26 / 36
(26)
しおりを挟む
「あ、使者さん!」
「意外な組み合わせですね。おふたりは一体いつお知り合いになられたのですか?」
「先ほど偶然、ご縁がありまして。そうですよね?」
同意を求めて隣を見れば、ご令嬢がしっかりとカーテシーをして頭を下げていらっしゃいます。え、なんですか、あの低姿勢。あの格好でじっとできるなんて、やはりこのかたは生まれながらのお嬢さまなのですね。
「公式な場ではないから、どうか楽にして」
使者さんが声をかけると、彼女はおずおずと姿勢を戻しました。なんだか少し緊張しているようにも見えます。
「使者さんたちこそお知り合いだったのですね」
「あなた! このかたは!」
「いいんですよ。どうぞお気遣いなく」
私の知らない使者さんとご令嬢の間柄に、なんだかもやもやした気持ちがわき上がりました。なんなんでしょう、この感覚。使者さんに私以外の仲のよい友人がいてもおかしくはないというのに。
というか、私と使者さんはただの仕事仲間であって友人ですらないのでは……? 思ったよりもショックを受けている自分自身に驚きながら声をかけました。
「使者さん、お話することがあるなら席を外しましょうか。お茶はまた別の機会に」
私の台詞に、ご令嬢が慌ててかぶりをふりました。使者さんは何かぶつぶつ呟いているようです。
「い、いいえ、お気遣いは無用ですわ! おふたりの邪魔をするなんて、命知……お邪魔な真似はいたしません! 用事は済みましたので、ここで失礼させていただきます」
「そうですか? それではどうぞお気をつけて」
一体どうしたのでしょう。若干顔をひきつらせて、ご令嬢が立ち去ってしまいました。もしかして、使者さんが小声でムカムカさん騒動の件をお教えしたのでしょうか。確かに想像したら四阿にはいたくありませんよね。
自室に戻ってからのふたりだけのお茶会。もやもやの正体がわからないせいか、ちっとも心がときめきめせん。
「……先ほどのご令嬢、綺麗なかたでしたね」
「マルティナさま、何かおっしゃいましたか」
「……いいえ」
「こちらは、隣国からやってきたショコラティエが作った新作ショコラですよ」
じわりと生まれたもやもやとほんのりとした苦味は、最近評判だというショコラティエの甘いショコラを食べても、消えることはありませんでした。
「意外な組み合わせですね。おふたりは一体いつお知り合いになられたのですか?」
「先ほど偶然、ご縁がありまして。そうですよね?」
同意を求めて隣を見れば、ご令嬢がしっかりとカーテシーをして頭を下げていらっしゃいます。え、なんですか、あの低姿勢。あの格好でじっとできるなんて、やはりこのかたは生まれながらのお嬢さまなのですね。
「公式な場ではないから、どうか楽にして」
使者さんが声をかけると、彼女はおずおずと姿勢を戻しました。なんだか少し緊張しているようにも見えます。
「使者さんたちこそお知り合いだったのですね」
「あなた! このかたは!」
「いいんですよ。どうぞお気遣いなく」
私の知らない使者さんとご令嬢の間柄に、なんだかもやもやした気持ちがわき上がりました。なんなんでしょう、この感覚。使者さんに私以外の仲のよい友人がいてもおかしくはないというのに。
というか、私と使者さんはただの仕事仲間であって友人ですらないのでは……? 思ったよりもショックを受けている自分自身に驚きながら声をかけました。
「使者さん、お話することがあるなら席を外しましょうか。お茶はまた別の機会に」
私の台詞に、ご令嬢が慌ててかぶりをふりました。使者さんは何かぶつぶつ呟いているようです。
「い、いいえ、お気遣いは無用ですわ! おふたりの邪魔をするなんて、命知……お邪魔な真似はいたしません! 用事は済みましたので、ここで失礼させていただきます」
「そうですか? それではどうぞお気をつけて」
一体どうしたのでしょう。若干顔をひきつらせて、ご令嬢が立ち去ってしまいました。もしかして、使者さんが小声でムカムカさん騒動の件をお教えしたのでしょうか。確かに想像したら四阿にはいたくありませんよね。
自室に戻ってからのふたりだけのお茶会。もやもやの正体がわからないせいか、ちっとも心がときめきめせん。
「……先ほどのご令嬢、綺麗なかたでしたね」
「マルティナさま、何かおっしゃいましたか」
「……いいえ」
「こちらは、隣国からやってきたショコラティエが作った新作ショコラですよ」
じわりと生まれたもやもやとほんのりとした苦味は、最近評判だというショコラティエの甘いショコラを食べても、消えることはありませんでした。
40
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】聖女レイチェルは国外追放されて植物たちと仲良く辺境地でサバイバル生活します〜あれ、いつのまにかみんな集まってきた。あの国は大丈夫かな
よどら文鳥
恋愛
「元聖女レイチェルは国外追放と処す」
国王陛下は私のことを天気を操る聖女だと誤解していた。
私レイチェルは植物と対話したり、植物を元気にさせたりする力を持っている。
誤解を解こうとしたが、陛下は話すら聞こうとしてくれない。
聖女としての報酬も微々たる額だし、王都にいてもつまらない。
この際、国外追放されたほうが楽しそうだ。
私はなにもない辺境地に来て、のんびりと暮らしはじめた。
生きていくのに精一杯かと思っていたが、どういうわけか王都で仲良しだった植物たちが来てくれて、徐々に辺境地が賑やかになって豊かになっていく。
楽しい毎日を送れていて、私は幸せになっていく。
ところで、王都から植物たちがみんなこっちに来ちゃったけど、あの国は大丈夫かな……。
【注意】
※この世界では植物が動きまわります
※植物のキャラが多すぎるので、会話の前『』に名前が書かれる場合があります
※文章がご都合主義の作品です
※今回は1話ごと、普段投稿しているよりも短めにしてあります。
【完結】 先祖返りでオーガの血が色濃く出てしまった大女の私に、なぜか麗しの王太子さまが求婚してくるので困惑しています。
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
「僕のお嫁さんになって」と求婚してきた大国の王太子アルフォンソ(9歳)を、「大きいものが良く見えるのは、少年の間だけよ。きっと思春期になれば、小さくて可愛いケーキみたいな女の子が好きになるわ」と相手にしなかった小国のオーガ姫ヘザー(10歳)。しかし月日が流れ、青年になっても慕ってくるアルフォンソを信じてみようかな?と思い始めたヘザーの前に、アルフォンソを親し気に愛称で呼ぶ美しい幼馴染が現れて……
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。
追放聖女ですが、辺境で愛されすぎて国ごと救ってしまいました』
鍛高譚
恋愛
婚約者である王太子から
「お前の力は不安定で使えない」と切り捨てられ、
聖女アニスは王都から追放された。
行き場を失った彼女を迎えたのは、
寡黙で誠実な辺境伯レオニール。
「ここでは、君の意思が最優先だ」
その一言に救われ、
アニスは初めて“自分のために生きる”日々を知っていく。
──だがその頃、王都では魔力が暴走し、魔物が溢れ出す最悪の事態に。
「アニスさえ戻れば国は救われる!」
手のひらを返した王太子と新聖女リリィは土下座で懇願するが……
「私はあなたがたの所有物ではありません」
アニスは冷静に突き放し、
自らの意思で国を救うために立ち上がる。
そして儀式の中で“真の聖女”として覚醒したアニスは、
暴走する魔力を鎮め、魔物を浄化し、国中に奇跡をもたらす。
暴走の原因を隠蔽していた王太子は失脚。
リリィは国外追放。
民衆はアニスを真の守護者として称える。
しかしアニスが選んだのは――
王都ではなく、静かで温かい辺境の地。
【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした
まほりろ
恋愛
【完結済み】
公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。
壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。
アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。
家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。
修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。
しかし仔猫の正体は聖獣で……。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。
・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。
2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます!
誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!!
アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる