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第2章 『対・四天王①』編
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魔力の解放と共に、周囲に淡雪が降り始める。……けど、コレは幻影。冷気はあるけれど、触れることはできない。
魔法は、イメージが全てだ。今回は、冬眠を意識して魔法を構築したから、こんなエフェクトが入っているだけ。
……ま、属性は確かに【氷】と【邪】なんだけど。
この魔法のメインは、【闇】もしくはその上位である【邪】魔法の司る精神の方だ。
とりあえず、【闇】は置いておいて。
通常、【邪】属性は、前にも言ったように暴走した聖獣や神獣の封印に使われる。主個体は分類上、一応聖獣に該当する。
封印は、私的に強引に解釈すると魔法での強制睡眠だ、と思う。
そして、対象──『樹角鹿』に傷をつけないためにも、相手には眠ってもらうのが早い。
そこで、私の勝手なイメージにより、「快適な眠り=素敵なBGM」ということで、【氷】魔法を使ったんだ。
えーと、なんだっけ……。
そうだ!『グラスハープ』ってあるでしょ?アレをイメージして、【氷】魔法で再現したんだ。
ワイングラスを撫でたときの、ほゎんとした音がなんか眠くなるんだよね……私にとっては。
だから、【氷】と【邪】の魔法にしたんだ。
【氷】魔法で奏でる眠りの調べを、【邪】魔法で直接精神に訴えかける。
ほら、いいアイディア!
……だからさ、キミもそろそろ観念したらどう?
[───眠れ眠れ、森の主。ここは汝の揺り篭よ。
何者であれ、その安らぎを冒すモノはなく。
何があろうと、その身を傷つけることは叶わぬこと。
いざ世界の意思望まれし者よ。我が懐にて、一時の静かなる休息を……]
ゆぅらりゆらり、と身体を揺らして……そうね、船を漕ぐように。
さぁさぁ、良い子。ねんねしなさい、ね?
………………
…………
……
さぁてと、『樹角鹿』は眠りについたね。
しかも立ったままじゃなくて、香箱座りである。完璧にリラックス状態と言えるんじゃね?コレ。
……主個体な上に魔力が高いだけあって、思ったよりは抵抗してたけど。
まぁ、十分余りは持ったからやっぱ優秀なのかなぁ。
……えーでは、そろそろ《四天王》の討伐を──と、行きたいところだけど。
「ねぇ、いい加減にしてよ。
着いてこないでって言ったよね?……アシルお兄さん?」
「……っ!?」
そう、《雪暗調》を使って三分ぐらいした頃に、このお兄さんの気配がしたのだ。たぶん、隠れてるつもりだったんだろうけど……バレバレなんだよねぇ、コレが。
終盤だったからあんまり変な力は見られてないとは思うけど。最後、『樹角鹿』──しかも魔力の多い白子体だ──が目の前でウトウトしてるのを傍観(しているように見える)のを見られたんだよね。
……(フツーのヒトにとっては)強い相手の目前で、か弱そうな少女(に見えるヒト)がぼんやり(もしくは呆然として)突っ立っている。
うん、そうだね。コレは、マズいねぇ。……見られたことが。
どう見ても異常な光景だもん。
…………うっし、いっちょ誤魔化すか☆
「あのさぁ。私、同行はお断りしたよね?なんで着いて来るかなぁ」
「お、俺は。君を、心配して……」
「私はあの時、即答で断った後に『それなりに強いんですよ』って、言いましたよね。
まさか、そのままの意味で受けとりましたか?それはないでしょう??」
私の魔圧付きの睨みにお兄さんは、コクコクと激しく頭を上下に振る。……ヘッドバンキングかよ。
誤魔化しの一貫とは言え、コレはマジで正論である。
故に、罪悪感などない!
冒険者には、一定の割合で後ろめたい事情持ち……俗に言う、「脛に傷を持つ」者って言うのがいる。
その手のヒトは、誰がどー見ても犯罪者じゃない限り、見逃されているのだ。暗黙の了解で。
それともう一つ、依頼を受けるときなんかでチームやパートナーでもない相手と、一時的に組むことはある。確かにあるのだ。
でも、提案時に断られたら引くのがマナー。追い縋ったり、ましてや後をつけるって言うのは、正直に言ってありえない行為なのだ。
しかーし!このヒトは、それを分かっていてなお、やらかしてくれた。
や、どうみても弱い子とかさ、自殺願望を持ってそうとかなら、まだ分かるよ?
ソレならルールの例外として、許容はできる。冒険者の共通概念として「命を大事に!」、人命は最優先だもの。
……でもさぁ、私さぁ。
このヒトの前で、『巨大蜘蛛』を蹂躙してたよね?
だったら例外には、できないよなぁ??
「なら、どーして……こちらにもそーゆー事情があるって、察してくれないんですか?」
「そ、れは……」
ふふ、今さら青い顔したって許しゃせんよ?
私ね、転生する時に、ルールの守れない子には、容赦しないと決めたの!
だって、前世の死因がさぁ……「同僚からの無茶苦茶な仕事の押し付け(←ルール違反)による、過労死」だったから、ね?
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