異世界で勇者兼聖女なりました!……が、現在ドラゴンにストーカーされてます!?

嘉藤 静狗

文字の大きさ
31 / 43
第2章 『対・四天王①』編

しおりを挟む
 無言の圧力でお兄さんを追っ払った後──。
 私は、ヴァストークの森に来ていた。もちろん、一人で。

 ん……ちょっと、おかしいかな?
 半日前にさっき来たときと、様子が違うよ。

 何かこう……森全体から、変な圧力を感じるんだけど。
 表現すると、ザラザラしてるって言うかジメジメしてるって言うか。気持ち悪いって程じゃないけど、なんか不快指数が……うえぇ。

 でも、ハッキリと感じるものが一つ。
 奥の方から、結構なプレッシャーが来てる。むしろ、なんで今まで気づかなかったんだろ?ってぐらい強力だ。
 ………なぁるほど、隠蔽されてたのか。あと、このプレッシャー、《魔圧》って言うのね。てっきり、気配──準静電界だっけな?──の強化版かと思ってた。

「なら、やっぱ知能ありかぁ……」

 ともかく、コレで今回の標的エモノが《魔王》でないことが確定した。《四天王》かどうかまでは知らん。

 ……天気や地殻変動と同じく、事象の一つである《魔王》には思考能力がない。だから、地域や条件によって希薄になることはあっても、意図的に隠れたりはしないのだ。……イリオス曰く。


 つらつら色んなことに思考を泳がせながら、脳裏にスキル《世界辞典》で、ヴァストークの森内の『巨大蜘蛛ジャイアントスパイダー』の分布図を浮かべ、私は奥地へと進んだ。

 正直、《世界辞典》は、私の持つスキルの中でも最も反則的だと思う。
 何故なら、イリオスに教わった知識全てが載っていることに加え、常に最新版に更新可能なのだ。
 オマケに、自動記録オートメモリー機能付き。日記を書かなくても、昨日以前に何をしていたのか分かるのだ。超☆便利!

 ま、だからこそにゃ取得不可なんだが。


 おっとっと、話題がそれたな。
 余計なことを考えつつも、取りあえず順調に森の奥へと進めてるけど。
 ……あ、敵になりそうな生き物は一切エンカウントしてないよ。
 今回は、わざと魔力を滲ませてるからね!怖じ気づいて、寄ってこれないよ。よっぽどのことがなければ。

 ……、ね。

 そう思った瞬間だった。


───ピュィッ、エエエェェェェェエエェッッ


 甲高い獣の鳴き声。と同時に、周囲の魔圧と《シィーラ》のよどみが一層濃くなる。
 どうやら、私の気配か魔力に当てられて、あちらさんの方からおでなすったらしい。
 ……おい、私のここ数日の捜索はなんだったんだ。こんなことなら、しょぱなから魔力を流しときゃ良かった。

 まぁいい、なんにせよ。

「あはっ、手間が省けた───ねっ!」

 私は声の方に駆け出すと、《異空間収納》から取り出した双剣を振るい、辺り一体を斬り払った。瞬く間に視界が開け、戦闘しやすいフィールドが完成する。

 すまん、森の木々よ。君たちの尊い犠牲は忘れんぞ!

 ………って、あぁ【水】の回復魔法で癒せばいいか。ならば、後で!

「ここで会ったが百年目!
 会いたかったよ───《四天王》♪」

 剣と魔法で整地した場所に、躍りかかるように現れたのは──一頭の、大きな鹿。
 朱色の瞳以外、全身どこを見ても真っ白で、大角には青々とした葉が繁っている。狂ったように頭を振りたくり、威嚇を繰り返しているその様子から見て、どうやら完全に正気をなくしているようだ。
 見た目だけなら神秘的なのに……コレじゃあ、ねぇ。

 こっそり《世界辞典》を発動して、目の前の鹿の正体を調べる。と、出てきたのは、


樹角鹿アルベルコルノディーア★(白子アルビノ)』…頭部に角に似た魔樹を生やした鹿型の魔獣。多くは【地】の魔法を得意とするが、稀に【水】や【風】を得意とする個体も』


 とあった。


 ……むぅ、ちと厄介かな。
 なんせこの世界じゃ魔獣の白子個体は、魔力が多い傾向にある。仕組みはよく分からんけど、メラニンの代用に魔力の源《シィーラ》を使っているかららしい。
 さらに、『樹角鹿』はどうやら私と同じく魔法に秀でるタイプのようだし、骨はありそうね。
 まー、ただ倒すだけなら楽なんだよ?一瞬で命を刈れる自信がある。

 でも、ソレはできない。

 何故なら、この『樹角鹿』……このヴァストークの森の主個体だから。
 辞典に載っている種類名の後の「★」マーク。コレ、実は主の証なのだ。

 主個体とは、一定範囲のフィールド内に必ず存在する、管理者のようなもの。ダンジョンだとボスがソレに該当する。
 んで、その基本的役割は、支配下にある《魔物》の管理と自身の担当するフィールド内の《魔獣》の抑制。大雑把に言えば、他所よそに迷惑をかけないようにすることかな。大家さんみたいなものとも言う。
 通常、主個体はフィールド内で最も強い《》から選ばれる。で、代替わりは主個体が死んだら、自動的に次が指名されるようになってるらしい。

 しかーし、問題なのはココからだ。
 天寿を全うした上での代替わりなら、混乱なくスムーズに進む。主個体は寿命が近くなると、徐々に次代に管理権を移すからだ。
 けど、逆を言えば天寿を全うする以外での代替わりは問題しかない。次代の選別しかり、管理権の移譲しかり……最悪、《魔物》・《魔獣》の集団暴走スタンピードを引き起こす。

 ソレで被害を受けるのは近くの町や集落。
 ココなら間違いなく──《ドロワヴィル》だ。


 つまり、私は《四天王》になってしまったこの『樹角鹿』を、殺らずに倒さなければならない。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...