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唐突ななりゆきで、ご令嬢の愚痴を聞く羽目になりました。辞退しようとしたのですが、彼女のお付きの皆さんに四阿へ連行されてしまったのです。ここはハチより怖い虫が出ますけれどいいのでしょうか?
「それで、わたくしは婚約者がある身でありながら、真実の愛に目覚めてしまったのです! 嘘をつけないと涙をこぼしたわたくしを哀れに思し召した王太子さまたちは……って、あなた、本当に聞いていらっしゃいますの?」
「聞いてます、聞いてます」
「繰り返すところが怪しいですわ!」
貴族のお嬢さまも普通の女の子と同じで、恋バナを始めると長いのですね。
「でもまあ、好きなひとと結婚できることになってよかったですね」
「あなた、ちっとも驚きませんのね。これはこの国にとってとても重要な出来事ですのよ」
「私は貴族ではありませんので。ところでそんなに大事なことなら、そもそも私に話してはいけないのでは?」
「だって誰かに話したかったんですもの。こんなこと、あなたくらいにしか話せませんわ」
それは通りすがりのモブならOKということですか!
「それで今日は隣国へ出発前に、王太子さまに最後の挨拶に来られたのですか?」
「ええ、でも殿下はいらっしゃらなくて」
それはおかしな話ですね。今日のお茶会がなくなった理由は、王太子さまが元婚約者さまにお会いになるからだったはずなのですが。
「大聖女さまにはお会いできたのだけれど……」
大聖女さま! ここで、まさかの情報が出てきました。結局私が一度もお会いできていない大聖女さまは、どのようなおかたなのでしょう。教会に戻れば情報収集も可能なところがもどかしいですね。
「あの、大聖女さまにはどうすればお会いできるのですか?」
「今回は婚約を解消するにあたって、大聖女さまが手を貸してくださったのですんなりとお会いできただけ。普段ならどこにいるかを把握することも難しいのではないかしら?」
ご令嬢の答えに、頭が痛くなってきます。
呪われた王太子さま、王太子さまに呪いをかけた元大聖女の魔女さま。王太子さまと結婚したくなかった元婚約者のご令嬢に、理想と現実の間で闇落ち一歩手前な状況にあったらしい使者さん。私は何か大きなことを見落としているのではないでしょうか。
「ちなみに婚約を解消された王太子さまは、どなたと婚約なさるのでしょうね。この時期からお相手を探すのは大変そうですが」
「あなたったら、何を寝ぼけたことを言ってますの。それはもちろん」
「あ、蝶が……」
先ほど使者さんをどこかに連れて行った、蝶のような文字の群れがひらひらと庭園に戻ってくるのが見えます。その後ろには珍しく慌てたような顔をする使者さんの姿がありました。
「それで、わたくしは婚約者がある身でありながら、真実の愛に目覚めてしまったのです! 嘘をつけないと涙をこぼしたわたくしを哀れに思し召した王太子さまたちは……って、あなた、本当に聞いていらっしゃいますの?」
「聞いてます、聞いてます」
「繰り返すところが怪しいですわ!」
貴族のお嬢さまも普通の女の子と同じで、恋バナを始めると長いのですね。
「でもまあ、好きなひとと結婚できることになってよかったですね」
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それはおかしな話ですね。今日のお茶会がなくなった理由は、王太子さまが元婚約者さまにお会いになるからだったはずなのですが。
「大聖女さまにはお会いできたのだけれど……」
大聖女さま! ここで、まさかの情報が出てきました。結局私が一度もお会いできていない大聖女さまは、どのようなおかたなのでしょう。教会に戻れば情報収集も可能なところがもどかしいですね。
「あの、大聖女さまにはどうすればお会いできるのですか?」
「今回は婚約を解消するにあたって、大聖女さまが手を貸してくださったのですんなりとお会いできただけ。普段ならどこにいるかを把握することも難しいのではないかしら?」
ご令嬢の答えに、頭が痛くなってきます。
呪われた王太子さま、王太子さまに呪いをかけた元大聖女の魔女さま。王太子さまと結婚したくなかった元婚約者のご令嬢に、理想と現実の間で闇落ち一歩手前な状況にあったらしい使者さん。私は何か大きなことを見落としているのではないでしょうか。
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「あ、蝶が……」
先ほど使者さんをどこかに連れて行った、蝶のような文字の群れがひらひらと庭園に戻ってくるのが見えます。その後ろには珍しく慌てたような顔をする使者さんの姿がありました。
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