強面騎士団長と押しの強い人魚姫~あなたに助けていただいた人魚です。成人したので、約束通り美味しく食べてと美少女が騎士団にやってきた~

石河 翠

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 波打ち際を歩いていると、マルグリットのそばに波がよってくる。まるで、「ねえ、ねえ、マルグリット」と声をかけているかのよう。

「面白い。海にも意思があるのだろうか」
「意思があると言いますか、お父さまが三叉槍さんさそうをお持ちですので、波を操ることはできるのかもしれません」

 マルグリットは、やはり高貴な生まれであるようだ。さらりと出された重要情報に若干ハロルドは顔をひきつらせる。

「なるほど。ということは先ほどの波はやはりお父上のご意志が反映されているのだろうか」
「さあ、どうでしょう? 特に何か念のようなものは感じませんでしたが」
「ご尊父さま、マルグリット嬢のことですが、しばらくこちらに滞在したのちに必ず海にお送りしますので……」

 ざぶーん!

 頭からいきなりの大波をかぶったハロルド。ぽたぽたと海水をしたたらせながら、彼は疑問を口にする。

「……まさか、食ったほうがいいと……?」

 どっぱーん!!!

 さらなる大波をかぶり、ハロルドは頭を抱えた。親心は複雑すぎる。というか、この親御さんはどちらの意味で「食う」と思っているのか? そもそも、大前提であるそこがわからなくなってきた。

「まあ大変。騎士さま、お風邪を召してしまいます。人間というのは、海水にまみれて過ごしてはならないのでしょう?」
「まあそれほど気にすることでもない。歩いていれば乾く……とはいかないが、服を脱いで岩の上にしばらく置いておけば、水気はとれるし、体が冷えることもないはずだ」

 ハロルドがそう返し、上着を脱ぐ。

「まあ、騎士さま。さすがの筋肉ですね。人魚の男性陣にも負けぬ肉体美です」
「それは、どうも?」

 首を傾げながらハロルドが礼を言ったそのときだ。

 バッシャーン!!!

 今までで一番大きな波が、ハロルドを襲った。足をとられ転倒する。慌てて立ち上がろうとするが、戻り流れに飲み込まれそのまま沖へと流されていく。

「騎士さま!」

 大丈夫だ。そう言って安心させたいのに、体が言うことをきかない。しかも、ハロルドの周囲に黒い影が複数集まってくるのが見えた。

 こんな浅瀬にサメの群れだと?

 動揺したハロルドが、迫り来るサメから逃れようと慌てて手足を動かす。マルグリットの前で死ぬようなことがあってはいけない。そんなことがあれば、マルグリットが傷ついてしまう。

 どごっ!!!

 背後で、耳慣れない重く鈍い音がした。サメ同士の仲間割れか?

 必死に泳ぐハロルドが振り返って見たものは、海の中を泳ぐサメを真顔でどつき回すマルグリットの姿だった。
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