拳で解決する田舎育ちの平民聖女は、呪いなんて信じない。害虫駆除はともかく、呪われた王太子さまをなんとかしてくれと言われても困るのですが。

石河 翠

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「あ、使者さん!」
「意外な組み合わせですね。おふたりは一体いつお知り合いになられたのですか?」
「先ほど偶然、ご縁がありまして。そうですよね?」

 同意を求めて隣を見れば、ご令嬢がしっかりとカーテシーをして頭を下げていらっしゃいます。え、なんですか、あの低姿勢。あの格好でじっとできるなんて、やはりこのかたは生まれながらのお嬢さまなのですね。

「公式な場ではないから、どうか楽にして」

 使者さんが声をかけると、彼女はおずおずと姿勢を戻しました。なんだか少し緊張しているようにも見えます。

「使者さんたちこそお知り合いだったのですね」
「あなた! このかたは!」
「いいんですよ。どうぞお気遣いなく」

 私の知らない使者さんとご令嬢の間柄に、なんだかもやもやした気持ちがわき上がりました。なんなんでしょう、この感覚。使者さんに私以外の仲のよい友人がいてもおかしくはないというのに。

 というか、私と使者さんはただの仕事仲間であって友人ですらないのでは……? 思ったよりもショックを受けている自分自身に驚きながら声をかけました。

「使者さん、お話することがあるなら席を外しましょうか。お茶はまた別の機会に」

 私の台詞に、ご令嬢が慌ててかぶりをふりました。使者さんは何かぶつぶつ呟いているようです。

「い、いいえ、お気遣いは無用ですわ! おふたりの邪魔をするなんて、命知……お邪魔な真似はいたしません! 用事は済みましたので、ここで失礼させていただきます」
「そうですか? それではどうぞお気をつけて」

 一体どうしたのでしょう。若干顔をひきつらせて、ご令嬢が立ち去ってしまいました。もしかして、使者さんが小声でムカムカさん騒動の件をお教えしたのでしょうか。確かに想像したら四阿にはいたくありませんよね。

 自室に戻ってからのふたりだけのお茶会。もやもやの正体がわからないせいか、ちっとも心がときめきめせん。

「……先ほどのご令嬢、綺麗なかたでしたね」
「マルティナさま、何かおっしゃいましたか」
「……いいえ」
「こちらは、隣国からやってきたショコラティエが作った新作ショコラですよ」

 じわりと生まれたもやもやとほんのりとした苦味は、最近評判だというショコラティエの甘いショコラを食べても、消えることはありませんでした。
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