聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです

石河 翠

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 うなだれたまま連行されていく男を見送り、エリカはピヨリーヌや聖獣、そして騎士団長に改めて頭を下げた。

「それにしても、まさか聖獣さんまで私を守ってくれるなんて」
「聖獣は、自身の家族を命懸けで守ると聞く」
「つまり、私は聖獣さんのお母さんとして認識されているってこと? あああああ、いだい、いだい、ごめん、冗談だってば。皮膚をむしらないで。えぐれる、えぐれるから!」

 ピヨリーヌに追いかけ回されたエリカは、早々に白旗を上げた。わかればいいのよと言いたげに、ふんすふんすと足音高く、最強の雌鶏は可愛い我が子の元に歩み寄る。

「ううう、ピヨリーヌさんひどい。私、めっちゃお世話しているのに」

 飼い主としてお世話をするのは当然とはいえ、塩対応が続けばやっぱり心が折れる。しょんぼりするエリカのもとに、とてとてと巨大なペンギン?がやってきた。

 謎の聖獣が、なでろと言わんばかりにエリカの隣でふんぞり返る。膝を抱えているエリカよりも大きい。ふわふわの幼鳥なのに、なんともいえない威圧感だ。

「ごめんね、なでたいところだけど、やっぱり親御さんの許可がいるかなって……いっだあああ。え、なに、可愛いうちの子を早くなでろってこと? わかった、わかったから!」

 なでろという要求をやんわり断った結果、しょんぼりとうなだれた聖獣。その瞬間、エリカはピヨリーヌから怒涛の叱責を受けることになった。

「え、触らせてくれるの? 過保護なんだか、そうでもないんだか、ピヨリーヌさんの距離感がわかんないよ」

 一連の流れを見ていた騎士団長が口を挟む。

「ピヨリーヌ殿にとって君は、母親なのでは?」
「えー、下僕の間違いじゃないですか」
「だが以前に食堂で、道端で死にかけていたピヨリーヌ殿を君が拾ったと聞いた。それならば、君は間違いなく育ての母だ。つまりピヨリーヌ殿の子どもである聖獣殿は、君の孫になるのではないだろうか」

 その通りだと言わんばかりにピヨリーヌが、こっこと相槌をうった。

「そ、そんな、私、20代でもうおばあちゃんなの!」
「心配はそこなのか」
「これはうっかりすると、数年後にはひいおばあちゃん……。そんなバカな……」
「なるほど、俺も早速おじいちゃんか。最高だな。彼らに負けないように俺たちも家族を増やさねばな」

 その後、この地はふわふわもふもふで可愛らしい聖獣が暮らすことで一躍有名となる。ひと懐っこい聖獣を一目見ようと、多くの人々を迎え入れ発展していくことになった。

 この地の領主の館には、コカトリスによく似た、ヘビを踏みながら羽を広げる可愛らしい雌鶏が紋章として飾られていたという。
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