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5.めっきとガラス玉の願い
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「願いを叶える対価として、アッシュから受け取ったものは一体何だったのですか?」
客人がいなくなった部屋の中で、リリィが白狼に尋ねる。けれど白狼は何とも渋い顔をしながら、身体を大きく震わせた。どうにもはぐらかされそうな予感がして、リリィはそっと白狼の前足を握りしめた。
「聖獣さま?」
「恋心だ」
「……恋心ですか?」
「安い対価だと思ったか?」
一瞬黙り込んだのを対価を安く見積もったと思ったらしい白狼が、じっとリリィを見上げてくる。白狼がリリィを見つめる瞳は、とても優しい。大切に思ってくれていることがよくわかる。そしてこのような真摯な瞳をリリィは知っている。アッシュがリリィの異母妹であるエリンジウムを見ている時の眼差しだ。
「いいえ。ただそのような形のない物を、対価として支払うことができるのがどうしても不思議で」
「本来ならば、このような物を喜んで受け取るのは黒の魔女なのだがな。わたしは不得意だが、そなたの異母妹が黒の魔女に差し出した対価があったゆえ、合わせることができた」
エリンジウムは、何を差し出したのですか。そう聞こうとして、リリィはその疑問を飲み込んだ。聞いたところで、どうなると言うのだ。先ほどアッシュに詳細を聞かなかった自分には、聞く権利はない。
白狼は耳をかくと、身体を大きく震わせた。
「黒の魔女は、そういうえげつない契約を時々行うのだ。わざと誤解を生む言い方もする。結果的に良い方向に進むことも多いが、嫌いな相手を嵌めることも少なくない。その分、魔術の法則や運命を恣意的に捻じ曲げることも得意なのだが」
黒の魔女が予想通り大聖女だったとして、彼女は一体何のためにひとの願いを叶えているのか。わからないことだらけだ。
アッシュは、エリンジウムがリリィのことを何より大切にしていると言っていた。そのことを今さらながらにリリィは思い出す。
恋心を失ったアッシュがエリンジウムとどんな会話をするのか、今のリリィには想像もできない。それでも、あれほどの熱量を持つアッシュの恋が、いつか報われてほしい気もする。
(恋心を奪われたところで、出会った瞬間にまた恋に落ちることもあるかもしれないわね)
あまり良い思い出がないはずなのに、なぜかそう思えてしまうのは、この森でさまざまなひとの恋の手助けをしてきたからなのだろう。
「それで先ほどの腕輪の件について、教えてもらえますか?」
「慌てずとも、どうせすぐにわかる」
「聖獣さま!」
けれど白狼は静かに目を閉じ、それきり口を開こうとはしなかった。
客人がいなくなった部屋の中で、リリィが白狼に尋ねる。けれど白狼は何とも渋い顔をしながら、身体を大きく震わせた。どうにもはぐらかされそうな予感がして、リリィはそっと白狼の前足を握りしめた。
「聖獣さま?」
「恋心だ」
「……恋心ですか?」
「安い対価だと思ったか?」
一瞬黙り込んだのを対価を安く見積もったと思ったらしい白狼が、じっとリリィを見上げてくる。白狼がリリィを見つめる瞳は、とても優しい。大切に思ってくれていることがよくわかる。そしてこのような真摯な瞳をリリィは知っている。アッシュがリリィの異母妹であるエリンジウムを見ている時の眼差しだ。
「いいえ。ただそのような形のない物を、対価として支払うことができるのがどうしても不思議で」
「本来ならば、このような物を喜んで受け取るのは黒の魔女なのだがな。わたしは不得意だが、そなたの異母妹が黒の魔女に差し出した対価があったゆえ、合わせることができた」
エリンジウムは、何を差し出したのですか。そう聞こうとして、リリィはその疑問を飲み込んだ。聞いたところで、どうなると言うのだ。先ほどアッシュに詳細を聞かなかった自分には、聞く権利はない。
白狼は耳をかくと、身体を大きく震わせた。
「黒の魔女は、そういうえげつない契約を時々行うのだ。わざと誤解を生む言い方もする。結果的に良い方向に進むことも多いが、嫌いな相手を嵌めることも少なくない。その分、魔術の法則や運命を恣意的に捻じ曲げることも得意なのだが」
黒の魔女が予想通り大聖女だったとして、彼女は一体何のためにひとの願いを叶えているのか。わからないことだらけだ。
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恋心を失ったアッシュがエリンジウムとどんな会話をするのか、今のリリィには想像もできない。それでも、あれほどの熱量を持つアッシュの恋が、いつか報われてほしい気もする。
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「それで先ほどの腕輪の件について、教えてもらえますか?」
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