拳で解決する田舎育ちの平民聖女は、呪いなんて信じない。害虫駆除はともかく、呪われた王太子さまをなんとかしてくれと言われても困るのですが。

石河 翠

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 軍曹殿をひるませた使者さんのもとに、ふわふわと文字が飛んできました。

 やはりこうやって見ると、群れで移動する蝶のようですね。文字は使者さんの元まで辿り着くと、文章になるように整列していきます。何か重要な用事だったのでしょうか、少しだけ難しい顔をして使者さんがこちらを向きました。

「申し訳ありません。殿下から呼び出しが入りました」
「どうぞお気になさらず。私はしばらく、この辺りを掃除しておりますので」
「用事が終わったら、お部屋にお茶を届けに参ります」
「今日は王太子さまとのお茶会はありませんよね?」
「そうですが、僕があなたと一緒にお茶を飲みたいのです」
「お仕事をサボっても良いのですか?」
「少しくらいなら平気ですから。その後、帳尻を合わせます」
「……わかりました。お待ちしておりますね」

 先ほど仕事への向き合いかたを偉そうに語ってしまった手前、サボるなとは言いにくいですね。王太子さま抜きのお茶会であれば、緊張することなく美味しいものが食べられますし。提案を受け入れると、使者さんは急ぎ足で遠ざかっていきました。
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