どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架

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噂を携えて、一路王都へ

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「え? お兄様は帰って来られないのですか?」

 掴んでいたお菓子を思わず落としてしまうぐらいにはショックを受けた私は、それを教えてくれたお母様を見つめる。
 明らかにショックを受けている私にお母様は苦笑なさっているけれど、発言を撤回はしてくれない。
 つまり、冗談ではなく、本当という事である。
 ……しょんもりしていいですか?

「学園に入ったばかりの年はやらねばならない事が多いから、大抵の今回のお休みは帰ってこれないわ。それでも寮生の子は無理して帰る子もいるのだけれど、あの子はそうではないから」

 学園に入って一年目が忙しいのは分かる。
 『ゲーム』からの知識からではなく、大抵初年度は何事も慣れるために周囲に目を向ける余裕なんてないものだから。
 そういうモノだと頭では理解していても、心には寂しさが広がる。
 お兄様に無理はして欲しくない。
 けど、少しでも良いから会いたかったなぁ、とどうしても思ってしまうのだ。

「あの子もあまりにすまなさそうに謝るものだから、無理に顔を見せに帰って来なさいとは言えないわ」
「そうですね。お兄様の御負担になる事はしたくはありません」

 会いたいのも私の我が儘だし。
 そうだ! これを機にに兄離れを……出来る訳がない。
 ブラコンでもいいじゃないか。
 お兄様が大好きで何が悪い。
 別にお兄様が結婚するならば祝福するし……お兄様を本当に支えてくれる方かお話合いはするかもしれないけど。
 私はお兄様もお母様もお父様も大好きですけど、何か?
 と言うかラーズシュタイン家に長年仕えて下さっている方々も大好きですけど?
 それが貴族の基準とは外れていたとしても関係ないから。
 この件に関しては隠す気もないし、誰に何を言われても何も思いません。
 ただの事実だからね。

「貴女は本当にあの子が大好きね」
「はい! 勿論お母様もお父様も大好きですわ!」
「ふふ。私も貴女もアールホルンも大好きよ……旦那様も、ね」

 流石淑女の鏡であるお母様。
 その微笑みでお父様を落としたのかな?
 今のふわふわした姿からは凄腕の魔導師であるとはとても思えない。
 シュティン先生やトーネ先生から時折聞かされるお母様達の武勇伝は凄まじい。
 けど私の知る両親からはそういった姿は全然想像できない。

 『能ある鷹は爪を隠す』ってこういう事なのかな?

 だとしたら両親が本気になる姿をこの目で見る日がこない事を願うばかりだ。

「それでね、ダーリエ」
「はい、お母様」
「王都に届け物をしてくれないかしら?」
「届け物、ですか?」
「ええ。学園の初年度に必要なモノを幾つか送ってほしいと頼まれているですけれど、誰かが届けても良いとは思いませんか?」

 「私は旦那様が王都に居るので、領地に居なければいけないので、貴女に頼みたいのです」と言ってウィンクするお母様。
 そんなお母様の態度でとても気を使われていると分かってしまい、そんなに分かりやすかったかと顔から火が出るかと思った。
 届け物があるのも事実だけど、きっと私があまりに落ち込んでいるから王都に行く口実をくれたのだろう。
 だって届け物なんて一瞬すむのだから。
 邪魔になるかもしれないと思って動けない私に会いに行く口実をくれた。
 淑女としては失格な私自身を恥じる気持ちもあるけど、それ以上にお母様の気づかないに私は胸が一杯になる。

「有難う御座います、お母様」

 胸の前で両手を組むと満面の笑みを浮かべる。
 お兄様に会いに行ける事もだけど、お母様の気遣いが何よりも嬉しかった。

「大好きですお母様」
「私も貴女方を愛してますよ」

 微笑んだお母様は私の前に側仕えに言って私の前に新しいお菓子を用意する。

「今すぐ飛んで行ってしまいそうだけど、二、三日待ちなさい。……まずは私との時間をもう少し楽しみましょうね」
「は、はい」

 心はお兄様の所に今すぐ行きたいと思ったけど、言われてみれば私が王都に行くとなると準備が必要なる。
 今すぐ「行ってきます!」とはならないのは当然である。
 其処を指摘されて私は再び頬が熱くなるのが分かった。
 はやる心まで見透かされてしまい、改めてお母様にはかなわないなぁと思うのだ。
 立派な淑女となるにはまだまだかかりそうだ。
 私は苦笑するとお菓子を一口食べる。

「ではお母様、お父様とのお話お聞きしてもいいですか?」
「あらあら。旦那様とのお話なんてあり過ぎて時間がかかってしまいますよ?」
「それでも構いません。今日はお母様とお話をしていたい気分なのです」

 お母様はクスっと笑うとお茶に口を一口飲み口を開く。

「そうね。それじゃあ……――」

 日差し柔らかな中、始まったお茶会はシュティン先生が時間だと知らせに来るまで続いたのである。

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