異世界で勇者兼聖女なりました!……が、現在ドラゴンにストーカーされてます!?

嘉藤 静狗

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第1章 『最初の街』編

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 悩んだ末に、ギルドマスターは言った。

「……今日のところは帰っていい。少し、気持ちを整理させてくれ。
 『魔物討伐依頼』の報酬は明日になる。……話の続きはその時に」

 ……気のせいか、告白の返事を保留された気分だ。
 や、ある意味じゃ告白ではあるんだろうけどさ。なんか、こう……混乱してるのは分かるけど、もっと違う言い方もあったと思うんだよなぁ。


 でも、とりあえず帰宅(?)許可は得たので、一旦は宿に戻らせてもらおう。
 なんだかんだで戦略級魔法なんぞ使って疲れてるし、ね。
 ……あ、ちなみに変質したスライムは渡しましたよ。こんなにあっても、私にゃ全部は扱いきれないし。






『───……か、さん』

 ふわふわとした意識の中で、誰かが私の名前を呼んでいる……気がする。
 ここはどこだろう?


 眩しいようで、暗くて。

 寒いようで、温かい。


 そんな、不思議な場所。
 だんだんと五感が、惑わされて、いく。

『───やぁか、さんっ!』

 でも、とても居心地がいいんだ。
 うつらうつらと微睡まどろんでいると、幸せな気分になるの。
 あと、少しだけ眠らせて……。

『~~~っ!もー!清明さやか、さんっ!
 清明さんってば、起きて下さいぃー!』
「へぎゅっ!?」

 み、鳩尾みぞおちにクリティカル……!
 誰だよ、こんなことすんの!?今、一瞬目ん中で星が弾けたんだけど!?
 ──って、ちょっと待て。この声は、もしかして……?

「イ、イリオス!?」
『はぁーい!呼ばれたから、来ちゃった☆』

 はぁ!?そんなに気軽に来れるの!?
 昨日………じゃなくて、一昨日?まぁ、どっちでもいいんだけどさ。
 と に か く! あんだけ盛大に別れを惜しんだばっかなのに、こんなに簡単に再会するとか……私の感動返せ!

『正確には再会とは違うかなぁ~。だって、ボクの肉体はここにないし。
 さっき、清明さん……心の中で《イリオスヴァスィレマ》に呼び掛けたでしょ?それをつてに清明さんと、ボクの精神の一部をコネクトしただけだからね』

 なら、同じ夢を見てるみたいなものか。
 ──って、いや普通そんなことできないから!さすが、この世界で神さまって言われるだけはあるよね……。
 規格外だわぁ………え?私が言うなって?そんな、殺生な。


 てか、なんで来たんだろ?イリオスったら。
 よもや、私が呼んだからって理由だけじゃないでしょ?そんなん、建前だろーし。

『っととと、そうだ忘れてた。こっちが本題だったよ。
 ───清明さん、これからどうするか悩んでたよね?なら、お願いがあるんだけど……』

 はぁ、お願い……ねぇ。
 なんだろ?果たしてそれは、私にも出来る範囲なんだよね?そこんとこのすり合わせは、けっこう大事よ?
 だって、いくら私がチートスペックを持ってても、出来ないことは多いからね!
 例えば裁縫とか。

『まず、一つ』

 え?複数ですか?
 めんどくs………あぁ、分かったよ。怒らないでってば。言われたからにゃ、ちゃんとやるって。

『一つ───どんなに勧められても、教会には行かないこと。
 ボクの管理が甘くなってから、ボクの存在を利用して好き勝手してるらしくてねぇ。魔窟になってるんだよ……。
 貴女があそこに目をつけられると、段取りが狂っちゃうんだ』

 教会かぁ……。
 私、教会にはセーブポイントの印象しかないんだけど。一応、前世では海外の観光スポット一つとして行ったことあるけどね?ステンドグラスがキレイだったよ。
 宗教とか信仰は気にしたことないからなぁ……もとより行く予定はないよ。

『次、二つ目ね。
 ……ボク───管理者・イリオスヴァスィレマの名において、勇谷いさみや 清明に《魔王》討伐を依頼します。拒否権は、ありません。異論は認めるけど』

 むぅ……《魔王》討伐依頼、か。
 ま、《使命職ロールジョブ》で『勇者』と『聖女』を任されたときから、薄々察してたけどさ。
 まぁた、とんでもない配役をくれたもんだよね……。



 一般に《魔王》と言うと、魔物や魔獣の支配者、あるいは王様みたいなイメージがあると思う。
 その考えは、この世界的にも割りとメジャーだ。……中には『地下アビス族』をなんて呼んで、魔族の王だって勘違いしてるやからもいるけど。
 でも、実際は全く異なる。


 《魔王》とは、あくまでも事象の名称で、そのような生き物が存在するわけではない。
 ま、ちょっとだけ《魔物》に近いところはあるよ。

 イリオスに説明してもらったところによると、《魔王》は魔力の源《シィーラ》のよどみの成れの果てだ。
 一方で、《魔物》はこごり。どちらも、《シィーラ》に由来するのは同じだけど、その性質はまるで違う。

 《シィーラ》は世界を循環する、水のようなもの。
 だけど、《シィーラ》は魔法として使われることで少しずつ。それが《シィーラ》の澱みの正体なんだ。
 凝りの方は単純に《シィーラ》が集まってるだけだから、特に問題はないんだけどね。

 澱んでしまった《シィーラ》は周囲に悪影響をもたらす。疫病とか、土地が痩せたりとか、色々。
 そのまま放置していると、世界はあっという間に滅亡する。魔法を使うのは、何も人間種だけじゃないから。
 そうならないために、《魔王》が存在するんだ──世界の防衛機能として。

 《魔王》は、《シィーラ》の澱みを集合させる性質を持っている。
 ある程度の期間は、世界のどこかで大人しく潜伏しているんだけど……いよいよ《シィーラ》の澱みの穢れを抑えきれなくなると、表に現れるようになる。
 わざわざ、浄化されるために。

 賢い人は、もうお分かりかもしれない。
 その浄化の力を持つのが、神の眷属たる『勇者』であり、『聖女』なんだ。


 あ、余談だけど。
 《魔王》には、《魔物》が群がる性質と《四天王》を操る機能があるよ。

 《魔物》は澱んだとは言え《シィーラ》に代わりはないから、《魔王》から溢れた《シィーラ》の澱みを元に発生する。だから、群がって見えるんだろうね。
 そして《四天王》は、ある条件を元に《魔王》が表に現れた時期と重なるように。選定に種族の縛りはないから、過去には人間種からも《四天王》は出ていると言ってたっけ。


 ようするに、イリオスは私に《魔王》の浄化を頼んでるワケ。でもさ、一つ疑問。

 ……どーして私なの?

 普通に今まで通りに、この世界の人間種から出せばよかったんじゃないかなぁ……。
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