異世界で勇者兼聖女なりました!……が、現在ドラゴンにストーカーされてます!?

嘉藤 静狗

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第3章 『教会の暴走』編

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 その話を最初に聞いたのは、《ドロワヴィル》より にある、小さな村の食堂で昼食をとっていた時だった。

「なぁ、聞いたかよ!?近くまで来てるらしいぞ!」
「あぁ、隣街のやつだろう?『勇者』様・『聖女』様御一行、ご来訪ってな」

「んっ、ぶふぅ!?」


 聞こえてきた瞬間、思わず口の中のものを吹き出しそうになった。
 ……ちなみに、食べていたのはスープパスタ(のようなもの)である。麺は鼻の奥の方に上ってきたし、スープは気管に入りかけた。痛い。
 はー、散々だ……。まったく、もぅ!


 って、それより!隣街の『勇者』・『聖女』の噂ってのは、なんのこっちゃ!?

 前にも言った通り、この二つは、《使命職ロールジョブ》と呼ばれるもので、どちらも世界に一人ずつしか存在できないのである。
 他の《使命職》も同時期に同じ《使命職》を持つヒトはいない。
 そして、肝心の『勇者』と『聖女』だが……現在は二つとも私が所有しているので、他に持っているヒトはいない、ハズ。


 な~の~に~、隣街に来ているとは……一体何事か?

 確かに《アトラスヴィル》では、ギルマスたるギュミルさんに身バレ──『勇者』兼『聖女』であると知られた──した。でも、あのヒトは言わないでいてくれているハズだ。察しのいい大人だから、ワケアリだときづいてるだろーし。

 そして、隣街である《ドロワヴィル》でもやらかしたけど……見てたアシルお兄さんの記憶は消してあるので、ここからバレることもない。
 ホントはね、記憶を消すと精神に負担がかかって、ぶっちゃけあまりよろしくない。けど、アシルお兄さんの場合は、一度《四天王》になって暴走した記憶があり、ふとした瞬間に思い出されてしまうのを防ぐ意味合いもあった。
 だって、自分が《四天王》とか……フツーは嫌でしょう?

 と、言うワケで私の身バレ説は、一旦消える。
 そもそも、転生してからまだ半年も経ってないのだ。そこまで派手に動いてないから、バレようもない……と思いたい。


(派手……に、やってなかったかい?)←byイリオス


 ……ねぇ、やっぱりなんか聞こえてるよね。時々だけど。
 ………ほほぅ、あくまで白を切るのか。そーかそーか。
 まぁ、言い訳をさせてもらうと、大きな街──例えば首都レベル──ではやらかしてないからノーカンなのだよ?ノーカン。ぐふふ……。


 はっ、また話題が逸れてしまった!


 と、とにかく!おそらく、私の正体がバレたのではない。
 なら、可能性は一つだけだ。……少なくとも、私の想像できる範囲では、だけど。

 もう一つの可能性──それは、『勇者』や『聖女』を詐称しているヒトがいる、と言うコト。

 ……や、別にいいんだよ?
 むしろ、私としては身代わりが出来たってコトだし。なんなら、両手もろてを上げて大歓迎しちゃうよ?
 私の代わりに、面倒な役やってくれて、ありがとー!ってね。崇め奉られるのは、趣味じゃないんだわー。ありがた迷惑どころか、大迷惑だから。

 でもさぁ……なーんか、キナ臭いんだよねぇ。

 仮に……ホントに仮に、だよ?
 コレがもし、本物の『勇者』や『聖女』を炙り出すためにやっているとするなら?
 そんでさ、もしも「本物の『勇者』・『聖女』は私だ!」って、新たに名乗る人物が現れるとしよう。もちろん私はやらないから、ソイツも偽物だ。
 したらさ……今『勇者』と『聖女』を名乗っている人たち、危険じゃね?

 たぶんだけど……その隣街に来てる自称『勇者』&『聖女』御一行って、教会の回し者だと思うんだ。確定で。
 《使命職》持ちを囲って、唯一神イリオスの使徒だー、なんて勝手なことを宣ってるヤツら。
 なぜ分かるかって?在野で勝手に「オレは『勇者』だー!」、「私は聖女です」なんて名乗られても信じらんないけど、教会の保証があれば「あぁ、本物なのね」って思うでしょ?だから、今の『勇者』と『聖女』は、教会の保護下にあるか、教会の関係者──神官だ、と考えたワケ。

 んで、話を戻すけど……信仰されている本人(←人じゃないけど)曰く、上層部ほど狂信者的な部分があるらしい。
 そんなヤツらが、本物と偽物の見分け方を知らないハズがない。だから、今の『勇者』と『聖女』は偽物だと知った上で立てられてる、と推測される。
 教会としては、偽物と割れるのは困るワケだ。
 で、そこに……本物を名乗る人物が現れたら?あるいは、偽者だと分かる方法を持っているヒトがいたら?

 そして、ソイツらが「お前らは偽者だ」と騒いだらどうなるか。

 騒いだヤツが大したことのないヤツだったら、煩いなぁ……で済むかも知れない。けど、ある程度の地位がある人物で、ギュミルさんみたいに『勇者』と『聖女』の証明方法を知っていた場合──十中八九、「証明してみろ!」と言う事態になる。

 ……そうなったら、教会は偽物を認めざる得なくなるだろう。
 そこで最終的に責任を押しつけられるのは、『勇者』・『聖女』役のヒト。教会が「あいつらがそう名乗ったから!」とでも言って、幽閉か処刑か。どちらにしろ、良い未来想像図は描けないだろうね。


 もし、ホントにそんなコトが起きたとしたら、それは遠回しに私のせいである。
 私が「目立ちたくないから」と言って、逃げ隠れしたから。
 ……ま、私が転生する前から今の『勇者』と『聖女』はいるらしいから、全責任があるワケじゃない。けど、目覚めは悪いよね、正直なところ。

「……取り敢えず、確認してみるか」

 そう呟くや、私はさっさと昼食を食べ終えて、噂話をしていたおっs……じゃなくて、おじさま方に詳しい話を聞いてみるのだった。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

糸生,,しき布団

すっっごく面白いです!
作品全体の雰囲気もすごく好きだし、地方訛りのような変な癖がなくて読みやすいです🙌

2020.04.12 嘉藤 静狗

感想ありがとうございます!
大分放置してしまっていますが、続きが書け次第更新したいと思います

解除

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