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閑話 黒装束
しおりを挟む暗い廊下を、太陽と天秤をモチーフした紋章を付けたエルフェンの刑務官二人に前後を挟まれ歩く小柄な女が居る。
廊下の壁には鉄格子の扉が両方に並んでおり、その中からは微かな呻き声も聞こえる。
ここはレジア王国首都。
エルダニアの行政区、レジアの法律に則り、犯罪人や虜囚の罪を裁量して裁く法議院の地下に設置された地下牢。
刑務官のエルフェンと女は鉄格子の並ぶ廊下を抜け、さらに奥の頑丈な扉を超えた先の独房の前で止まる。
鉄の錠前を開ける音が反響し、やけに大袈裟に聞こえる。
鉄がきしむ音と共に、上と下に小窓が付いた扉が開き、刑務官に背中を押される様にその中に入った黒装束の小柄な女。
名前をセラと言う。
大きな音と共に扉が閉まり、施錠をの確認をした刑務官が去っていく足音がした。
「あの女、何も喋べりゃしないらしいな」
「らしいっすね」
セラはその無表情の死んだ目でちらりと扉を見る、そこには魔力を跳ね返す対魔法陣が描かれていた。
表情はそのままで、上を見る。やはりここにも陣がしっかり形成され、魔力を使い逃げられない様にしっかりと対策されている事が解る。
諦めた様に女は壁を背に座り、目を閉じる。
目を閉じて思い出すのは、あの経験だ。
アラマズドの流星に乗り、経験した光景だ。
彼女は思う。
大失敗だ…。あの時、アレにさえ乗って居なければ…。
そもそもが、あのカスピラーニと手を組むこと自体が間違いだったんだ。
確かに、金払いは最高だったけど… ああ… クソッ! なんて様だ。
オセニアラじゃ食っていけなくて、仕事を求めて渡ったイギスト帝国、あの国は謀略と裏切りが当たり前の国だった、だから暗殺業にはもってこいの国さね、だけど、欲に釣られて海峡を渡ったのが間違いだった…
まさか、レジアに手を出し戦争を吹っ掛けるなんて…。
足音が聞こえる。誰かが来る。
何度も扉が開き、そして閉まる音が響く、足音は目の前の扉の前で止まり、上の小窓が開くと、男が中を確認している。
「魔力は使わない方がいいぞ」
そんな事は百も承知さ。
「まだ、話す気にならんか」
「字は、書けるのか?」
「筆談だ筆談、出来るか?」
この扱いは一体何なんだ? 確かにレジアの姫は、捕虜を悪く扱わないと言っていたが、そんなもの口から出まかせだというのが世の常じゃないか…
「証言した方が、なにかと有利だぞ」
そう言うと男は居なくなり、入れ替わりに違う奴が下の小窓から食事を入れて去っていった。
この国はなんなんだ、尋問はあったが拷問はなかった、普通、女の虜囚捕まえたらやることは一つだろうに…
何なんだ… これも全部あの流星の、あいつだ。あの男の所為だ…
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