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103 ガストン・ヴィアラット⑤
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ワシとエタンは、ダルセー辺境伯の屋敷の裏手に来ていた。そこには広々としたグラウンドが広がっており、その少し向こうにはワシたちの乗ってきたヴァネッサの艦影も見える。
ここはダルセー辺境伯が持つ飛空艇の離着艦場所だ。どうやらここで決闘をするらしい。
「来たか」
ダルセー辺境伯の言葉に振り向けば、そこにはまるでオークのような巨体な黒く輝く物体がこちらに走ってきていた。
大柄と言われることの多いワシよりもさらに大きな全身鎧だ。その背中には巨大と形容するのもバカバカしくなるほど大きな黒い斧を交差させている。
「あれは、ゴーレムですか……?」
「いや、あれは……おそらく、人間だ」
微かだか、あの全身鎧からは生き物のような息遣いを感じる。
巨大な全身鎧はダルセー辺境伯の前で跪くと、ワシの言葉を肯定するようにくぐもった声をあげる。
「オラ、ギタ」
まるで岩を転がしたような重低音。声からすると、男だな。
「来たか、のろまめ。いいか? 合図が鳴ったら、あの男を倒せ。理解したか?」
「ン? ンン」
のろまと呼ばれた全身鎧の男がこちらを向く。そして、ワシと目が合うと頷いた。
「ガストン! 貴様の辺境最強の名も今日までだ! おい、イソノ! とっとと決闘を始めろ!」
「はい! ヴィアラット男爵様、ご準備よろしいですか?」
「ああ」
おそらく審判役なのだろう。イソノと呼ばれていた執事風の男に頷く。
「では……。始めッ!」
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
決闘開始早々、全身鎧の男が雄叫びをあげて突っ込んでくる。その両手にはそれぞれに両手斧が握られているのだが、男が大きすぎてまるで片手斧のようだ。それだけで男の凄まじいまでの腕力を物語っている。
あれはまともにぶつかったら面倒だな。
ワシは背中に吊っていた大剣の柄を握る。
その時にはすでに男はワシに向かって二本の両手斧を振りかぶっていた。
ワシは踊るようにステップを踏む。
「ツブレ……オロ……?」
ワシの目の前を二本の両手斧が通り過ぎ、地面に叩きつけられる。
「ナンデ……?」
ワシが斧に潰されなかったのがそんなに不思議なのか、全身鎧が首をかしげていた。
「なんで? 当たってないからだが?」
「フグウウウウウ!」
質問に答えてやったら、全身鎧のフェイスガードからまるで湯気のように荒い呼気が漏れていた。
「ツブス!」
「おっと」
男がまるで高速でクワで畑を耕すように両手の斧を地面に叩きつけ始める。
「ふはは! ガストン、手も足も出ないか? こいつの筋力は大したものだろう? 体格に恵まれたお前だ。自分より大きな者と戦った経験は少ない! そして、この日のために用意したアダマンタイトの鎧! いくら魔法の斬れるお前でも、この鎧は斬れまい!」
「ほう?」
この全身鎧はアダマンタイト製なのか。たしかに耐久力は上がるだろうが、アダマンタイトは鉄よりも重い。そんな物で全身鎧を作るなど正気の沙汰ではない。いったいいくらしたのだろう? それに、そんな物を身に着けて動ける人間がいるなど思いもよらなかった。
世界は広いな。
だが――――。
「そんなものか?」
「ゼハーッ、ゼハーッ、ゼハーッ、ゼハーッ……!」
やはりアダマンタイトの重りは過剰だったのか、全身鎧の男は早々に息切れしていた。
もうワシの軽口に付き合ってもくれない。
いや、むしろ今まで動けていたことこそ褒めるべきなのだろう。
だが、待ってみてもこれ以上のものは出てきそうにないな。
辛そうだし、早々に終わらせてやるか。
「ふんっ!」
ワシは背中から大剣を抜くと、大剣の横腹で全身鎧のヘルムを上から下に叩き潰す。
安心しろ、殺しはしない。
「ヘギュッ!?」
緩慢な動きで斧を振り続けていた男は、それだけ言うとどさりと前のめりに倒れた。
「なっ!? たった一撃で……!?」
想像以上に驚くダルセー辺境伯。
そんなに自信があったのか?
「これでワシの勝ちだな?」
ワシが審判の方を見ると、審判は弾かれたように全身鎧の男の様態を確かめ始めた。
「これは……決闘の続行は不可能です……」
「なんだと!? そいつは少し寝ているだけだ! 叩き起こせ!」
なんだか無茶苦茶なことを言い始めたな。
「それは決闘者への援助と見做されないのか?」
「くっ……」
「ワシの勝ちでいいな? 辺境伯の地位にある者が、まさか神聖な決闘を冒涜はせんだろ?」
「言わせておけば……! くそっ! いいだろう! お前の勝ちだ! だが、このままでは済まさんぞ! 必ず吠え面をかかせてやる!」
それだけ言うと、ダルセー辺境伯は荒い態度で屋敷の方へ歩いて行ってしまった。
やれやれ、代わりに決闘に出た者へのねぎらいの言葉もなしか。
だが、この決闘で手に入れたものは大きい。これで辺境の者たちのダルセー辺境伯への借金は帳消しになり、ワシの手には莫大な金貨が残った。
さて、どうするか……?
だが、それよりも今は。
「名も知らぬ戦士よ、今は眠れ。また強くなった暁には、再び相まみえようぞ」
ワシはそう全身鎧の男に声をかけると、ヴァネッサの方へと歩き出した。
ここはダルセー辺境伯が持つ飛空艇の離着艦場所だ。どうやらここで決闘をするらしい。
「来たか」
ダルセー辺境伯の言葉に振り向けば、そこにはまるでオークのような巨体な黒く輝く物体がこちらに走ってきていた。
大柄と言われることの多いワシよりもさらに大きな全身鎧だ。その背中には巨大と形容するのもバカバカしくなるほど大きな黒い斧を交差させている。
「あれは、ゴーレムですか……?」
「いや、あれは……おそらく、人間だ」
微かだか、あの全身鎧からは生き物のような息遣いを感じる。
巨大な全身鎧はダルセー辺境伯の前で跪くと、ワシの言葉を肯定するようにくぐもった声をあげる。
「オラ、ギタ」
まるで岩を転がしたような重低音。声からすると、男だな。
「来たか、のろまめ。いいか? 合図が鳴ったら、あの男を倒せ。理解したか?」
「ン? ンン」
のろまと呼ばれた全身鎧の男がこちらを向く。そして、ワシと目が合うと頷いた。
「ガストン! 貴様の辺境最強の名も今日までだ! おい、イソノ! とっとと決闘を始めろ!」
「はい! ヴィアラット男爵様、ご準備よろしいですか?」
「ああ」
おそらく審判役なのだろう。イソノと呼ばれていた執事風の男に頷く。
「では……。始めッ!」
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
決闘開始早々、全身鎧の男が雄叫びをあげて突っ込んでくる。その両手にはそれぞれに両手斧が握られているのだが、男が大きすぎてまるで片手斧のようだ。それだけで男の凄まじいまでの腕力を物語っている。
あれはまともにぶつかったら面倒だな。
ワシは背中に吊っていた大剣の柄を握る。
その時にはすでに男はワシに向かって二本の両手斧を振りかぶっていた。
ワシは踊るようにステップを踏む。
「ツブレ……オロ……?」
ワシの目の前を二本の両手斧が通り過ぎ、地面に叩きつけられる。
「ナンデ……?」
ワシが斧に潰されなかったのがそんなに不思議なのか、全身鎧が首をかしげていた。
「なんで? 当たってないからだが?」
「フグウウウウウ!」
質問に答えてやったら、全身鎧のフェイスガードからまるで湯気のように荒い呼気が漏れていた。
「ツブス!」
「おっと」
男がまるで高速でクワで畑を耕すように両手の斧を地面に叩きつけ始める。
「ふはは! ガストン、手も足も出ないか? こいつの筋力は大したものだろう? 体格に恵まれたお前だ。自分より大きな者と戦った経験は少ない! そして、この日のために用意したアダマンタイトの鎧! いくら魔法の斬れるお前でも、この鎧は斬れまい!」
「ほう?」
この全身鎧はアダマンタイト製なのか。たしかに耐久力は上がるだろうが、アダマンタイトは鉄よりも重い。そんな物で全身鎧を作るなど正気の沙汰ではない。いったいいくらしたのだろう? それに、そんな物を身に着けて動ける人間がいるなど思いもよらなかった。
世界は広いな。
だが――――。
「そんなものか?」
「ゼハーッ、ゼハーッ、ゼハーッ、ゼハーッ……!」
やはりアダマンタイトの重りは過剰だったのか、全身鎧の男は早々に息切れしていた。
もうワシの軽口に付き合ってもくれない。
いや、むしろ今まで動けていたことこそ褒めるべきなのだろう。
だが、待ってみてもこれ以上のものは出てきそうにないな。
辛そうだし、早々に終わらせてやるか。
「ふんっ!」
ワシは背中から大剣を抜くと、大剣の横腹で全身鎧のヘルムを上から下に叩き潰す。
安心しろ、殺しはしない。
「ヘギュッ!?」
緩慢な動きで斧を振り続けていた男は、それだけ言うとどさりと前のめりに倒れた。
「なっ!? たった一撃で……!?」
想像以上に驚くダルセー辺境伯。
そんなに自信があったのか?
「これでワシの勝ちだな?」
ワシが審判の方を見ると、審判は弾かれたように全身鎧の男の様態を確かめ始めた。
「これは……決闘の続行は不可能です……」
「なんだと!? そいつは少し寝ているだけだ! 叩き起こせ!」
なんだか無茶苦茶なことを言い始めたな。
「それは決闘者への援助と見做されないのか?」
「くっ……」
「ワシの勝ちでいいな? 辺境伯の地位にある者が、まさか神聖な決闘を冒涜はせんだろ?」
「言わせておけば……! くそっ! いいだろう! お前の勝ちだ! だが、このままでは済まさんぞ! 必ず吠え面をかかせてやる!」
それだけ言うと、ダルセー辺境伯は荒い態度で屋敷の方へ歩いて行ってしまった。
やれやれ、代わりに決闘に出た者へのねぎらいの言葉もなしか。
だが、この決闘で手に入れたものは大きい。これで辺境の者たちのダルセー辺境伯への借金は帳消しになり、ワシの手には莫大な金貨が残った。
さて、どうするか……?
だが、それよりも今は。
「名も知らぬ戦士よ、今は眠れ。また強くなった暁には、再び相まみえようぞ」
ワシはそう全身鎧の男に声をかけると、ヴァネッサの方へと歩き出した。
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