拳で解決する田舎育ちの平民聖女は、呪いなんて信じない。害虫駆除はともかく、呪われた王太子さまをなんとかしてくれと言われても困るのですが。

石河 翠

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 王太子さまの元婚約者さんにお会いした翌日。色々と考え過ぎた結果、私は頭がくらくらしてきてしまいました。さすがにこの状態では、害虫退治に出かける気力もわきません。そんな私に甘いお菓子を差し出してきてくれたのは、タイミングよく部屋に遊びにきていた使者さんです。失礼ながら使者さん、昨日の今日で働きかた改革をし過ぎなのでは?

「マルティナさま、お疲れのようですね。昨日からずっと考え込んでおられるようですが」
「王太子さまの呪いについてなんですけれど。どうしても森の魔女さま……大聖女さまのお考えがわからなくて」
「そうですね。僕もこの歳になってもさっぱりわかりません」

 使者さんがわからないのに、一般市民の私にわかるわけがありません。いっそ、本人に聞くのが手っ取り早いのではないでしょうか。……本人に、聞く?

「そうです、それが一番ですよ!」
「マルティナさま?」

 部屋の中でじっとしているなんて私らしくありませんもの。いきなり立ち上がった私を見て、使者さんが目を丸くしました。最近の使者さんは、お仕事モードではないお顔をたくさん見せてくれます。美形の百面相が見られるなんて役得です。

「今日は『害虫退治』はお休みですか」
「せっかくなので今まで放置していたものを整理してみようかと思います」
「それでどちらに向かわれるのです?」
「使者さんならおわかりでしょう。王太子さまのお部屋ですよ。もちろん一緒にきてくださいますよね」
「殿下にお会いになられるのですね。……承知しました」
「使者さんったら変ですよ。もともと、呪いを解くために私を招いたのでしょう。それなのに今の使者さんは、呪いを解いてほしくなさそうに見えます」
「そんな風に見えましたか。困りましたね」

 困ったように眉を下げ、使者さんが頬をかきました。

 そうして唐突に願い出た王太子さまへの面会は、思ったよりもスムーズに実現されることになったのです。
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