107 / 117
107 ミノタウロス戦
しおりを挟む
「BUMOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!?」
その瞬間、ミノタウロスはまるで銃撃にでもあったかのように激しくよろめいた。ミノタウロスの左腕は、二の腕部分から千切れたように吹き飛び、血の代わりに白い煙がもくもくと溢れ出していた。
片腕になったミノタウロスはもう手が付けれないほど暴れていた。
ミノタウロスにしてみれば、フラッシュで視界を潰されたと思ったら、今度は左腕をもぎ取られたのだ。それはパニックになっても仕方がないかもしれない。
それにしても、ダンジョンのモンスターってもっと無機質なイメージがあったけど、意外と感情豊かなんだな。
そんな場違いなことを思いながら、オレは口を開く。
「今だ! たたみかけろ!」
「かしこまりました」
オレの声にいの一番に反応したのは、ブリジットだった。彼女の声の後にはボウンッと弓の弦が複数回鳴る音が聞こえて、タタタッとミノタウロスの顔に矢が三本生える。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
雄叫びをあげてミノタウロスに突っ込んでいくのは、長槍を構えたエロワだ。その穂先はミノタウロスの左足の甲を貫き、ミノタウロスを磔にすることに成功する。
「どっこいしょー!」
そこに飛び込んできたのがポールだ。彼は普段の言動からは想像もできないほど機敏な動きでミノタウロスに接近すると、担いだ大剣をまるでバットのようにスイングする。
ポールの大剣はミノタウロスの右膝にぶち当たり、その半ばまで断ち切った。
「BUMOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
ミノタウロスは悲鳴のような声をあげると、そのままどうっと前のめりに倒れた。さすがにポールの一撃は堪えたようだ。
だが、ミノタウロスの生命力は凄まじく、その状態でもまだ生きていた。
それどころか、まるでおもちゃをねだる子どものように残った手足をバタバタさせて足掻いている。
「アイスランス!」
そんなミノタウロスに無慈悲に撃ち込まれるのは、巨大な氷の杭だ。先にミノタウロスの左腕を奪ったシャルリーヌの得意魔法である。
アイスランスは、今度はミノタウロスの頭から胴体を貫き、ミノタウロスを串刺しにした。
ぼふんっと白い煙となって消えるミノタウロス。これで戦闘終了だ。
「皆様、お怪我はございませんか?」
戦闘が終わり、アリソンがみんなの体調を確認していくが、みんな無傷のようだ。
いくら十階層の階層ボスとはいえ、階層ボスを無傷で討伐できたのは大きいね。
ミノタウロスのいたボス部屋の奥には、小規模なドーム状の部屋のようなところがあり、その地面には幾何学的な魔法陣が光り輝いていた。帰還用の魔法陣だ。
オレたちは魔法陣の中に入らないようにさらに奥へ移動すると、今度は下り坂が現れる。これが第十一階層への道だ。
その下り坂の途中で、オレは足を止めて振り返った。
エロワ、ポール、シャルリーヌ、アリソン、ブリジット、みんながオレを見ている。
「みんな、ミノタウロスの討伐おめでとう。みんないい動きだったよ。特にシャルリーヌの魔法の威力には驚かされた。おかげで短時間でミノタウロスを撃破することもできたし、無傷での勝利だ。いい感じだね」
「当然よ」
そう腕を組んで言うシャルリーヌだが、ちょっと得意げな顔をしているのをオレは見逃さない。
たぶん褒められて嬉しかったのだろう。そういう素直な反応がかわいらしい。スクショ撮りたい。
「『洞窟』は全部で五十階層ある。この調子でどんどん進んでいこう。でも、適度に休憩も必要だ。ここはモンスターも来ない安全地帯らしい。ここで休憩していこう」
オレは率先して洞窟の地面に座ると、みんなも座り始める。いつもなら泥が付くから座らないだろう女の子たちも、みんな思い思いに座って足を延ばしていた。
オレは腰のマジックバッグから水差しとコップを取り出すと、エロワとポールにコップを渡す。
向こうでは、シャルリーヌが同じようにマジックバッグからポットとティーカップを出しているのが見えた。どうやら向こうはお茶を飲むらしい。
まぁ、オレたち辺境組は優雅なお茶よりも水をがぶ飲みしたい気分だ。
「かぁあー! 水がうめえ!」
エロワのコップに水を注いでやると、さっそくエロワがコップを呷る。まるで酒でも飲んでいるみたいでちょっと笑ってしまう。
「おかわりなんだなー」
「ああ」
ポールも一息に水を飲んだみたいで、すぐにおかわりを要求してきた。
オレはポールに水差しを渡すと、マジックバッグから昼食を取り出していく。
腹時計では、今は午後三時くらいかな。
「遅くなったけど、ここで昼食も食べようか」
「おおー! 待ってました!」
「食べたいんだなー」
「そうね。わたくしも準備するわ」
「ありがとうございます、シャルリーヌ様」
「わたくしもうお腹ペコペコですの」
「腹いっぱいは食べないようにな」
そんな注意をしながら、オレたちは昼食のサンドイッチを頬張るのだった。
その瞬間、ミノタウロスはまるで銃撃にでもあったかのように激しくよろめいた。ミノタウロスの左腕は、二の腕部分から千切れたように吹き飛び、血の代わりに白い煙がもくもくと溢れ出していた。
片腕になったミノタウロスはもう手が付けれないほど暴れていた。
ミノタウロスにしてみれば、フラッシュで視界を潰されたと思ったら、今度は左腕をもぎ取られたのだ。それはパニックになっても仕方がないかもしれない。
それにしても、ダンジョンのモンスターってもっと無機質なイメージがあったけど、意外と感情豊かなんだな。
そんな場違いなことを思いながら、オレは口を開く。
「今だ! たたみかけろ!」
「かしこまりました」
オレの声にいの一番に反応したのは、ブリジットだった。彼女の声の後にはボウンッと弓の弦が複数回鳴る音が聞こえて、タタタッとミノタウロスの顔に矢が三本生える。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
雄叫びをあげてミノタウロスに突っ込んでいくのは、長槍を構えたエロワだ。その穂先はミノタウロスの左足の甲を貫き、ミノタウロスを磔にすることに成功する。
「どっこいしょー!」
そこに飛び込んできたのがポールだ。彼は普段の言動からは想像もできないほど機敏な動きでミノタウロスに接近すると、担いだ大剣をまるでバットのようにスイングする。
ポールの大剣はミノタウロスの右膝にぶち当たり、その半ばまで断ち切った。
「BUMOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
ミノタウロスは悲鳴のような声をあげると、そのままどうっと前のめりに倒れた。さすがにポールの一撃は堪えたようだ。
だが、ミノタウロスの生命力は凄まじく、その状態でもまだ生きていた。
それどころか、まるでおもちゃをねだる子どものように残った手足をバタバタさせて足掻いている。
「アイスランス!」
そんなミノタウロスに無慈悲に撃ち込まれるのは、巨大な氷の杭だ。先にミノタウロスの左腕を奪ったシャルリーヌの得意魔法である。
アイスランスは、今度はミノタウロスの頭から胴体を貫き、ミノタウロスを串刺しにした。
ぼふんっと白い煙となって消えるミノタウロス。これで戦闘終了だ。
「皆様、お怪我はございませんか?」
戦闘が終わり、アリソンがみんなの体調を確認していくが、みんな無傷のようだ。
いくら十階層の階層ボスとはいえ、階層ボスを無傷で討伐できたのは大きいね。
ミノタウロスのいたボス部屋の奥には、小規模なドーム状の部屋のようなところがあり、その地面には幾何学的な魔法陣が光り輝いていた。帰還用の魔法陣だ。
オレたちは魔法陣の中に入らないようにさらに奥へ移動すると、今度は下り坂が現れる。これが第十一階層への道だ。
その下り坂の途中で、オレは足を止めて振り返った。
エロワ、ポール、シャルリーヌ、アリソン、ブリジット、みんながオレを見ている。
「みんな、ミノタウロスの討伐おめでとう。みんないい動きだったよ。特にシャルリーヌの魔法の威力には驚かされた。おかげで短時間でミノタウロスを撃破することもできたし、無傷での勝利だ。いい感じだね」
「当然よ」
そう腕を組んで言うシャルリーヌだが、ちょっと得意げな顔をしているのをオレは見逃さない。
たぶん褒められて嬉しかったのだろう。そういう素直な反応がかわいらしい。スクショ撮りたい。
「『洞窟』は全部で五十階層ある。この調子でどんどん進んでいこう。でも、適度に休憩も必要だ。ここはモンスターも来ない安全地帯らしい。ここで休憩していこう」
オレは率先して洞窟の地面に座ると、みんなも座り始める。いつもなら泥が付くから座らないだろう女の子たちも、みんな思い思いに座って足を延ばしていた。
オレは腰のマジックバッグから水差しとコップを取り出すと、エロワとポールにコップを渡す。
向こうでは、シャルリーヌが同じようにマジックバッグからポットとティーカップを出しているのが見えた。どうやら向こうはお茶を飲むらしい。
まぁ、オレたち辺境組は優雅なお茶よりも水をがぶ飲みしたい気分だ。
「かぁあー! 水がうめえ!」
エロワのコップに水を注いでやると、さっそくエロワがコップを呷る。まるで酒でも飲んでいるみたいでちょっと笑ってしまう。
「おかわりなんだなー」
「ああ」
ポールも一息に水を飲んだみたいで、すぐにおかわりを要求してきた。
オレはポールに水差しを渡すと、マジックバッグから昼食を取り出していく。
腹時計では、今は午後三時くらいかな。
「遅くなったけど、ここで昼食も食べようか」
「おおー! 待ってました!」
「食べたいんだなー」
「そうね。わたくしも準備するわ」
「ありがとうございます、シャルリーヌ様」
「わたくしもうお腹ペコペコですの」
「腹いっぱいは食べないようにな」
そんな注意をしながら、オレたちは昼食のサンドイッチを頬張るのだった。
105
あなたにおすすめの小説
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ?
――――それ、オレなんだわ……。
昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。
そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。
妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。
異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました
まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。
ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。
変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。
その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。
恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる