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本編
14話
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「で、殿下……?」
すぐ近くで聞こえた困惑したような、可愛らしい声が聞こえた気がしてオレは目が覚めた。
ゆるゆると顔をあげると、深紅の瞳がまっすぐにオレに向いている。
(あぁ、なんて幸せなことか!)
自分を見つめるラーミナに緩む表情が止まらない。彼女はそんなオレを心配するような素振りを見せたけど、オレはやっぱり溢れる多幸感を押さえきれずにいた。あぁ、本気で舞い上がりそうだ!
しかし、ここでこれ以上残念な姿を晒すのもダメだな。オレは王子だし、これではラーミナに格好がつかないからな。
さて、精一杯“王子らしく”ならなくては。まずは、シュタール兄上直伝(?)の爽やかな笑顔から。
「大丈夫か?」
「……え?」
「昨日のあれで大分怪我をしたし、魔力切れで倒れただろう?
……身体は、辛くないか?熱は引いたよう────」
「だ、だいじょーぶですっ!私はっ、もう元気でしゅっ!」
……額に手を伸ばそうとしたら、遮られてしまった。うーむ、残念だ。
だが、慌てたラーミナも非常に愛らしい。頬がほんのり桃色に染まって、瞳が潤んだところが特に。
そして最後の「~でしゅっ!」、あれの破壊力はヤバかった……。本人は噛んだだけなのだが、オレは本気で悶えそうだった。
彼女の僅かに潤んだ深紅の瞳と、上気した頬が特に。
そして、オレは意を決して彼女に確認をとる。……ま、オレが彼女を見間違えることなんてあり得ないが、一応な。
「……改めて確認させて貰うが、貴女は昨夜の夜会に来ていた“ラーミナ=ホレフティス”伯爵令嬢で間違いないだろうか?」
「────っ!なぜ、それを」
「それは……」
いや、貴女の情報をオレが聞き逃すわけがないだろう。
なんせ、ラーミナはオレの初恋だ。女は……どうだか知らんが、男にとって初恋は忘れがたいものなのだ。その上、数年越しでさらに美しくなった想い人を見て心が揺らがないわけがないだろう。そもそも、オレはあれ以降恋をした覚えがない。……昨日のあれは、ノーカンと信じたい。
が、まさかここで「貴女のことをずっと想ってたからです」と、言われて引かれない自信はない。むしろオレだったら引く。ドン引きだ。
さらに自分に追い討ちをかけるようだが……この様子だと、やはり彼女はオレを覚えてないだろうな。
いや、仮に覚えていたとしても同一人物だと思ってないかもしれない。夜会のと気にも思ったが。
自分で言うのも何だが、オレはこの数年で大分様変わりした……はずだ。なよっちかった身体も鍛えて日に焼けたし、そんじょそこらの魔法使いには負けないぐらい魔法の扱い方を覚えた。それに、最近気づいたんだが……オレの目の色は昔と違う。
いや、正しくは気づいたのはオレじゃなくて周り──兄上、姉上たち──だ。それまでオレはずっとこの木翡翠色だと思ってたんだが、レド兄上曰く「昔は普通の淡褐色だった」らしい。子どもの頃は黒髪が映るのが嫌で、ろくすっぽ鏡を見なかったからな。そのせいかもしれん。
成長に伴って幼少時と目の色が変わるのは、魔力量の多い人ほど良くあることらしい。どこかの国には、それが100%起こる一族も存在するのだとか。……彼らは、純粋な人ではないらしいが。まぁ、これは置いておこう。
さて、何故オレがラーミナのことを知っているかの言い訳だが……。そうだ、これがあったじゃないか。忘れてた。
「それは、貴女も昨日の夜会にいたからだ。オr────(じゃなくて)私のところに挨拶に来てくれただろう?」
「……まさか、覚えておられたのですか?」
「えぇ、貴女も私も昨日が夜会デビューでしたでしょう?あのとき白い花を付けていた人は、そこまで多くなかったですから」
はい、嘘☆
ぶっちゃけ、オレはラーミナ以外見てなかったからな。何か話しかけてきた令嬢はいたが、もはや顔も覚えてない。
でも、ラーミナはこれで信じてくれたっぽい。純粋なんだなぁ。
「さて、ここからが本題なのですが……。
昨日のあれ、あのとき貴女の使った力ですが、私が見た限りでは魔法ではなかった。
あれが一体なんなのか、教えていただけませんか?」
オレがそういった瞬間、ラーミナの表情が凍りついた。そして、みるみるうちに青ざめて、そのままうつむいてしまう。
オレが慌ててどうしても言えないなら、それでもいいですが……と付け足すとあからさまにホッとしたようだった。
そこで、オレは自分のミスに気づいた。
「……すまない、またオレは失念していたようだ」
「────え?」
「オレは腐っても王子だ。貴女も王族から尋問紛いのことをされれば、恐ろしくもなるだろうな。オレでも嫌だ。
オレはあまりこの身分が好きではないし、時々身分を忘れたことをしているからか、つい自分の持つ権力の存在を忘れてしまうのだ。
だから、ラーミナ……嬢。すまなかった」
これは本心だ。
オレは王子の身分をあまりよく思っていない。……というよりオレが持っているということが、嫌だった。
発言には嫌が応にも責任と力がついてくる。正直、窮屈だ。
誠心誠意謝るためにも、元の口調に戻したのだが……失敗だったか?ラーミナ、固まってる。
「それが、殿下の……その、素……なのでしょうか?」
おそるおそる顔を上げてオレの方を窺うラーミナ。────上目遣いっ!上目遣いの破壊力が!
やばいやばいやばい、落ち着け!オレェ!!
「あ、あぁ……その、だな
まぁ、その通りだ。驚かせたか?」
「いえ……。
そうですか、殿下は────」
ラーミナは一度、ふっと目を閉じて息を吐く。その間、オレはずっと緊張していた。……何かやらかしたか、オレ?
そして、再び深紅がオレの方に向いたそのとき、彼女はまたあの日のように微笑んでいた。
「アイゼン殿下には、お話ししましょう。
────私の、力……三神獣についての全てを」
すぐ近くで聞こえた困惑したような、可愛らしい声が聞こえた気がしてオレは目が覚めた。
ゆるゆると顔をあげると、深紅の瞳がまっすぐにオレに向いている。
(あぁ、なんて幸せなことか!)
自分を見つめるラーミナに緩む表情が止まらない。彼女はそんなオレを心配するような素振りを見せたけど、オレはやっぱり溢れる多幸感を押さえきれずにいた。あぁ、本気で舞い上がりそうだ!
しかし、ここでこれ以上残念な姿を晒すのもダメだな。オレは王子だし、これではラーミナに格好がつかないからな。
さて、精一杯“王子らしく”ならなくては。まずは、シュタール兄上直伝(?)の爽やかな笑顔から。
「大丈夫か?」
「……え?」
「昨日のあれで大分怪我をしたし、魔力切れで倒れただろう?
……身体は、辛くないか?熱は引いたよう────」
「だ、だいじょーぶですっ!私はっ、もう元気でしゅっ!」
……額に手を伸ばそうとしたら、遮られてしまった。うーむ、残念だ。
だが、慌てたラーミナも非常に愛らしい。頬がほんのり桃色に染まって、瞳が潤んだところが特に。
そして最後の「~でしゅっ!」、あれの破壊力はヤバかった……。本人は噛んだだけなのだが、オレは本気で悶えそうだった。
彼女の僅かに潤んだ深紅の瞳と、上気した頬が特に。
そして、オレは意を決して彼女に確認をとる。……ま、オレが彼女を見間違えることなんてあり得ないが、一応な。
「……改めて確認させて貰うが、貴女は昨夜の夜会に来ていた“ラーミナ=ホレフティス”伯爵令嬢で間違いないだろうか?」
「────っ!なぜ、それを」
「それは……」
いや、貴女の情報をオレが聞き逃すわけがないだろう。
なんせ、ラーミナはオレの初恋だ。女は……どうだか知らんが、男にとって初恋は忘れがたいものなのだ。その上、数年越しでさらに美しくなった想い人を見て心が揺らがないわけがないだろう。そもそも、オレはあれ以降恋をした覚えがない。……昨日のあれは、ノーカンと信じたい。
が、まさかここで「貴女のことをずっと想ってたからです」と、言われて引かれない自信はない。むしろオレだったら引く。ドン引きだ。
さらに自分に追い討ちをかけるようだが……この様子だと、やはり彼女はオレを覚えてないだろうな。
いや、仮に覚えていたとしても同一人物だと思ってないかもしれない。夜会のと気にも思ったが。
自分で言うのも何だが、オレはこの数年で大分様変わりした……はずだ。なよっちかった身体も鍛えて日に焼けたし、そんじょそこらの魔法使いには負けないぐらい魔法の扱い方を覚えた。それに、最近気づいたんだが……オレの目の色は昔と違う。
いや、正しくは気づいたのはオレじゃなくて周り──兄上、姉上たち──だ。それまでオレはずっとこの木翡翠色だと思ってたんだが、レド兄上曰く「昔は普通の淡褐色だった」らしい。子どもの頃は黒髪が映るのが嫌で、ろくすっぽ鏡を見なかったからな。そのせいかもしれん。
成長に伴って幼少時と目の色が変わるのは、魔力量の多い人ほど良くあることらしい。どこかの国には、それが100%起こる一族も存在するのだとか。……彼らは、純粋な人ではないらしいが。まぁ、これは置いておこう。
さて、何故オレがラーミナのことを知っているかの言い訳だが……。そうだ、これがあったじゃないか。忘れてた。
「それは、貴女も昨日の夜会にいたからだ。オr────(じゃなくて)私のところに挨拶に来てくれただろう?」
「……まさか、覚えておられたのですか?」
「えぇ、貴女も私も昨日が夜会デビューでしたでしょう?あのとき白い花を付けていた人は、そこまで多くなかったですから」
はい、嘘☆
ぶっちゃけ、オレはラーミナ以外見てなかったからな。何か話しかけてきた令嬢はいたが、もはや顔も覚えてない。
でも、ラーミナはこれで信じてくれたっぽい。純粋なんだなぁ。
「さて、ここからが本題なのですが……。
昨日のあれ、あのとき貴女の使った力ですが、私が見た限りでは魔法ではなかった。
あれが一体なんなのか、教えていただけませんか?」
オレがそういった瞬間、ラーミナの表情が凍りついた。そして、みるみるうちに青ざめて、そのままうつむいてしまう。
オレが慌ててどうしても言えないなら、それでもいいですが……と付け足すとあからさまにホッとしたようだった。
そこで、オレは自分のミスに気づいた。
「……すまない、またオレは失念していたようだ」
「────え?」
「オレは腐っても王子だ。貴女も王族から尋問紛いのことをされれば、恐ろしくもなるだろうな。オレでも嫌だ。
オレはあまりこの身分が好きではないし、時々身分を忘れたことをしているからか、つい自分の持つ権力の存在を忘れてしまうのだ。
だから、ラーミナ……嬢。すまなかった」
これは本心だ。
オレは王子の身分をあまりよく思っていない。……というよりオレが持っているということが、嫌だった。
発言には嫌が応にも責任と力がついてくる。正直、窮屈だ。
誠心誠意謝るためにも、元の口調に戻したのだが……失敗だったか?ラーミナ、固まってる。
「それが、殿下の……その、素……なのでしょうか?」
おそるおそる顔を上げてオレの方を窺うラーミナ。────上目遣いっ!上目遣いの破壊力が!
やばいやばいやばい、落ち着け!オレェ!!
「あ、あぁ……その、だな
まぁ、その通りだ。驚かせたか?」
「いえ……。
そうですか、殿下は────」
ラーミナは一度、ふっと目を閉じて息を吐く。その間、オレはずっと緊張していた。……何かやらかしたか、オレ?
そして、再び深紅がオレの方に向いたそのとき、彼女はまたあの日のように微笑んでいた。
「アイゼン殿下には、お話ししましょう。
────私の、力……三神獣についての全てを」
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