傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠

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 元婚約者は、海の男たちに揉まれながら今日もしっかりしごかれている。情けないへっぴり腰姿は相変わらずだが、ここしばらくの間にこんがり焼けていて、都落ちした冴えない男から、漁師見習いには十分ランクアップしたようだ。涙目になりながら魚のさばき方を習っている様子は、はたから見ていて結構面白い。

 その後海辺の町に彼を追いかけてきた奥方も、世話焼きな女性たちに根性を叩き直されているらしい。とはいえ、他人を蹴落とすくらいガッツと根性のある彼女はなんだかんだでこの町に馴染んできているようだ。かかあ天下になる日もそう遠くはなさそうである。

 心優しくて働き者な教会騎士と喜怒哀楽のはっきりとした少しばかり口の悪いシスターは、海辺の町きってのおしどり夫婦として有名になり、町の小さな教会で結婚の誓いを行えば夫婦円満になると評判になったと言われている。
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