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第1章 『最初の街』編
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しおりを挟む──それは、私がイリオスとあの白い空間にいたときのこと。
「『お前は誰だ』って言われたとき、なんて答えたらいいか、ねぇ……」
そんな私の悩みに対して、イリオスは堂々と「誤魔化せば?」と宣った。
そもそも、イリオスは「そんなこと聞かれるの?」と思ってそうだけど……こんなチートスペック持ってたら、誰かしらに言われるでしょ?普通は。
「でも、もし誤魔化したらマズい状況だったら?」
例えば、『真実を言わなきゃ死ぬ』って呪いをかけられたりとか、『よく分からないけど怪しいヤツ』なんて言われて指名手配されたりとか。
……私、国を敵に回すのはヤダなぁ。
「んー?うん、ならその時はこう言ったらいいよ」
やっぱり、イリオスはよく分かってないようだ。ま、神さまみたいな存在からしたら、私みたいな小心は理解できないかも。
でも、イリオスは私にそっと耳打ちして、助言をくれたのだ──。
私はおもむろに、ギルドマスターの前でローブを脱ぐと、カットソーの袖のボタンを外し、軽く腕捲くりする。
手の甲から手首までがちゃんと見えるようにすると、右手左手の指同士を軽く組ませて、目を閉じた。……まるで、祈るかのように。
そして──主神《イリオスヴァスィレマ》に奏上する。
[右の腕に宿りしは、強き力───勇ましき御魂]
右手の甲から肩にかけて、ビリビリッと何かの熱が駆け抜ける。
痛いような、痒いようなそんな感覚。
[左の腕に宿りしは、優しき心───聖なる御魂]
今度は左手の甲から肩にかけて、ふわふわと柔らかな何かが包み込んでいく。
こっちは、なんだかくすぐったいような感覚だ。
[我が身は神意に由来し、その眷属なりて、この地に在らん。いざ証明せよ───《神印紋解放》]
そう告げると、私の両手からカッと光が迸る。
目を瞑っていてもなお、光を感じるのだ。……ギルドマスターは、失明してないだろうか。………あ、大丈夫なの?そうですか。
「こ、れは……っ!」
光が落ち着いた頃に目を開くと、私の手の甲には見たことのない紋様が浮かび上がっていた。右手には赤青橙緑の四色の、左手には黄と紫の二色の蔓草(の、ようなモノ)が、一周巻き付いた中指の付け根から肩の方に伸びている。手首でも一度ブレスレットみたいに巻きついてるのが特徴的だ。
や、でもコレ、私が考えたヤツと違う………あ、アレとは別件なの?へー。
「っ!~~~っ!?」
ふと、正面からガシャンッと派手に物が倒れる音が響く。
私が顔を上げると、ギルドマスターが椅子から転げ落ちているところだった。……腰は無事だろうか?
「お、お嬢───いや、ハルア・キラ様。貴女は」
「はぃ?」
え、なんで急に敬称?
って私、また何かやらかしたの!?
なんかギルドマスターの目がキラッキラしてるんだけど!何その珍しい昆虫を捕まえた少年みたいな表情!?
「貴女は、勇者様であり聖女様だったのですね!」
………………
…………
……
「───え?」
「えっ?」
……えぇと、聞き間違いかな?今、『勇者』と『聖女』って聞こえたんだけど。
その二つって、《使命職》だよね!?
ちなみに、《使命職》って言うのは、生来に神(←イリオスのことだよ☆)に選ばれた使命を持つ者の総称だよ。だから、自動的に神の眷属になるんだ。
有名なのは、『勇者』と『聖女』。《魔王》討伐に必須の《使命職》だね。あ、あとは『賢者』とか。
《使命職》の選定基準はランダムなんだけど……一つだけ、必ず人間種から選ばれるのは決まってる。その人間種ってのは『人族』、『獣人族』、『妖精族』、『小人族』、『地下族』、『有翼族』と六種もあるんだけどね。
ん?私の種族?
登録上は『人族』だけど、実際のところはまた違うらしいよ?イリオス曰くね!
と、言うわけで、厳密には人間種じゃない私が《使命職》を持ってるワケないんだけど……。
「もしかして……ご存じないのですか?
神から賜りし真言を諳じると、『勇者』様には右手に、『聖女』様は左手に御印が出ることを」
へーぇ、御印……って、この神印紋のこと!?嘘でしょ!?………ち、違わないの?そ、そんな。
ナ ニ ソ レ キ イ テ ナ イ ン ダ ケ ド ! ?
イーリーオースー!あんの、おちゃらけポンコツ管理者がぁ~っ!!
なんで、そう大事なことを説明しないのさ!………は?サプライズだぁ?特殊能力なんざ、チートスペックだけで充分だっての!
はっ!いけないいけない。ギルドマスターの前だったわ。とりあえず、冷静にならなければ。
そうと決まれば、深呼吸!
ひっ ひっ ふーっ ひっ ひっ ふーっ……
あれ、なんか違うか?まぁ、でも落ち着いたからよしとしよう。
……さてさて、と。
「状況は理解しました。
で、私はこれからどうすればいいですか?」
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