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「アンジェラ、貴様、僕を嵌めたのか!」
「嵌めただなんて、人聞きの悪い。ですが、国王陛下からご説明があったにもかかわらず、いつまでも婚約解消に納得していただけなかったのですから、仕方がありませんわ」
結局例のお茶会が終わっても、王太子との婚約は解消できなかった。どれだけ説明されたところで、アンジェラたちと異なる常識の世界に生きている人間には、理解できなかったのだ。結局、王太子とかのご令嬢は蟄居が命じられた。爵位だけ与えてどこかの寒村に封じなかったのは、周囲への迷惑を考慮した結果だ。
あのような周囲に毒ばかりを撒き続ける人間を田舎に放逐するのは、向こうの土地の人間に対して喧嘩を売るようなものだ。流刑地扱いされれば、彼らも気分がよくないだろう。それならば、平民扱いで閉じ込めておくのが一番いい。きっと彼らは、自分たちがどれだけ恵まれているのか最期まで理解できないのだろうけれど。
もはや「断ち物」は終わった。そう不意に気が付いたのは、アンジェラの口内に大好きなお菓子の味が広がったからだ。カルロと一緒に食べた、彼の故郷の甘味。果物の風味豊かな、たっぷりのジャムを挟んだあのクッキーの味わい。あまりの懐かしさにめまいがした。
アンジェラは少しだけ勘違いをしていた。「断ち物」は、アンジェラから「甘味」を食べることをやめさせるものではなかった。神はもっと端的にアンジェラから対価を受け取っていた。あの日以来、アンジェラは甘味を認知することができなかったのである。
それが、いきなり思い出されたのだ。これは、神からの許しが出たのだと思ってよいのではないだろうか。アンジェラの家族は、彼女が辺境伯領の三男坊に好意を寄せていることを知っている。その男が、王都で商会を営んでいることも、王太子から不当な圧力をかけられていたことも。何せ、彼女は少しずつ彼に近づいてここぞという時に手を差し伸べたのだから。
カルロという名前しか知らなかったアンジェラだったが、本人を探すのはそれほど難しくはなかった。何せ無理矢理誓約を結べるほどに、魔力の質と量が釣り合っているのだ。それだけの魔力を持っているとなれば、ある程度の高位貴族の血筋に間違いない。その上、王太子が田舎としてあれだけ下に見ているということは、国防の要かあるいは国家の食糧庫が領地なのではないかと想像がついた。それだけの重要拠点を田舎と言い切る王太子のうかつさには怖気立つというものだ。
「おじいさま、本日のお出かけですが、ご一緒してもよろしいですか」
「うむ。天使のおねだりだ。儂が断れようはずもない。だが、相手の男がお前に相応しいか、よく見定めねばならん」
「おじいさま、今まで手を組んでお仕事をなさっていたではありませんか。今さらですわ」
「それはそれ、これはこれだ」
「もう、おじいさまったら」
きっとカルロは驚くだろう。十年間も恋焦がれた自分と違って、カルロはアンジェラと別れてから数ヶ月程度しか経っていないはずだ。その上、彼にとっては自分は保護すべき子どもであって、女として見られたことなどいなかった。けれど、手に入れたいものがあるのならば、立ち上がるしかないことをアンジェラは既に知っている。恋する女はどこまでも強くなれるのだ。
「さあ、カルロ。待っていてくださいませ。私、あなたのことを口説き落としてみせますから!」
ようやっと手に入れられる甘い甘い、カルロとの時間。そして久方ぶりのあの懐かしい甘味が食べられるに違いないことを期待して、うっとりとアンジェラは瞳を閉じた。
「嵌めただなんて、人聞きの悪い。ですが、国王陛下からご説明があったにもかかわらず、いつまでも婚約解消に納得していただけなかったのですから、仕方がありませんわ」
結局例のお茶会が終わっても、王太子との婚約は解消できなかった。どれだけ説明されたところで、アンジェラたちと異なる常識の世界に生きている人間には、理解できなかったのだ。結局、王太子とかのご令嬢は蟄居が命じられた。爵位だけ与えてどこかの寒村に封じなかったのは、周囲への迷惑を考慮した結果だ。
あのような周囲に毒ばかりを撒き続ける人間を田舎に放逐するのは、向こうの土地の人間に対して喧嘩を売るようなものだ。流刑地扱いされれば、彼らも気分がよくないだろう。それならば、平民扱いで閉じ込めておくのが一番いい。きっと彼らは、自分たちがどれだけ恵まれているのか最期まで理解できないのだろうけれど。
もはや「断ち物」は終わった。そう不意に気が付いたのは、アンジェラの口内に大好きなお菓子の味が広がったからだ。カルロと一緒に食べた、彼の故郷の甘味。果物の風味豊かな、たっぷりのジャムを挟んだあのクッキーの味わい。あまりの懐かしさにめまいがした。
アンジェラは少しだけ勘違いをしていた。「断ち物」は、アンジェラから「甘味」を食べることをやめさせるものではなかった。神はもっと端的にアンジェラから対価を受け取っていた。あの日以来、アンジェラは甘味を認知することができなかったのである。
それが、いきなり思い出されたのだ。これは、神からの許しが出たのだと思ってよいのではないだろうか。アンジェラの家族は、彼女が辺境伯領の三男坊に好意を寄せていることを知っている。その男が、王都で商会を営んでいることも、王太子から不当な圧力をかけられていたことも。何せ、彼女は少しずつ彼に近づいてここぞという時に手を差し伸べたのだから。
カルロという名前しか知らなかったアンジェラだったが、本人を探すのはそれほど難しくはなかった。何せ無理矢理誓約を結べるほどに、魔力の質と量が釣り合っているのだ。それだけの魔力を持っているとなれば、ある程度の高位貴族の血筋に間違いない。その上、王太子が田舎としてあれだけ下に見ているということは、国防の要かあるいは国家の食糧庫が領地なのではないかと想像がついた。それだけの重要拠点を田舎と言い切る王太子のうかつさには怖気立つというものだ。
「おじいさま、本日のお出かけですが、ご一緒してもよろしいですか」
「うむ。天使のおねだりだ。儂が断れようはずもない。だが、相手の男がお前に相応しいか、よく見定めねばならん」
「おじいさま、今まで手を組んでお仕事をなさっていたではありませんか。今さらですわ」
「それはそれ、これはこれだ」
「もう、おじいさまったら」
きっとカルロは驚くだろう。十年間も恋焦がれた自分と違って、カルロはアンジェラと別れてから数ヶ月程度しか経っていないはずだ。その上、彼にとっては自分は保護すべき子どもであって、女として見られたことなどいなかった。けれど、手に入れたいものがあるのならば、立ち上がるしかないことをアンジェラは既に知っている。恋する女はどこまでも強くなれるのだ。
「さあ、カルロ。待っていてくださいませ。私、あなたのことを口説き落としてみせますから!」
ようやっと手に入れられる甘い甘い、カルロとの時間。そして久方ぶりのあの懐かしい甘味が食べられるに違いないことを期待して、うっとりとアンジェラは瞳を閉じた。
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