【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
96 / 117

096 注目の的

しおりを挟む
 明けて次の日。三連休も終わり、授業が始まったのだが、オレは注目の的になっていた。

「ほら、あいつじゃないか?」
「ほう? 一年生なのに大したものだ」

 今もすれ違った上級生がオレを見ていたような気がする。

 なんでも、『嘆きの地下墳墓』のソロ攻略自体はそう珍しくもないが、それを学園に入ったばかりの一年生が成し遂げたというのが珍しいらしい。

「すっげー見られてるな。よ! 有名人!」
「すごいんだな!」
「ああ……」

 エロワとポールの二人は喜んでくれるが、前世でもあまり注目されることのなかったオレとしては、ちょっと恥ずかしいようなむず痒い気持ちだ。

 まぁ、これもそのうち慣れるだろう。

「アベル」
「シャルリーヌ?」

 声に振り向けば、シャルリーヌがいつものようにアリソンとブリジットを引き連れて立っていた。

「昨日も言ったけど、ソロ攻略本当におめでとう。一人で攻略しちゃうなんてすごいわ」
「ありがとう」

 シャルリーヌのキラキラした瞳で見つめられると、オレの心は舞い上がりそうだよ。

「それでね。マルゲリット様が、アベルと話してみたいと仰せよ」
「マルゲリット殿下が?」

 シャルリーヌは、マルゲリットのいわゆるお友だちってやつだ。普段は主にクラスメイトとマルゲリットの仲介のようなことをしている。それでオレを呼びに来たのだろう。

「わかった。行くよ」
「じゃあ、付いて来て」
「ああ」

 シャルリーヌに付いて行くと、マルゲリットがニッコリとした笑顔で迎えてくれる。

 オレはすかさずその場に跪くと、頭を垂れた。

「アベル・ヴィアラット、お呼びと伺い只今参上いたしました」

 オレとしてはかっこよく決めたつもりなのだが、なんだかマルゲリットからは困ったような気配を感じる。

 なんでだ?

「アベル、今は正式な場でもありませんし、わたくしたちは同じクラスメイト。以後この教室でそのような礼は不要ですよ」
「もったいないお言葉です」

 マルゲリットに許しを貰ったオレは、すくっと立ち上がる。

「シャルリーヌより聞きました。アベルは『嘆きの地下墳墓』をたった一人で攻略したようですね。おめでとうございます。さすがアベルですね」
「ありがとうございます、マルゲリット殿下。お褒めに与り恐悦至極に存じます」
「お兄さまもいたく感心しておいででしたよ」

 マルゲリットの兄ということは、あのフェルディナンだろう。フェルディナンも感心していたのか。それはいいことを聞いたな。

 オレはべつに貴族としての栄達はあまり求めていないが、やっぱり権力者の印象はいいものにしておきたいからね。ただ強いだけでは生きていけない。人間って面倒な生き物だね。

「わたくしも先日『嘆きの地下墳墓』に潜ったので、それを一人で攻略することがどれだけすごいことなのかわかるつもりです。挑戦する勇気だけでも素晴らしいのに、まさか攻略してしまうだなんて。さすがはあのガストン・ヴィアラットの息子だとお兄さまもおっしゃっていました」
「ありがとうございます!」

 オレは必至にポーカーフェイスをしているつもりだけど、オレが父上を尊敬していることなんてマルゲリットたち王族には筒抜けなんだろうな。まるでオレがどう言ったら一番喜ぶのか熟知しているみたいだ。

 そう。オレはヴィアラットの家名を背負ってこの場にいる。オレの些細な言動一つで、みんなのヴィアラットへの評価も決まるのだ。たしかに緊張するが、心の鍛錬にはもってこいだね。

「やはりお父上に手ほどきを受けたのですか?」
「はい。父上は天才肌というか、人に教えるのはあまり上手くないのかもしれませんが、それでも、父上との訓練で得たものはたくさんあります」

 父上は、武に優れるという辺境の貴族の中でも最強の男だ。オレは今までかなり贅沢な環境にいたんだなと実感する。

 強者と直接剣を合わせる機会はそれだけ貴重なのだ。

「ご家族の方と良い関係を築けているようですね」
「はい!」

 父上も母上も、オレの誇りだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

処理中です...