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船上での一騒動(3)

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 私と皇女サマ(と一応クロイツ)が海面から顔を出した時、船上は私の予想以上にどんでもない状態になっていた。

「<……カオスだな>」

 クロイツの言葉は私の思っていた事と全く同じだったのである。

 今にもダイブしようとしている皇女サマに心酔しているであろう帝国のキシサマ方。
 そんな同僚を必死に止めている無関心派のキシサマ方。
 ついでにマクシノーエさんも海にダイブしたいと交渉しているようだけど、それも引き留められている、っぽい。
 あとは……うん。
 私を突き落とした琥珀の男性は薄っすら笑みを浮かべて座っていた。
 その前には……何故か鞭をもってニッコリ笑っているのに目が笑っていない状態のお兄様と背後に何となく吹雪が見えるヴァイディーウス様、そして憮然とした、と言うよりも今にも怒鳴りたそうな顔で睨みつけているロアベーツィア様が立っていた。

「<え? お兄様は何時から鞭をお使いに? 御顔立ちに的には似合うかもしれませんが、お父様が御嘆きになりますよ?>」
「<それ、最初に突っ込む事か?>」
「<…………他は突っ込みたくないなぁって>」

 私の処理能力はそんなに高くないので。
 出来れば処理出来る範囲の出来事でお願いします。

「<いや、騒ぎになるとは思っていたけれど。うん。これは想定以上に騒がれてる気が?>」

 特にヴァイディーウス様とロアベーツィア様の反応が過剰な気が?
 あ、いや、けど友人とは思ってもらっているみたいだから、この反応でもあっているのかな?

「(ヤバイ。常識が分からなくなりそうだ)」

 そんな唖然としている私達に気づいたキシサマ達が私達に手の差し伸べた。……いや、正確に言うと皇女サマにだけ手を差し伸べているんだけどね。

「(此処まで徹底されると怒りも沸かないもんだなぁ)」

 と言うか手を差し伸べられても素直に受け取れない気もするし。
 だからまぁ私は問題無いと思ったんだけど、どうやら皇女サマはそうでは無かったらしく、眉を顰めて「先にキースダーリエ様を引き上げて下さいまし」と言った。
 キシサマ達と皇子サマが驚いた顔をしたけど、私も驚いてる所なので理由を聞きたそうな顔を向けないでくださいね。
 私も分からないから。
 結局、困惑しているキシサマを他所にマクシノーエさんが私に手を差し伸べてくれた。
 私も彼の手ならば取り敢えず取る事は出来るので、遠慮なく引き上げてもらった。
 しかもマクシノーエさんは服が濡れている私に対して上着をかけてくれた。……うわぁジェントルマン。

「<こーいう所をサラッとやるのがモテる人なのかねぇ>」
「<今突っ込む所でもないと思うけどな。そして他が不甲斐ないだけじゃねー?>」

 そこら辺はノーコメントで。
 私はサラっとクロイツの発言をスルーすると、お兄様達の方へと近づいていく。
 勿論そこには私を突き落とした張本人がいるからマクシノーエさんは止めたそうだけど、苦笑して歩みを止めなかった。
 マクシノーエさんは私が止まらないと分かってくれたのだろう。
 周囲を警戒したまま傍についてくれた。

「(この人は……まだ信用してもいいかもしれない)」

 今の所騎士に対する好意的な感情は彼一人にかかっているから頑張って下さい。
 心の中でそんな事を思いつつ近づいていく。
 そんな私に最初に気づいたのは琥珀色の狂人だった。

「おや? ご無事でなによりです、キースダーリエ様」

 今までと変わらず笑みすら浮かべて言い放った琥珀の狂人の言葉にお兄様達も私の存在に気づく。
 途端私はお兄様に抱きしめられたからお兄様達がどんな表情をしているか分からなかったけど。

「ダーリエ! ぶじでよかった! 助けられなくてごめん!」
「お兄様。御召し物が濡れてしまいますわ」
「そんなことどうでもいいよ! おねがいだ。生きているとかくにんさせてくれ」

 私を抱きしめるお兄様の腕は震えていた。
 ……怖かったのだろう。
 私自身ですらあそこで海に放り出されるとは思いもしなかった。
 あの琥珀の狂人は笑顔のまま、常と変わらない態度のまま何の躊躇いもなく、そして何の変化も無く私を海に放り出したのだ。
 海面にぶつかった衝撃で一瞬意識が飛ぶ瞬間、お兄様の叫び声が聞こえた。
 私はお兄様にあんな悲痛な声をあげさせてしまったのだ。

「(本当に酷い事をしたのに……そこまで心配してくれた事が嬉しい)」

 『前』の時には決して感じる事の無かった肉親の温もりと愛情に私もお兄様の上着を掴む。

「お兄様……心配して下さって本当に有難う御座います。そしてご心配をおかけして本当に申し訳ありません」

 両手をお兄様の頬に当てるとコツンと額を合わせる。
 今にも泣きそうなお兄様に私は微笑む。

「ワタクシは大丈夫ですわ」
「……心配したよ。それに無事でほんとうによかった」

 お兄様が落ち着いた事に気づいたのだろう。
 ヴァイディーウス様とロアベーツィア様が近づいてきた。

「助けることができず本当にすまなかった」
「そんな。ロアベーツィア様。あの状況ではどうにもなりませんでしたわ。ですから心配していただいた御心だけは頂く思います」

 ここまでくると令嬢の猫は要らないだろう。
 そう思い素で対応するとヴァイディーウス様が少しだけ驚いた後、納得したように僅かに頷いていた。
 本当に聡い御方だ。

「ロアとアールホルン殿はキースダーリエ嬢を助けようと海に飛び込もうとしたんだ。さすがに周囲に止められたけどね」
「まぁ。そこまでご心配頂いたなんて。本当に有難う御座います」
「容体は?」
「大丈夫ですわ。偶然ですが海の中でも呼吸と移動が出来る魔道具を持っていましたの」
「それは良き偶然だったね」
「ええ。帝国が海に面しているという事から気紛れに持ってきたモノなのですが。まさか自分で魔道具の性能を体感する事になるとは思いませんでしたわ」

 私はお兄様から離れると深々と一礼する。

「ご心配をおかけして本当に申し訳ございません。ワタクシはこの通り大丈夫ですわ。……――」

 そこで振り向き琥珀の狂人と対峙する。

「――……貴方様の主様の御希望通りになりましたでしょうか?」

 小首をかしげて笑みを浮かべる私に琥珀の狂人は笑みを深めた。

「ご無事でなによりです、キースダーリエ様」
「ええ。この通り、傷一つ御座いませんし意識も鮮明ですわ。……そもそも貴方の主様はワタクシが死ぬ事までは望んでいなかったのでしょうけどね」

 無言で笑む琥珀の狂人。
 そんな相手に対して一歩を退く事の無い私。
 帝国側の人間が驚いているのが気配で分かった。
 帝国に来てから私は口数少ない、ある意味内向的な令嬢の猫を被っていた。
 それは勿論、同世代の令嬢の振りが出来なかったからだけど。
 そんな私しか知らない人間にとっては自分を突き落とした相手とこんな風に話す胆力があるとは思いもしなかったのだろう。
 驚きの視線が私と目の前の琥珀の狂人に集まる。
 けどそんな有象無象よりも私は対峙している琥珀の狂人の内心を探る事に忙しいから全て無視する。
 今更何を思われようとも関係無い。

「(目が凪いでいる。……やっぱり彼の主にとって私が死ぬ事は必須では無かったのね)」

 むしろ死ぬのは流石に都合が悪かったのかもしれない。
 帝国は皆水の中で溺れない様に呼吸する魔法を学ぶという。
 つまり私の後に海に飛び込み直ぐに私を引き上げれば、余程の事が無い限り死ぬ事は無い。
 少々のタイムラグと皇女サマが飛び込んできたという事はロアベーツィア様やお兄様を引き留めるためやらキシサマ方の中で色々意志の統率がとれていなかったやら問題が起こっていたためだろう。
 そう考えれば本当に魔道具を持っていて、なにより冷静なクロイツが傍に居て良かったと思うけど。
 どっちにしろ私が此処で死ぬ可能性は低かったに違いない。
 
「(殺す気ならば別の場所の方が良いに決まっている。なのに、この男は直ぐに救出されるの分かってこの時に海に私を突き落とした)」

 もし殺す気だったなら、失敗した今、彼の双眸にはもっと感情が宿っているはずだ。……絶対的な存在からの命令を遂行できなかった事になるのだから。
 
「(凪いでいる事こそ私の生死が目的ではない事の証左)」

 それが分かるからこそこうして対峙出来ている訳だけど。

「周囲の方々は動揺している。つまり同じ派閥に在りながら貴方だけは別の任を任されている? それとも……主の真の意向を知っているのが貴方だけだという事なのかしら?」
「それを知る必要が?」
「あら。今回、ワタクシは巻き込まれただけだと思っていたのですけれど、違います? なら被害者として理由くらいお聞きしたいモノですわ。このままでは帝国のキシサマ方全てを警戒しなければいけないのですもの」

 私の言葉にピリっとした空気が船上に走る。
 何処か怒りのようなモノも感じられるけど、私にしてみればそれこそお門違いだ。
 自分達の今までの言動を顧みた方が良いと思いますよ?
 私は振り返るとうっそりと笑んだ。

「何故お怒りになられるのかしら? 貴方方の対応はとても他国からのお客様を持て成すモノではなかったと思いますけれど? ワタクシ、貴方方帝国の方々に何かいたしましたかしら?」

 初めてあった時からなのでワタクシには全く覚えがないのですけれど? と言うとキシサマ方が怯んだ。
 今更ながら自分達の対応が普通ではない事に気づいたのだろう。

「これならばまだ騎士としての義務感だけで動いていらっしゃる方々の方が職務に忠実でしたわ。まぁ……どうやら、そちらはそちらで今回のような思惑があったようですけれど?」

 これには皇女サマ派ではないキシサマ方が反論しようと口を開こうとする。
 だがロアベーツィア様の一睨みに口を閉ざした。
 一応彼等も家格の事は認識していたらしい。……私だけを埒外に置く所、自分に甘すぎるとしか言いようがないけれど。
 ロアベーツィア様にお礼を言うと、再び琥珀の狂人と対峙する。
 彼は一切変わらなかった。
 人懐っこい笑顔を浮かべている所も、その実目が一切笑っていない所も。
 他国とは言え、仮にも公爵家の令嬢に害を与えたのだ。
 しかも客人として招いている人間を。
 帝国にも泥を塗った彼のこれからは暗い。
 それに気づかないはずがないのに、それでも彼は一切変わらない。……まるで全てが予定調和なのだというように。

「それで? 教えて頂けるのかしら?」
「大体予測している方に今更教える必要がありますか?」
「まさか。予測などしていませんわ。ただ貴方“方”にとって全てが予定通りなのだという事は何となく分かりましたけれどね?」

 あえて貴方“方”と強調した私に琥珀の狂人は更に笑みを深めた。
 私の言葉のニュアンスに気づいたのだ。
 頭は悪くない、察しも悪くはない。
 けれど、絶対に目の前の彼は主と認めた相手以外には素直に話す事は無いだろう。
 彼は狂人だ。……ある種ルビーンとザフィーアの同類なのだ。
 そんな存在を相手に口を割らせる事ほど面倒な事は無い。

「(最悪、彼は自害する事すら躊躇わない。……ああ、なんて面倒な!)」

 溜息を隠すのをやめた私に琥珀の狂人は何を思ったのか、思いもよらない事を問いかけて来た。

「キースダーリエ様。貴女は今回の事を荒立てるおつもりですか?」

 彼の言葉に再び船上が緊迫感に包まれる。
 視線が集まる中、私は目の前の男の真意を探っていた。
 別に普通に応える事は構わないのだが、どうもこの男……しいては彼の主の思惑に乗っているようで少々面白くはない。

「(とはいえ。主共々彼等の真意が読めない以上、引っ掻き回すのは良策とは言えない、か)」

 でた結論に今度は内心で嘆息して私は口を開く。

「王国は帝国を良き隣人と思っておりますわ。過去も……そして未来においても」

 それだけでこの場にいる人間には通じるだろう。
 案の定緊迫感が緩む。
 とは言え、此処で終わらせる気は流石にない。

「ですが、此度の事に関しての顛末程度は教えて頂きモノですわね。被害者として」

 今回の事を隠蔽する事は許さない。
 全てを許してしまえば王国が舐められてしまう。
 対等である事が理想である以上、今回の王国の事情やらを考えると相殺するというのが落としどころじゃないかと思う。……まぁ帝国に方がやや借りを作った状態のような気がしなくもないが。

「もはや事はワタクシ達の手を離れておりますし、ワタクシは当事者の一人としての立場に御座いません。なのでワタクシ個人の意見になりますが、少なくともワタクシは今回の事で関係が壊れてしまう事を良しとは致しません。……ですから、被害者として顛末を知りたいと。その権利だけを主張させて頂きます」

 私の言葉に驚愕の視線が帝国側から集まる。
 だが王国側、というかお兄様筆頭に、彼等からは納得の反応が返って来た。

「<まぁ王国でも似たような事言ったからなぁ>」
「<甘々対応だけどな>」
「<んー。彼の主の真意が測れないから、あまり首突っ込みたくないんだよねぇ>」

 このまま当事者の一人としているとガッツリ帝国の御国事情に巻き込まれそうだ。
 流石にそれは勘弁願いたい。
 ただでさえ、先程の神殿の件があるのだから。

「<あと、なによりルビーンとザフィーアの同類をこれ以上相手にするのは勘弁してほしいし>」
「<あー。なるほど>」

 クロイツと【念話】で話していると人の気配が隣に来た事に気づいた。
 お兄様かと思ったけど、どうやら皇女サマだったらしい。
 突然の登場人物に内心驚きの声をあげてしまう。……誰にもバレなかったみたいだけど。

「貴方はお姉様の騎士。……此度の暴挙の原因は私ですか?」

 突然の質問に誰もが驚いたが、琥珀の狂人だけは浮かべた笑みの種類を変えた。
 凪いだ双眸には感情が載り、主の想いに応える事が出来る自分に歓喜している……ように見えた。
 皇女サマにもそんな彼の変化に気づいたのだろう。
 悲痛な表情で皇女サマは私に深々と頭を下げたのだ。……他の人は知らないけどこれで三度目だ。しかも今回が一番悔いているように見えた。
 皇族が突然頭を下げた事に帝国側に動揺が走る。
 皇子サマなんかは慌てて頭を上げるように言ったが、それでも皇女サマは一切顔を上げなかった。

「全ての元凶は私です。私の態度のせいでキースダーリエ様の帝国滞在の時間を不愉快な物にし、更に直接的な被害まで。全ての原因として謝罪を申し上げます。本当にに申し訳ございませんでした」

 「公式での謝罪は後にさせて頂きます」と言い切った皇女サマに帝国のキシサマ方も流石に自分達のしでかした事の大きさに気づいたのか、皇女サマに頭を下げさせた事への驚愕からか(後者の様な気がしなくもない)一斉に武器を外すと跪き頭を垂れた。
 
「<うわぁ。壮観だねぇ>」
「<おい。現実逃避するな! 気持ちは分かるが、取りあえずどうにかしてからにしろ!>」

 気持ちが分かるのに、現実逃避するなって酷いです、クロイツ君。
 とはいえ言っている事は間違ってないもんだから困る。
 私は引き攣りそうな口元を必死で持ち上げて微笑みをつくり口を開いた。

「まず、お顔をお上げ下さい。皇族の方に頭など下げられてしまってはワタクシが王国の方に怒られてしまいますわ。ワタクシとしては此度の事の顛末をお教えいただければ他には何も望みません。そして国に関しても……」

 私はそこでヴァイディーウス様に視線を移した。
 そんな私の言葉を引き継いでヴァイディーウス様が口を開く。

「被害者がこういっている以上、ことを荒立てて友好関係をくずすつもりはないですよ。あくまで王国と帝国は対等であるからこその今ですから」

 そうそう。
 片方が力を付ければ、対等な関係は崩れてしまい、最悪戦争になりかねない。
 今の国王と皇帝が穏健派だとしても次代がそうだとは限らないのだから。
 大国として関係性は対等である事が望ましいはずだ。

「もちろん、今回のことをうやむやにすることを私達は望みませんけどね」

 あー、ヴァイディーウス様が釘差しちゃった。
 うん、まぁお兄様が言うよりはマシかな?
 ヴァイディーウス様なら王族だし、ロアベーツィア様よりも理性的だろうからやり過ぎな事はしないだろうから。

「<ただ、皇女サマが王国に輿入れするのは無理だろうなぁ>」
「<いきなりの話題転換だな。ってーか、本人もその気はねーんじゃね?>」
「<そこら辺はほら、友好の証として?>」

 何代かに一度お互いの国から嫁いでいたと思うんだけど。
 
「<だとしても、オージサマたちにその気がないから無理だとおもうけどなー>」
「<数年後は分からないと思ってたんだけどなぁ。確かに、この状態だと皇女サマが孤立しそうだし、今代に関しては輿入れの話も流れるかもねぇ>」

 おっと、これこそ余計なお世話か。
 私は半分ほど好奇心からきた疑問をかき消すとようやく顔を上げた皇女サマ達を確認しつつ、今回の元凶の前に立つと腰をかがめた。
 未だに凪いだ双眸も笑顔も変わらない琥珀の狂人に顔を近づけると他の人に聞こえないように小さく囁く。

「これも貴方の主様の考える通りなのかしら? まぁどうだとしても、これ以上ワタクシを含めた王国の人間を巻き込まないで欲しいですわね。――貴方の紅の主様の目的はワタクシではなく水の御方なのでしょうしね?」

 そこで初めて琥珀の狂人が目を見張った。
 初めて笑みが崩れ人らしい側面が垣間見えたのだ。
 人らしく浮かべた驚きの表情に多少留飲が下がった私はクスっと笑うと身を引く。 
 後ろから視線を感じるけど、無視する。
 お兄様達がターゲットじゃない以上この程度で充分だ。
 どうせ今後も問題は後を引くだろうし、他にも問題も起こりそうなのだから、彼にだけに関わってなど居られない。

「(これ以上帝国の事情に巻き込まないで欲しいモノだわ)」

 ともかく、問題は今回の件をどうやって元凶だけに罪を問うかという事かな?
 まぁ皇女サマ自ら助けにきたわけだし、そこら辺をどうにか上手く持って行って欲しいもんだ。
 流石に国家間のやり取りは私にはさっぱり分からないのだから。
 いまこそマクシノーエさんとヴァイディーウス様の手腕が問われるだろう。……ヴァイディーウス様もまだ大人とは言えないからマクシノーエさんに負担が大きくなると思うけど。

「<騒動はまだまだ続く……って事なのかねぇ。いい加減にして欲しいわぁ>」
「<当然こんまんまじゃ終わらねーだろうな。ま、オマエの宿命って奴なんじゃね? あきらめろや>」
「<諦めたくないわぁ。私に平穏な休暇を下さい>」
「<無理じゃね?>」

 あっさりばっさり切り捨てて下さったクロイツにイラっと来た私は床にある影を軽くコツンと小突くと内心の溜息を隠して微笑みを浮かべる。
 そうして嫌々ながらも騒動の中へと足を踏み入れるのだった。


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