残念なことに我が家の女性陣は、男の趣味が大層悪いようなのです

石河 翠

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 私の家は女ばかり生まれる女系一家だ。子どもは代々ひとり娘、結婚相手は必ず入り婿。血統を重んじる高位貴族の家にしては綱渡りのように思われるが、なんだかんだうまくやってきたらしい。王族の血も入っているため、それなりに貴族社会でも顔が利くのが自慢だ。

 女ばかり生まれる家ということで、普通なら「女腹の家」とでも言われそうなものだが、我が家には別のあだ名があった。「女当主は男を見る目がない」というものだ。「女腹の家」というのも十分悪口なのだが、それよりも酷い呼び名をつけられているのにはちょっとした理由がある。歴代の女当主が結婚する相手は、相当な問題児ばかりなのだった。

 おばあさまは、結婚初夜にておじいさまから「お前を愛することはない」と宣言されたのだとか。入り婿の分際で何をほざいているのだろう。その上何をどうやって言いくるめたのか、庭に自分専用の離れまで作らせたらしい。

 まさかそこで愛人としっぽりやる気だったのかと思いきや、特定の誰かに想いを寄せている様子はなかったそうだ。まったくもって意味が分からない。政略結婚を嫌う潔癖症だったのだろうか。結局はよくある物語のように結婚生活を送るにつれておじいさまとおばあさまの距離は縮まり、今となっては社交界でも評判の仲睦まじい夫婦になっている。

 ……「お前を愛することはない」からの「おしどり夫婦」。終わりよければすべて良しとは、言いたくない。何が悲しくて、結婚早々馬鹿なことを宣言する男と愛を育まねばならんのか。そして当主をお母さまに譲ったおばあさまは、例の離れにおじいさまと移り住んでしまった。豪胆すぎる。

 ちなみにお母さまはというと、これまたやはり問題児のお父さまと結婚している。何せお父さまは結婚前から女にだらしなく、それは結婚して娘である私が生まれてからも変わりなかったのだ。お母さまよ、職場恋愛だったはずなのに、なぜあなたはあんな屑を結婚相手に選んだのですか。

 しかもお父さまは、可愛らしい少女から妖艶な美魔女たちにまで節操なく声をかけまくる。女なら誰でもいいのか。その癖、お父さまはお母さまに見捨てられるのが怖いらしい。たびたび家に帰ってきては大騒ぎしている。

「違う、誤解なんだ、俺が本当に愛しているのは君だけだ!」
「ああああああ、可愛いひとり娘からゴミを見るような目で見られている! いやだあああ、死ぬ、心が折れるううううう!」
「あああああ、妻よ。どうしてこちらを見てくれないんだ。君になら、ゴミを見るような目で見られたって嬉sぐごげえええええ」

 ……帰ってきた瞬間から、うるさすぎる。まるで何かに踏みつけられた蛙のような鳴き声が聞こえた後に、屋敷の中が静かになった。お母さまが、無理矢理静かにさせたようだ。なんといっても、うちのお母さまは国内でも腕利きの武闘派夫人なのだ。

 まあこんな感じで、我が家で見ることのできる夫婦というのは一般的とは言い難いものばかり。曾祖父、高祖父の話を引っ張り出せば、屑男の見本市が開けるだろう。

 そんな私の唯一の癒しが、婚約者であるトーマスさまだ。

 四つも年下で可愛らしいトーマスさまは、男性として頼りがいがあるとは言えないけれど、人間にとって一番大事な誠実さを持ち備えている。少なくともお母さまの足にすがりついて、泣きわめく情けないお父さまや、過去のやらかしをなかったことにして平気な顔で離れに住んでいるおじいさまとは大違いだ。

 男というのはお父さまやおじいさまのような屑しかいないらしいと絶望していた私にとって、心優しいトーマスさまは何より大切な希望なのだ。
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