玉砕するつもりで、憧れの公爵令息さまに告白したところ、承諾どころかそのまま求婚されてしまいました。

石河 翠

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 すっきりしたお部屋は気持ちの良いものです。寮母さんのご厚意により、私たちは部屋の中でお茶をする許可までいただいてしまいました。

 これはすごいことなのですよ。いくらギディオンさまとはいえ、普段であれば堂々と女子寮に滞在なんて許されないはずなのです。しかも当初の目標であった、「部屋の片付け」はクリアしていますし。

 ……つまり特別なごほうびが出るくらい、私の部屋の片付けが最重要課題として認識されていたということでしょうか。ちょっぴり悲しいですね。

「せっかく部屋が綺麗になったのに、不満そうだな」
「抜き打ち検査の検査官がギディオンさまになったことといい、掃除が完了したことでごほうびが出たことといい、皆さん、よっぽど私の部屋をどうにかしたかったのだなと実感しまして。物置き系の雑然さだったので、よそのかたには迷惑をかけていないつもりだったんですけれど。やはり学生たるもの、ギディオンさまのようにすっきりと整理整頓された部屋にするべきなのでしょうね」
「今回の件については僕が無理を……いや、この話はまた次回に。一応訂正しておくが、僕の部屋はすっきりしているというわけではない」
「そ、そんな、まさか! ギディオンさまの部屋が私の部屋よりも汚いだなんて、嘘ですよね!」

 もしそんなことがありうるのなら、これから先、何を信じて生きていけばいいのかわかりません。

「いや、そこまで思い詰めなくても」
「いいえ、私の善悪の基準がぶれぶれになってしまいます!」
「まったく、君は面白いな」

 こぼれるような笑みを浮かべたギディオンさまこそ、至高です。あなたさまが笑ってくださるなら、私は一生道化で構いません! ええ、ギディオンさまのお部屋が物置き系ではない生ゴミ系の汚部屋だったとしてもこの愛は変わりませんとも。

「ならば、安心してほしい。この部屋よりも散らかっているということはない」
「ですが、先ほど『すっきりしているというわけではない』と」
「むしろ、部屋の中はがらんどうなのだ」
「は?」
「最低限必要なもの以外、部屋の中には何もない」

 それはつまり、新入生が寮に引っ越してきたばかりのあの状態でずっと過ごしているということでしょうか。

「最低限というのは?」
「教科書の内容も頭の中に入っているので本来なら手元になくても平気なのだが、学生の良識として一応残してある」
「そういうレベルですか!」

 さすがは天才と名高いギディオンさま。発言が常人と異なりますね。浮世離れしたところも素敵です。でもどうして、そんなお部屋にお住まいなのでしょう?
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