいレベルね」
主に攻撃魔法を使うシャルリーヌは、特に気を付けているのかもしれないね。
「慣れれば便利で簡単なんだけどなぁ……」
「普通は慣れるまでに事故を起こしますよ」
ボヤいたら、アリソンに釘を刺されてしまった。
オレはやめるつもりはないけど、無理強いはしないよ。
「お待たせいたしました。パティシエの渾身~季節のフルーツを添えて~でございます」
声のした方向を見ると、学園のメイドさんが恭しくテーブルにケーキを並べていく。
「来たんだな!」
そして、テーブルに乗った瞬間にケーキにフォークを突き立てるポール。そのままポールは一口でケーキを次々と口の中に放り込んでいく。
「うまいんだな!」
「てめ、ポール! 黙ってると思ったらケーキを全部食うどころかおかわりまでしやがって! お前はちったー遠慮ってもんを知りやがれ!」
「エロワ、世の中弱肉強食で早い者勝ちなんだな」
「うっせーよ!」
ポールが初めて食べたケーキに暴走し、エロワの懐に痛烈なダメージを入れていた。
ちなみに、エロワは全額支払うことができたが、貯金はほぼなくなってしまったらしい。
南無。
「でへへ」
男子寮と女子寮の間にある中庭。花壇に囲まれたテラス席で、オレとシャルリーヌ、アリソンとブリジット、エロワとポールはお茶を片手に話に花を咲かせていた。
今日はエロワのおごりらしいが、できればシャルリーヌたちにも祝ってほしかったのだ。
「おいしいんだな!」
ポールがバクバクケーキを食べ、その様子をエロワが青い顔をして胃の痛そうな顔で見ている。
「おめでとうございます、アベル様」
「アベル様って本当にお強いのですね」
「ありがとう、アリソン、ブリジット」
やっぱり女の子がいると華やかなムードになるね。呼んでよかったよ。
エロワ? エロワならテーブルの下でお財布の中身をひっくり返してるよ。どうしたんだろうね?
「毒になると苦しいし、麻痺になると動けなくなるのでしょう? そんな所に一人で行くなんて、危なくなかったの?」
「攻撃に当たらなければいいだけだよ」
「それはそうだけど……」
オレとしては至極まっとうなことを言ったつもりなのだが、みんな微妙な顔を浮かべていた。なんでだ?
やっぱり、「当たらなければどうということはない」って言うべきだっただろうか?
「まぁ、もちろん万全の備えはしたよ。毒消しや麻痺治しはすぐに出せるようにしてたし。それに、オレは神聖魔法も使えるからね。神聖魔法には、毒や麻痺を治す魔法もあるんだ。そうだろ、アリソン?」
オレは同じく神聖魔法が使えるアリソンに話を振る。アリソンはオレよりも神聖魔法の適正が上だ。彼女ならばオレの言うこともわかってくれるはず。
「そうですけど、普通は回復の魔法を唱える前に殺されてしまうのでは……? モンスターと戦いながら、魔法も唱えるというのはあまり聞いたことがございません」
「え? オレ、普通にやってるけど?」
というか、モンスターと剣で戦闘しながら魔法を使うのなんて、ゲームでは当たり前にやっていたテクニックなんだが……。
たしかに、モンスターの攻撃を喰らうと、魔法の詠唱が妨害されちゃうよ? でも、それはタイミングを見計らえばいいだけの問題なのだ。
「そんなことが可能なのですか? 魔法というのは、相応に集中しなければできないのですけど……。アベル様はモンスターに攻撃されている最中も魔法に集中することができると?」
「え? 普通のことだと思ってたけど……?」
そう答えると、アリソンとシャルリーヌが頭が痛いとばかりに額に手を置いていた。
「普通じゃないわよ。少なくとも、わたくしにはそんなことは不可能だわ」
「わたくしもシャルリーヌ様と同意見です」
そうなのか? ゲームでは必須のテクニックだったんだが……。主人公とかすごいぞ? 剣で戦いながら広範囲魔法とか唱えるからな。あれはもう戦略兵器だ。
「俺にはよくわかんねえけどよ、アベルがまた変なことしてるのかよ?」
「変なことって言わないでくれよ……」
なんだかオレが非常識みたいじゃないか。
「そうね。魔法って繊細なのよ。間違えて発動しないなんてこともあるけど、それはまだいい方だわ。最悪、暴発して危ないんだから。なのにアベルったら、いつ暴発してもおかしくないようなことを平気でやるんだもの。もう変というか、おかしいレベルね」
主に攻撃魔法を使うシャルリーヌは、特に気を付けているのかもしれないね。
「慣れれば便利で簡単なんだけどなぁ……」
「普通は慣れるまでに事故を起こしますよ」
ボヤいたら、アリソンに釘を刺されてしまった。
オレはやめるつもりはないけど、無理強いはしないよ。
「お待たせいたしました。パティシエの渾身~季節のフルーツを添えて~でございます」
声のした方向を見ると、学園のメイドさんが恭しくテーブルにケーキを並べていく。
「来たんだな!」
そして、テーブルに乗った瞬間にケーキにフォークを突き立てるポール。そのままポールは一口でケーキを次々と口の中に放り込んでいく。
「うまいんだな!」
「てめ、ポール! 黙ってると思ったらケーキを全部食うどころかおかわりまでしやがって! お前はちったー遠慮ってもんを知りやがれ!」
「エロワ、世の中弱肉強食で早い者勝ちなんだな」
「うっせーよ!」
ポールが初めて食べたケーキに暴走し、エロワの懐に痛烈なダメージを入れていた。
ちなみに、エロワは全額支払うことができたが、貯金はほぼなくなってしまったらしい。
南無。
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