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110 『洞窟』⑤
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ダンジョン攻略初日に十八階層も攻略できたのは大きい。単純計算では四日も経たずに『洞窟』をクリアできるような超スピードだ。
だが、さすがにそんなにダンジョンは甘くない。
初日に十八階層も攻略できたのは、階層の広さそのものが狭く、出現するモンスターも弱かったからだ。
ダンジョンは奥に潜れば潜るほど広がりを見せ、出現するモンスターも強くなる。
単純に広くなればそれだけ移動に時間がかかるし、モンスターが強くなれば戦闘時間も長引く。
さすがに二日目からは十八階層も攻略できるようなスピードは出せなかった。
まぁ、それでも十階層は踏破したけどね。
だが、三日目。ここからさらに攻略スピードが落ちることになる。
その原因が……シャルリーヌの消費MPの増加だ。
「アイスランス!」
シャルリーヌの少し辛そうな声が洞窟に響き渡り、一メートルはあろうかという巨大な氷の槍がアントの胴体部分を貫いた。
アントは第二十階層から出現するモンスターで、その名の通り、アリの形をしたモンスターだ。
しかし、アリの形をしているがこのアント、なんと後ろ足で立ち上がって四本の腕で剣や槍など武器を使う。
しかも、その甲殻は硬く、物理ダメージへの耐性も高い。厄介なモンスターだ。
さらに嫌なことに、このアントは群れで行動しており、一度に複数体と交戦になることが多いのだ。
そうなると、シャルリーヌの魔法にも頼りたくなるというもの。
事実、シャルリーヌはこの厄介なモンスターを魔法の一撃で倒すことができる。
しかし、ストーンゴーレムの出現といい、シャルリーヌの魔法に頼りたくなる場面が増えすぎている。そのMPは着実に減っているだろう。
そろそろ補給が必要だ。
「おつかれさま。シャルリーヌ、魔力の残りはどのくらい?」
「そうね……。半分より少ないくらいかしら」
思ったよりも残っているようだ。だが、補給が必要なのは変わりがない。
「魔力回復薬を飲んでみようか」
「そうね。そうするわ」
シャルリーヌはオレの言葉にすんなり頷き、腰のマジックバッグから一本の試験管のような瓶を取り出した。試験管の中には、明るい緑色に輝く液体が入っている。あれが魔力回復薬だ。
キュポッとシャルリーヌが試験管のコルクを外すと、まずはクンクンと匂いを嗅いでいた。シャルリーヌも初めて飲むと言っていたから、味やにおいが気になるのだろう。その様子はとてもかわいらしかったが、シャルリーヌはすぐに試験から顔を背け、腕を精いっぱい自分の顔から遠ざける。
臭かったのかな?
「げほっ、けほっ、なによ、これ!?」
「どうしたの?」
「すっごく青臭いの! え? わたくし、これを飲まなきゃいけないの……?」
シャルリーヌは絶望の表情で試験管を眺め、その後、まるで助けを求めるようにオレを見た。
だが、オレとしてはこう答えざるを得ない。
「飲んでくれ、シャルリーヌ。オレたちにはシャルリーヌの力が必要だ。それに、魔力回復薬がマズいことなんて知っていただろ?」
「そんな……。たしかにおいしくないことは知っていたけど、こんなに臭いなんて思わなかったのよ……」
「シャルリーヌ、覚悟を決めてくれ」
「うー、もー! わかったわよ! わたくしが臭くなっても、嫌わないでね?」
「嫌いになったりしないよ」
魔力回復薬ってそんなに臭いんだ……。そこまで言われると、どんな臭いか気になるってくるよ。
「おいたわしや、シャルリーヌ様……」
アリソンが出荷される牛を見るような目でシャルリーヌを見つめ、ブリジットはまるで神に祈るように手を組んでいた。
「ふぐっ!? うー! う~~~~~~~~~~~!」
結局、シャルリーヌは何度か躊躇いながらも、魔力回復薬を飲み干した。その勇気は称えられるべきものだろう。
味もマズかったのか、シャルリーヌはボロボロとその瞳から涙を流して泣いていたし、何度か吐きそうにしていた。それにも耐えたシャルリーヌは立派だと思う。
たとえシャルリーヌの口からちょっと青臭い異臭がしても、オレは彼女のことを嫌いにならなかった。
むしろ、誇らしい気持ちでいっぱいだ。
上級生たちの間では、魔力回復薬を笑って飲めるようになって初めて魔法使いは一人前だという言葉もあるらしい。そこには、どれだけ強力な魔法が使えても、魔力回復薬を飲めなければ持久力がなく、使い物にならないという考えがあるように感じた。
もしくは、魔力回復薬を飲むのを嫌がって、魔法を使うことに消極的になってしまう魔法使いへの戒めなのかもしれない。
オレだって、ゲームでは何度も魔力回復薬のお世話になった。たぶん、この世界でも同じくらいお世話になるだろう。
というか、オレも神聖魔法を使ってMPが減ったら飲まなきゃいけない。
たぶん、今回のダンジョン攻略中にその機会は訪れるだろう。
いったいどんな味なのか不安だが、今のうちに覚悟だけは決めておかないとな……。
だが、さすがにそんなにダンジョンは甘くない。
初日に十八階層も攻略できたのは、階層の広さそのものが狭く、出現するモンスターも弱かったからだ。
ダンジョンは奥に潜れば潜るほど広がりを見せ、出現するモンスターも強くなる。
単純に広くなればそれだけ移動に時間がかかるし、モンスターが強くなれば戦闘時間も長引く。
さすがに二日目からは十八階層も攻略できるようなスピードは出せなかった。
まぁ、それでも十階層は踏破したけどね。
だが、三日目。ここからさらに攻略スピードが落ちることになる。
その原因が……シャルリーヌの消費MPの増加だ。
「アイスランス!」
シャルリーヌの少し辛そうな声が洞窟に響き渡り、一メートルはあろうかという巨大な氷の槍がアントの胴体部分を貫いた。
アントは第二十階層から出現するモンスターで、その名の通り、アリの形をしたモンスターだ。
しかし、アリの形をしているがこのアント、なんと後ろ足で立ち上がって四本の腕で剣や槍など武器を使う。
しかも、その甲殻は硬く、物理ダメージへの耐性も高い。厄介なモンスターだ。
さらに嫌なことに、このアントは群れで行動しており、一度に複数体と交戦になることが多いのだ。
そうなると、シャルリーヌの魔法にも頼りたくなるというもの。
事実、シャルリーヌはこの厄介なモンスターを魔法の一撃で倒すことができる。
しかし、ストーンゴーレムの出現といい、シャルリーヌの魔法に頼りたくなる場面が増えすぎている。そのMPは着実に減っているだろう。
そろそろ補給が必要だ。
「おつかれさま。シャルリーヌ、魔力の残りはどのくらい?」
「そうね……。半分より少ないくらいかしら」
思ったよりも残っているようだ。だが、補給が必要なのは変わりがない。
「魔力回復薬を飲んでみようか」
「そうね。そうするわ」
シャルリーヌはオレの言葉にすんなり頷き、腰のマジックバッグから一本の試験管のような瓶を取り出した。試験管の中には、明るい緑色に輝く液体が入っている。あれが魔力回復薬だ。
キュポッとシャルリーヌが試験管のコルクを外すと、まずはクンクンと匂いを嗅いでいた。シャルリーヌも初めて飲むと言っていたから、味やにおいが気になるのだろう。その様子はとてもかわいらしかったが、シャルリーヌはすぐに試験から顔を背け、腕を精いっぱい自分の顔から遠ざける。
臭かったのかな?
「げほっ、けほっ、なによ、これ!?」
「どうしたの?」
「すっごく青臭いの! え? わたくし、これを飲まなきゃいけないの……?」
シャルリーヌは絶望の表情で試験管を眺め、その後、まるで助けを求めるようにオレを見た。
だが、オレとしてはこう答えざるを得ない。
「飲んでくれ、シャルリーヌ。オレたちにはシャルリーヌの力が必要だ。それに、魔力回復薬がマズいことなんて知っていただろ?」
「そんな……。たしかにおいしくないことは知っていたけど、こんなに臭いなんて思わなかったのよ……」
「シャルリーヌ、覚悟を決めてくれ」
「うー、もー! わかったわよ! わたくしが臭くなっても、嫌わないでね?」
「嫌いになったりしないよ」
魔力回復薬ってそんなに臭いんだ……。そこまで言われると、どんな臭いか気になるってくるよ。
「おいたわしや、シャルリーヌ様……」
アリソンが出荷される牛を見るような目でシャルリーヌを見つめ、ブリジットはまるで神に祈るように手を組んでいた。
「ふぐっ!? うー! う~~~~~~~~~~~!」
結局、シャルリーヌは何度か躊躇いながらも、魔力回復薬を飲み干した。その勇気は称えられるべきものだろう。
味もマズかったのか、シャルリーヌはボロボロとその瞳から涙を流して泣いていたし、何度か吐きそうにしていた。それにも耐えたシャルリーヌは立派だと思う。
たとえシャルリーヌの口からちょっと青臭い異臭がしても、オレは彼女のことを嫌いにならなかった。
むしろ、誇らしい気持ちでいっぱいだ。
上級生たちの間では、魔力回復薬を笑って飲めるようになって初めて魔法使いは一人前だという言葉もあるらしい。そこには、どれだけ強力な魔法が使えても、魔力回復薬を飲めなければ持久力がなく、使い物にならないという考えがあるように感じた。
もしくは、魔力回復薬を飲むのを嫌がって、魔法を使うことに消極的になってしまう魔法使いへの戒めなのかもしれない。
オレだって、ゲームでは何度も魔力回復薬のお世話になった。たぶん、この世界でも同じくらいお世話になるだろう。
というか、オレも神聖魔法を使ってMPが減ったら飲まなきゃいけない。
たぶん、今回のダンジョン攻略中にその機会は訪れるだろう。
いったいどんな味なのか不安だが、今のうちに覚悟だけは決めておかないとな……。
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