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109 『洞窟』④
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「行き止まり、ですね」
アリソンの無感情な声が洞窟内に小さく響いた。
目の前には、アリソンの言う通り、ここで掘り進めるのを諦めてしまったかのような洞窟の壁があった。
オレは、ゲームをやり込み過ぎてすべてのダンジョンの道順を覚えている。
だから、本来ならこんな風に行き止まりの道に当たることはない。
だが、初めて訪れたダンジョンで、一度も迷うことなく攻略するというのは、極めておかしい。
よって、敢えてハズレの道を選んだのだ。
「あら? 何かあるわよ!」
シャルリーヌが何か見つけたようだ。近寄って見ると、それは粗末な木箱のようだった。
「これって、宝箱か?」
「初めて見たんだなー」
ダンジョンの中では、時折こうやって宝箱が出現することがある。その出現法則は完全ランダムで、狙ったアイテムをピンポイントで手に入れることは難しい。
オレはダンジョンの道順をすべて覚えているが、ここに宝箱を出現することは知らなかったし、宝箱の中身もわからない。
「何が入っているのでしょうか?」
「早く開けて見ましょ!」
ブリジットとシャルリーヌの声も心なしか弾んでいるような気がした。
攻略が始まってから初めての宝箱だからね。無理もない。オレだって少しドキドキしている。
「じゃあ、開けるぞ……?」
みんなの注目を浴びながら、オレは宝箱にそっと手を伸ばした。
このダンジョンにはミミックがいないから、警戒しなくてもいいのは楽だね。
「ほお?」
カパッと宝箱を開けると、中には一つの指輪が転がっていた。
この色や形……間違いない、オニキスリングだな。
「指輪かよ?」
「ああ」
エロワに一つ頷くと、オレは指輪を摘まんで立ち上がる。指輪を取り出すと、宝箱はまるでモンスターを倒した時のようにぼふんっと白い煙となって消えた。
「シャルリーヌ、いいか?」
「え!?」
指輪を持ってシャルリーヌに近づくと、なぜかシャルリーヌが慌て始めた。
「え!? えっ!? ここで!?」
どうしたんだろう?
「この指輪はシャルリーヌが似合うと思うんだ」
「それは、その……。ありがとぅ……」
「さあ、手を出して」
なぜか迷うそぶりを見せるシャルリーヌ。その顔はちょっと赤くなって恥ずかしそうだ。
なんで?
「シャルリーヌ様、女は度胸です」
「そうですよ、シャルリーヌ様」
アリソンとブリジットに励まされ、シャルリーヌがそっと左手をオレに差し出した。
オレはシャルリーヌの人差し指に指輪をスポッと填める。
「よく似合っているよ、シャルリーヌ。シャルリーヌの白い肌とのコントラストが素敵だ」
「え……?」
指輪を填めたのに、シャルリーヌはなぜかきょとんとした顔をしているし、アリソンは頭が痛いとばかりに額に手を当て、ブリジットは笑い出すのを我慢しているような顔をしていた。
なんで?
「このオニキスの指輪は、魔法の攻撃力を少しだけ高めてくれるんだ。シャルリーヌにピッタリだよ」
「ああ……そういう……。もー! アベルなんて嫌いよ!」
「なんで!?」
なんで指輪を贈ったのに嫌われるんだよ!?
あれか? 指輪が気に入らなかったのか?
「あの、シャルリーヌ? 気に入らないなら返してくれ。シャルリーヌが装備しないなら、アリソンが装備した方がいい」
「わたくしですか!?」
そりゃそうだろう。アリソンだって神聖魔法が使えるのだ。神聖魔法には、種類は少ないが攻撃魔法もある。シャルリーヌが装備しないのなら、アリソンが装備した方がいい。
「嫌よ! なんでそんなことを言うの!?」
「え? でも、気に入らないんだろ? 無理に装備しなくてもいいから……」
「もー! 絶対返さないから!」
「えー……」
なんでこんなことになったんだ?
オレは助けるようにエロワとポールの方を振り向くと、二人ともやれやれと言わんばかりに溜息を吐いていた。
解せぬ。
◇
そんなトラブル? はありつつも、オレたちはどんどんダンジョンを攻略していく。そして、第十八階層を踏破したところで、今日のところは攻略を一時停止することにした。
つまり、寝る時間である。
思えば、ダンジョンの中で寝るのはこれが初めてのことだな。ちょっとドキドキする。
「本当に安全なのかしら?」
「ここは第十九階層に繋がる下り坂だからね。上級生の話を信じるなら、ここにはモンスターは出ないらしいよ?」
絨毯を敷いて寝る準備をするシャルリーヌにそう答えると、オレもマジックバッグから毛布を三枚取り出した。
シャルリーヌたちは即席の目隠しのようなものを立てているが、オレたち男子はそのまま毛布にくるまって寝るつもりだ。
『洞窟』の中の空気はひんやりと冷たく、動いていれば問題ないが、そのまま寝ると風邪を引くかもしれないからね。
その後、目隠しの奥からちゃぽちゃぽと水の音がしたので、女の子たちは体を拭いているのかもしれない。
「オレたちも体を拭くか?」
「お、おう? おう……」
目隠しを食い入るように見つめるエロワに尋ねると、彼は自分の股間に伸びかけていた手を慌てて引いていた。
さすがにそれは勘弁願いたいなぁ。
アリソンの無感情な声が洞窟内に小さく響いた。
目の前には、アリソンの言う通り、ここで掘り進めるのを諦めてしまったかのような洞窟の壁があった。
オレは、ゲームをやり込み過ぎてすべてのダンジョンの道順を覚えている。
だから、本来ならこんな風に行き止まりの道に当たることはない。
だが、初めて訪れたダンジョンで、一度も迷うことなく攻略するというのは、極めておかしい。
よって、敢えてハズレの道を選んだのだ。
「あら? 何かあるわよ!」
シャルリーヌが何か見つけたようだ。近寄って見ると、それは粗末な木箱のようだった。
「これって、宝箱か?」
「初めて見たんだなー」
ダンジョンの中では、時折こうやって宝箱が出現することがある。その出現法則は完全ランダムで、狙ったアイテムをピンポイントで手に入れることは難しい。
オレはダンジョンの道順をすべて覚えているが、ここに宝箱を出現することは知らなかったし、宝箱の中身もわからない。
「何が入っているのでしょうか?」
「早く開けて見ましょ!」
ブリジットとシャルリーヌの声も心なしか弾んでいるような気がした。
攻略が始まってから初めての宝箱だからね。無理もない。オレだって少しドキドキしている。
「じゃあ、開けるぞ……?」
みんなの注目を浴びながら、オレは宝箱にそっと手を伸ばした。
このダンジョンにはミミックがいないから、警戒しなくてもいいのは楽だね。
「ほお?」
カパッと宝箱を開けると、中には一つの指輪が転がっていた。
この色や形……間違いない、オニキスリングだな。
「指輪かよ?」
「ああ」
エロワに一つ頷くと、オレは指輪を摘まんで立ち上がる。指輪を取り出すと、宝箱はまるでモンスターを倒した時のようにぼふんっと白い煙となって消えた。
「シャルリーヌ、いいか?」
「え!?」
指輪を持ってシャルリーヌに近づくと、なぜかシャルリーヌが慌て始めた。
「え!? えっ!? ここで!?」
どうしたんだろう?
「この指輪はシャルリーヌが似合うと思うんだ」
「それは、その……。ありがとぅ……」
「さあ、手を出して」
なぜか迷うそぶりを見せるシャルリーヌ。その顔はちょっと赤くなって恥ずかしそうだ。
なんで?
「シャルリーヌ様、女は度胸です」
「そうですよ、シャルリーヌ様」
アリソンとブリジットに励まされ、シャルリーヌがそっと左手をオレに差し出した。
オレはシャルリーヌの人差し指に指輪をスポッと填める。
「よく似合っているよ、シャルリーヌ。シャルリーヌの白い肌とのコントラストが素敵だ」
「え……?」
指輪を填めたのに、シャルリーヌはなぜかきょとんとした顔をしているし、アリソンは頭が痛いとばかりに額に手を当て、ブリジットは笑い出すのを我慢しているような顔をしていた。
なんで?
「このオニキスの指輪は、魔法の攻撃力を少しだけ高めてくれるんだ。シャルリーヌにピッタリだよ」
「ああ……そういう……。もー! アベルなんて嫌いよ!」
「なんで!?」
なんで指輪を贈ったのに嫌われるんだよ!?
あれか? 指輪が気に入らなかったのか?
「あの、シャルリーヌ? 気に入らないなら返してくれ。シャルリーヌが装備しないなら、アリソンが装備した方がいい」
「わたくしですか!?」
そりゃそうだろう。アリソンだって神聖魔法が使えるのだ。神聖魔法には、種類は少ないが攻撃魔法もある。シャルリーヌが装備しないのなら、アリソンが装備した方がいい。
「嫌よ! なんでそんなことを言うの!?」
「え? でも、気に入らないんだろ? 無理に装備しなくてもいいから……」
「もー! 絶対返さないから!」
「えー……」
なんでこんなことになったんだ?
オレは助けるようにエロワとポールの方を振り向くと、二人ともやれやれと言わんばかりに溜息を吐いていた。
解せぬ。
◇
そんなトラブル? はありつつも、オレたちはどんどんダンジョンを攻略していく。そして、第十八階層を踏破したところで、今日のところは攻略を一時停止することにした。
つまり、寝る時間である。
思えば、ダンジョンの中で寝るのはこれが初めてのことだな。ちょっとドキドキする。
「本当に安全なのかしら?」
「ここは第十九階層に繋がる下り坂だからね。上級生の話を信じるなら、ここにはモンスターは出ないらしいよ?」
絨毯を敷いて寝る準備をするシャルリーヌにそう答えると、オレもマジックバッグから毛布を三枚取り出した。
シャルリーヌたちは即席の目隠しのようなものを立てているが、オレたち男子はそのまま毛布にくるまって寝るつもりだ。
『洞窟』の中の空気はひんやりと冷たく、動いていれば問題ないが、そのまま寝ると風邪を引くかもしれないからね。
その後、目隠しの奥からちゃぽちゃぽと水の音がしたので、女の子たちは体を拭いているのかもしれない。
「オレたちも体を拭くか?」
「お、おう? おう……」
目隠しを食い入るように見つめるエロワに尋ねると、彼は自分の股間に伸びかけていた手を慌てて引いていた。
さすがにそれは勘弁願いたいなぁ。
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