聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです

石河 翠

文字の大きさ
6 / 7

(6)

しおりを挟む
 ピヨリーヌはなんの問題もないかのように、ヘビをペンギン?のひなの口にずずいっと放り込んだ。

「嘘でしょ!」

(そんなミミズみたいにヘビって食べられちゃうものなの?)

 するするごっくん。ぺろりとたいらげてみせたペンギン?のひなは、ピヨリーヌがお世話をしていることから考えても、あの卵から生まれた聖獣なのだろう。

(竜とか、不死鳥とか、そういう生き物じゃないものが生まれることもあるんだなあ)

 神話や伝説として伝わっていないのは、やはりペンギン?だとなんとなく締まらないからなのだろうか。ぼんやりと考えるエリカに、罵声が浴びせられる。

「お前のせいだ! 急に領主命令で内部調査が入って首になるなんて。卵を取り上げて何が悪い。聖獣というのはな、お前のような地味な女ではなく、わたしのような立派な男が育てるべき生き物なのだ!」

 唾を飛ばしながら怒りを露わにしているのは、聖獣保護協会の窓口の男だった。勝手な言葉に、エリカは男をにらみつける。だが男の手には、ナイフが握られていた。

「エリカ!」

 遠くから団長の声が聞こえる。

「りょ、領主さま? うわあああ、わたしはおしまいだ!」

(団長が領主さま? そんなことってある?)

 だが、今はその質問をするべきときではない。迫りくる刃から少しでも身を守るべく、小さくしゃがむ。けれど恐れていた衝撃が来ることはなかった。代わりに聞こえたのは野太い絶叫。

「ぐえええええええ」

 男がピヨリーヌに襲われていた。すごい勢いで蹴りあげられ、くちばしで目を突かれている。

(さすがピヨリーヌさん。的確に急所を狙っていくスタイルね!)

 いくらどつき回されているとはいえ、日頃は彼女なりに手加減をしてくれているのだとエリカにも理解できた。

「え、聖獣さん。あなたは何を?」

 もきゅもきゅもきゅ……ごっくん。ヘビを飲み込むのだってどう考えてもおかしかったのに、聖獣は聖獣保護協会の男の頭を飲み込んでしまった。

 さすがに首より下は口の中に入らないようで、首をあっちに振ったりこっちに振ったり。散々試行錯誤したあとで、結局でろりと吐き出した。

 ぺぺぺぺぺ。

 さらによだれまみれのカツラがすごい勢いで吐き出される。べとべとの男は、燃え尽きた目で遠くを見ていた。どうやら、聖獣の胃の中で見てはいけないこの世の真理を覗いてしまったらしい。

「大丈夫か!」
「あ、団長。大丈夫です。ピヨリーヌさんと聖獣さんが守ってくれまして」

 そこでぎゅっと抱きしめられた。団長の手が震えている。

「頼む。こんな無茶はもう二度としないでくれ。俺は確かにずっと一緒に暮らしてきたピヨリーヌさんよりも信用できないかもしれない。君が大好きな聖獣にも劣るかもしれない。口下手で、好きな相手にプレゼントひとつ贈ることができずに屋敷の部屋に貯め続けてしまうような気持ち悪い男だ。それでもどうか、見捨てないでくれ。俺にできることは何でもするから。どうかこれからもずっと隣にいてほしい。俺に君のことを守らせてくれないか」

 驚くような告白を耳にしたエリカは、とりあえずあのスケスケいやんなランジェリーについて詳しく聞いてみようと心に誓った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。

カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」 なんで?! 家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。 自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。 黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。 しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。 10人に1人いるかないかの貴重な女性。 小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。 それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。 独特な美醜。 やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。 じれったい恋物語。 登場人物、割と少なめ(作者比)

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~

星森
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。 王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。 そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。 これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。 ⚠️本作はAIとの共同製作です。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

処理中です...