ごーいんぐ魔人うぇい~魔人に転生しての気ままに我儘な異世界ライフ~

伊達メガネ

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第一章

死んでしまったからと言って、誰もが異世界に転生したいとは限らないよね。

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 ようやく仕事が終わり、住居のある最寄りの駅に辿り着いた。
 ここからアパートまでは、徒歩で三十分ほどだ。
 日付はとっくに次の日へと変わっている。
 思わずため息がついて出た。
「ハァ……」
 今日が特別に遅くまで働いた訳ではない。連日似たような有様だ。
 長時間残業が日常化しているおかげで、最近ではこの状況が普通のことだと思えて、勘違いしてしまいそうだ。
 オマケに、見込み残業だとか色々と難癖をつけて、会社はたいして残業代も出さないのだから、我ながらいいように使われているもんだ。
 疲れが溜まった体に鞭打って、家路を急ぐ。
 既に明日ではなくなった、次の出社までのタイムリミットが、絶えず頭を悩ませていた。
 また、ため息が漏れた。
「ハァ……いっそ何もかも捨てて、どこか遠くに行ってしまいたいよ……」
 街灯だけしか明かりがない寝静まった住宅街を、鬱屈した心を抱えて歩いて行く。
 道すがら、とあるタワーマンションの建築現場に差し掛かり、ふと足が止まった。
 タワーマンションの建築現場は、まるで下々の者が住む下界との境界線が如く、大きな壁で隔たれていた。
 その壁には色鮮やかな広告が描かれていた。ご丁寧なことに深夜でも見やすいよう照明が灯され、ハイクラスな生活と明るい未来を謳っている。
「タワーマンションか……それも結構、高級な感じだな」
 タワーマンションの建築現場の入口は、格子状のスライド式の扉になっていて、人一人通れるぐらいの隙間が空いていた。
 周りを見渡して、誰も居ないのを確認する。
 タワーマンションの建築現場の入口に近寄り、隙間から中を覗き込むと、お目当ての物があった。
「お、やっぱりあったか」
 上蓋が切り取られたボロボロの一斗缶、工事の者が臨時で作成したであろう簡易灰皿だ。
 この時間帯なこともあって、周りに人は全く見られない。正直、歩き煙草をしてもいい気がするが、何かと喫煙者に厳しい情勢だ。どこに人の目があるかわからないし、SNSが幅を利かせている昨今、軽率な行動は控えた方がいいだろう。
 最も深夜の工事現場で、部外者が勝手に煙草を吸うこと自体、それはそれでどうかと言う気もするが、それでも煙草が吸いたいのだからしょうがない。悲しき喫煙者のさがだな。
 キョロキョロと周りを見渡し、入口の隙間から中に入った。
 懐から煙草を取り出し、火を点ける。
 深く煙を吸い込んで、一気に吐き出した。
 広告を照らすライトの明かりに照らされて、煙草の煙が浮き上がっていく。
 その奥では暗闇の中に、建設中のタワーマンションのシルエットが浮かんでいた。まだ外壁も無く鉄骨だけの姿なのに、妙な存在感があった。
 建築中のタワーマンションを、ぼんやりと見ながら煙草を吹かしていると、自然と言葉がついて出た。
「無いよなぁ……」
 この先、自分がいくら頑張ったところで、高級タワーマンションこんなところに住めることは無いだろう。勝ち組だとか自己肯定感が低いとか、そんな話ではない。これは純然たる事実だ。そもそもそれが出来るように人間は、自分のようにいいように使われて、あくせくと働いたりしない。
 それと、可能性だけで言えば、宝くじという手段もある。それなら本人の器量に関係なく、運さえ良ければ高級タワーマンションこんなところに住める可能性もある。確かにあるにはあるが、現実にオレが高額な当選金に当たることは無いだろう。こういうものが当たる人間は、元々何かしらか当ててきているもんだ。残念ながらオレの人生に、そのようなことは一度として無かった。
「ま、こればっかりはしょうがないよ……」
 持っていないものは持っていないのだから、しょうがないのだ。だからと言って、自分の境遇を恨んだり、他人をひがんだりする気持ちはない。
 だって他もみんな似たようなもんだろ? オレだけ特別ダメだって訳じゃない。むしろこっちの方が多数派だ。気にすることじゃないさ。
 突然、右手に痛みが走った。
「アチッ!」
 気が付くと、いつの間にか火が、煙草の根元まで来ていた。
 慌てて煙草を、簡易灰皿に投げ捨てた。
 痛む右手を振って、息を吹きかける。
「フゥ――フゥ――……何だよ、まったく! ……ハァ~~アァ、何やってんだ、オレは……」
 いい加減帰ろうと思い、鞄を手にした。
 その時、上空から鈍い金属音が聞こえてきた。
 ンン?
 なんだろう思い、上を見上げると、目に映ったのは――。
 迫りくる鉄骨の姿であった。


 闇だ。
 影でもなく、夜でもない、闇だ
 目の前には漆黒の闇が広がっていた。
 周囲には一切の光が無く、全てが闇に染まっている。
 しかも、状況はそれだけではなく、足元には地面が見当たらない。水の中にいるような、不思議な浮遊感に包まれていた。
 あれ⁉ なんだ⁇ ここは……どこだ? 何がどうなっているんだ?
 気が付いた時には、闇の中にいた。
 頭をフル回転させて考える。
 確か……会社からの帰る途中……タワマンの所で……鉄骨⁇
 最悪のことだけが、頭に浮かぶ。
 ……死んだのか……オレは……?
 ひとしきり考えてみたが、その結末しか思い浮かばない。
 マジか……でも、どう考えても、そうとしか思い当たらないのだけど。……いや、ちょっと待って、ちょっと待って!
 それでも必死に考えた。兎に角、必死に考えてみたが、行きつく答えは「死」しかない。
「ハァ~~たまにさぁ。ニュースで落下した看板や、崩れた壁に当たるという不幸な出来事を目にしたけど、まさかそれが自分の身にも降りかかるとはねぇ。持っていない方だと思っていたけど、こういうのには当たるんだ……」
 ふと家族のことが、思い浮かんだ。
 親父やおふくろはやっぱり悲しむかねぇ。あまり出来が良い方ではなかったし、兄貴がいるからオレ一人いなくなっても大丈夫か。そんな頼れる存在でもなかったしなぁ。あ! 何かDVDとかってレンタルしていたっけ? そう言えば、クリーニング取りに行ってないな。あ~~エッチい物ってどうしよう? 遺品整理とかで見られるのは、キッツいわぁ……。
 ここでもまた、ため息がこぼれ落ちた。
 ハァ……まあ、これ以上考えてもしょうがない。ひとまずそれは置いておいて、ここは死後の世界ってやつなのかな?
 それにしては不思議と恐怖を感じなかった。
 想像していたのと随分違うな。賽の河原も三途の川も無いし、もっとおどろおどろしいイメージだったけど……。
 周りを見渡すが、闇ばかりで他には何も見当たらない。と言うか、なんにも無い。
 これどうすればいいのだ? ここで待っていればいいのかな? それともどこかに行かないといけない?
 しかし、周りは闇ばかりで、答えてくれそうな者も、ヒントになりそうな物も全く無い。どこかに行こうにも、周りは闇が広がっているばかりで、どこにも行けそうになかった。
 まいっちゃうな。ずっとこのままって訳にはいかないし……。
 取り敢えず闇に向かって、声をかけてみることにした。
「すみません、どなたかいらっしゃいませんか? 誰か私の声が聞こえていますか?」
 しかし、全くもっと反応が無く、木霊さえ帰ってこない始末。
 念の為、もう一度声をかけてみたが、やはり同じく無反応であった。
 マジかいな。これヤバい感じがしてきたぞ。流石にカー〇みたいになるのは嫌なんだけど……あれ⁉
 ふと気が付くと、いつの間にか傍らに、小さな光が一つ出現していた。
 それはピンポン玉ほどの大きさで、黄色がかった発光色をしていた。
 なんだ、これは?
 その小さな光に、周りの闇が吸い込まれる様な不思議なエフェクトがかかった。そして、光はどんどん大きく膨らんでいく。
 な、なに⁉ どうなるの、これ? まさか⁉ 爆発なんてしたりしないよな? あ! でも、どうせ死んでいるみたいだから、別にいいのかな? そういう問題ではない?
 最終的に光は、人の大きさ程に大きく膨れ上がった。
 そして、光から声が発せられた。男性や女性、子供や老人などの老若男女が、幾重にも重なり合った不思議な声だ。
 その内容は、実に単刀直入である。
『汝、薄井人生うすいじんせいよ。既存世界における汝の命は尽きた』
 ああ……やっぱりそうなのか。予想していたとはいえ、改めて言われるとショックだな。
『命が尽き、肉体から解放された魂は、やがて大いなる魂に回収されて融合して一つとなり、その記憶や個性は永遠に消失する』
 大いなる魂? 融合? なんだ、それは? よく分からないけど、初期化されるみたいな感じか?
『されど汝の魂は、それらとは異なる命運を、辿ることに相成った』
 どういうこと? 何かマズい感じ? もしかして地獄に落ちちゃうとか⁉
 黄色がかった光が、強い口調で言い放つ。
『薄井人生よ! 汝の魂を、その記憶や個性を保持したまま、これまでの世界から異なる世界へ転生させ、再び生を授ける!』
 黄色がかった光の背後に、心なしか集中線が鋭く射しているように見えた。
 驚愕の展開に、思わず驚嘆の声を上げた。
「エエエェェェ――――ッ‼」
 これってもしかして、異世界転生って言われるやつ⁉ マジで~~‼
「ほ、本当の……話ですか? 異世界に転生する、ということですよね……?」
然様さようだ』
 こんなことって本当にあるんだな。マジで腰抜かすかと思っちゃったよ。死んでいるから多分抜けないと思うけど。それにしても異世界転生……異世界に行くのか……オレが⁉
 混乱しながらも、頭をフル回転させる。
 異世界転生……う~~ん……異世界……異世界転生ねぇ。
 思案の結果、ここに一つの結論が導き出された。
 黄色がかった光にどう声をかけていいかわからず、少々気後れしながらも、おずおずと片手を上げた。
 そして、尋ねる。
「あ、あの……すみません。これはもう……確定事項……なんでしょうか?」
『確定だが、如何したか?』
「いや……出来れば……転生したくないかなぁ……なんて……」
『……転生したくない?』
「ハイ……転生したくないです」
『……………………』
 暫しの沈黙の後に、黄色い光が驚きの声を上げた。
『え~~⁉ なんでぇ~~‼』
 先程までとは打って変わって、幼い女の子のような声であった。


 身の程というものは、わきまえているつもりだ。
 特に高貴な生まれでもなく平凡な家庭で育ち、頭脳も運動能力も目立つところはなく、可もなく不可もなくといった容姿に、お世辞にもあるとは言えない社交性、特に突出したセンスも無く、何処にでもいるような人間である。
 当然と言えば当然だが、その人生もどこにでも転がっているような、ありがちな人生を送ってきた。
 別段目立つことない学生時代を過ごし、そこそこの大学に一浪して入り、特にやることなく無為に卒業して、就職活動で多少心を折られながらもどうにか職にありつき、ブラッキーな職場で四苦八苦している。極々一般的な人生だ。
 そんな自分の人生は、落ちてきた鉄骨によってピリオドを打たれた。
 普通に考えれば、あまり納得出来る最期ではないし、実際納得はしていないのだが、その気持ちとは裏腹に、まあ、こんなものかなぁ、とも思った。ある意味、自分らしいと。だから、そこはいい。そこは苦いが飲み込むことにしたが、今度は全くもって予想外の、「異世界転生」という棚からぼた餅が落ちてきた。正直なところ、自分にとっては荷が重い。
 「異世界」とは、はたしてどんなところだろうか?
 往々にして予測されるのは、中世ヨーロッパのような世界観で、剣と魔法とモンスターが織りなすファンタジーな世界だ。もしかしたら、今まで生きてきた世界と、全く変わらない世界かもしれないが、流石にそれはないだろう。それに、仮にそのような異世界であったら、それはそれで嫌だ。
 では、典型的な「異世界」として、自分はそこで上手くやっていけるだろうか?
 答えは、NOだ。
 よく言われる「異世界」は冷静に見ると、生と死が隣り合う厳しい世界だ。
 情けないことを言うようだが、そんなところに自分のような人間が行っても、上手くいくはずがないし、苦労して後悔する姿が目に浮かぶ。
 何だかんだ言っても異世界で上手くやっていける奴は、元から上手く出来ている奴だ。もしくは現在の社会と、全く噛み合っていない者だろう。そうでなければ急激な変化に適応することは出来ないし、現在の生活を全て捨て去ることは出来ない。
 そういう者たちは、ほんの一握りの人間だろう。
 先にも言ったが、身の程はわきまえているつもりだ。
 これまで何かの主役になることは一度としてなかったし、なりたいとも思わなかった。幸か不幸か、なんの苦しみも無くあっさり逝けたのだから、わざわざ異世界に転生してまで、余計な苦労を重ねなくてもいいじゃないか。
 自分にとって「異世界転生」は、豚が真珠を求めて藪をつついた挙句、蛇に嚙まれて苦しみ悶える行為にしか思えない。


「という訳で、異世界に転生するのは、ご遠慮させてほしいのですが……」
 目の前にはちゃぶ台と、その上に湯飲みが二つ、それとお茶請けが置かれていた。皆、闇の中から忽然と現れた代物だ。
 ちゃぶ台を挟んで対面側には、これまた闇の中から忽然と現れた座布団の上に、黄色がかった光が浮かんでいた。
 どこからどう見ても、おかしな光景である。
 湯飲みがひとりでに浮き上がり、黄色がかった光の口と思しき所で傾くと、「ズズズ」と音がしてまた元の位置に戻った。
 黄色がかった光が、少々間延びした口調で語る。
『まあ、気持ちは分からなくもないんだけどさぁ~~。異世界もそんな悪いところじゃないよ~~』
「そう言われましても……」
 先程から異世界に転生することを、黄色がかった光に説得されていた。
 ただ、それよりも異世界に転生するしないの前に、どうしても片づけなければならない問題があった。
 意を決して、言葉を発する。
「すみません、少し質問してもよろしいでしょうか?」
 黄色がかった光が快く応じる。
『い~~よ~~』
「そもそもあなた様は、どこのどなた様なのでしょうか?」
『ボクはねぇ……「世界」だよ!』
「「世界」……ですか?」
『そう「世界」!』
 言っている意味がさっぱり分からん⁉
「それは……神様的な存在ということでしょうか?」
 黄色い光が抗議の声を上げた。
『全然違うよ~~! 「世界」は「世界」なんだよ~~!』
 そう言われてもな。おまけに何かプンスカしているし、困っちゃうな。
 突如として横から声が聞こえた。
『その説明では、到底理解することは出来ないと思いますので、私の方からお話ししましょう』
 いつの間にかちゃぶ台の横に、青白い光が存在していた。
「ウワッ⁉ ビックリした!」
 青白い光から落ち着いた男性の声が発せられる。
『おや、驚かせてしまいましたね。これは失礼』
「あ……いえ、だ……大丈夫です……」
『まずは自己紹介をさせて下さい。正式には初めましてではないのですが、一応便宜上初めましてと、言っておきましょう。私は貴方、薄井人生の立場からすると、これまで生きていた「元の世界」そのものになります』
 「元の世界」⁉ 「元の世界」か……。さっぱりわからん!
「そ……そうなんですか……」
『そして、先ほどまで話していた者は……そうですね。分かりやすく言えば、「異世界」と呼んだ方がよろしいでしょう』
「え……っと「元の世界」さんと、「異世界」さん……ですか?」
 異世界さんがブーブーと言う。
『「さん」よりも「ちゃん」付けの方がイイ~~』
 妙なこだわりがあるな。
「分かりました。「異世界ちゃん」ですね」
 異世界ちゃんが嬉しそうに返し、元の世界さんも後に続いた。
『は~~い! ヨロピコ~~!』
『こちらもよろしくお願いします』
「あ……ハイ、こちらこそよろしくお願いします」
 ヤバい……頭が全然追いついていかないんだけど。


 元の世界さんが落ち着いた口調で語る。
『理由は様々ですが、肉体に宿る魂は生きてきた過程で、大なり小なり毒素が蓄積されていきます。この毒素は世界に対して大変有害であり、様々な悪影響を及ぼします』
『悪いやッちゃで~~!』
「悪影響ですか?」
『そうですね。元の世界の場合ですと、空間に歪みが生じたり、天変地異などの障害を引き起こしたりします。異世界の場合ですと、毒素は瘴気へと変質し、瘴気は本来世界の住人ではない魔族を生み出します。魔族は全ての生命に対して、深刻な危害を加えていく者です。これらの事象は世界の理に反するものであり、世界の存在そのものを危うくさせます』
『ホント大変なんだよ~~』
「そうなんですか」
『通常、肉体を消失した魂は大いなる魂と融合され、その際に毒素を分離して隔離します。隔離した毒素は世界に悪影響を及ぼさないように、慎重に浄化させていくのですが、これにはかなりの時間を要します』
『すっごいかかるの~~』
「そういうシステムになっているのですか……ああ! つまり、蓄積されていく毒素の量が浄化していく量よりも大きくなると、そのリサイクルのバランスが崩れて、世界に深刻な悪影響を及ぼしてしまう、ということですか?」
『そういうことです。残念ながら現状としましては、その傾向が強いですね』
『まいっちゃうよね~~!』
「何か対策はないのですか?」
『実は非常に有効な手段がありまして……』
『あるんだな~~これが! 聞きたい~~?』
 なぜだろう? 非常に嫌な予感がする。
「……なんですか、それは?」
『それは……貴方です!』
『そう、君だ~~!』
「ええ⁉ ど、どういうことですか?」
『他の世界から移行された魂は、世界の毒素を浄化する機能を活性化させ、その期間を大幅に短縮する作用があります。無論、物には限度というものがありますので、数は限られますが、他の世界への転生を行っているのは、その為になります』
『凄いよね~~!』
「でも、それなら魂を移行して、異世界の大いなる魂に融合すればいいのでは? 別段向こうに転生して、再び生きていく必要はないように思えますが?」
『人の認識能力で、それを認識するのは難しいですから、知らないのも無理はありません。大いなる魂は世界の一部であり、世界そのものが大いなる魂でもあるのです。つまり、あなたがこれまで生活していたのは、ある意味、大いなる魂の中であったのです。毒素を浄化する機能を活性化させる為には、その世界で生活することが一番効果的なのですよ』
『知らなかったでしょう~~?』
「そうだったのですか……」
 思っていたよりも大きな話だぞ。それに割と切実な事情だ。う~~ん、でもなぁ、だからと言って、転生するかどうかは別の話だよなぁ。


『という訳で、異世界に転生してくれませんか?』
『転生しちゃおうよ~~?』
「……いや……あの……そちらの事情は分かりましたけど、なんと言うか……気が進まないと言うか……」
『どうしてもダメですか?』
『え~~! こんな人初めてだよ~~!』
「そうなんですか?」
『今までそういった方は居ませんでしたね』
『そうだよ~~! この前の人なんて、「ヒィ~~ハ~~! ケモ耳ウハウハ~~! エルフッ娘萌える~~!」って、ノリノリで腰を振っていたよ~~!』
「それはそれで、どうなんですか?」
『ことの是非は兎も角として、率先して行ってくれたことは確かですね』
『そういうことに、興味ないの~~?』
「いや……別に興味が無い訳では、無いでのすけど……」
 あるかないかで言えば、興味は滅茶苦茶ある。だが、いくら興味があったところで、モテなければ結局のところ意味はない。どんなに美味そうな料理でも、絵に描かれた餅は食えないのだ。そして、残念なことにオレはモテない。これまでの人生の中で、モテたことが一度として無い。特に容姿が優れているわけでもないし、話術が巧みなわけでもないのだから、モテないのも当然である。
 まあ、それだけだったらまだいい。それだけだったら……いや、良くはないのだが、良くはないが、それだけだったら百万歩譲って、まだマシな方かもしれない。
「その……自分はモテるモテないとか、そういう問題ではなくて……なんと言いますか……その……」
『なにか問題でも……? ああ! もしかして気にされているのは、以前お付き合いしていた彼女さんに、浮気されてフラれたことですか?』
『忘れ物をしてアパートに取りに帰ったら、彼女さんが超~~ハッスルして、腰を振りながら声を上げていたんだよね~~』
 鋭い矢が容赦なく突き刺さった。
「ウグゥッ‼」
『ショックから一年ほど心神喪失に苦しみ、それ以来、女性不信に陥ってしまったと』
『「浮気……? ホントあっちも器も小っちゃい男ね!」や「こっちが悪いように言わないでくれる! だってアナタが悪いんでしょ、ヘタクソでまともに満足させることも出来ないのだから!」とか、「こっちのソーセージ、スッゴ~~イ美味しいの💓 もうポークビッツじゃあ、満足できな~~い!」なんて言われて、息子タンが元気でなくなっちゃったんだよね~~』
 なにかが砕け散る音と共に、無重力状態の中、器用に膝から崩れ落ちた。
 頬を熱い物が伝わってくる。
「ウゥゥ……」
 元の世界さんと異世界ちゃんがやさしく語り掛ける。
『辛かったですね。そんな貴方でも……いや、そんな貴方だからこそ、異世界転生はふさわしいと思いませんか?』
『どうせ人生リセットしちゃうんだし~~、心機一転、嫌なこと全て忘れて、異世界に行ってみない~~?』
 砕かれた心の中で、なにかが動き出すのを感じた。
「……ふさわしい? ……リセット?」
『それに、こういうのはどうでしょうか? もし、異世界へ転生してくれるのならば、特別にモテるようにしてあげますよ』
『今回は特別に~~! 先着一名様限りの限定で、モテモテにしてやるよ~~!』
 悪魔の囁きだと思った。
 でも、天使の恩恵にも思えた。
「モテる……? 本当にそんなことが、可能なんですか……?」
『方法は兎も角として、可能か不可能で言えば、可能ですね』
『ウハウハのモテモテにしてやるよ~~! どうする~~? ハーレムでも作っちゃう~~?』
 本当にモテるのなら……正直モテたい! モテてみたい!
 ダメ押しとばかりに、元の世界さんと異世界ちゃん畳みかける。
『こう言うのもなんですが、転生先の異世界には、魅力的な女性が大勢おります』
『きれいなエルフのお姉さんや、イカしたケモ耳の獣人っ娘、と~~っても可愛らしい妖精や精霊など、より取り見取りだよ~~。美しい女騎士さんに「クッ……殺せ……」なんてことを、言わせたりすることも出来ちゃうんだから~~』
「マジですか……」
 “クッ殺”はちょっとモテるのと方向が違う気がするけど。でも、やらせてはみたいかも……。それは兎も角として、これは本当に良い話じゃないか。異世界には魅力的な女性がいっぱいて、そういう人たちにモテモテになるなんて楽しすぎる。まあ、ある意味よくある異世界物の、典型的な展開とも言えなくもないけど……んん⁇ 典型的……⁉


「あの……確かに心惹かれるお話ですけど、その前に確認したいことがあるのですが……」
『なんでしょうか?』
『にゃ~~に~~?』
「先程のお話からですと、異世界には生物に危害を加える、危険な魔物が存在しているわけですよね? しかも、それは毒素の浄化リサイクルの影響で、現在は増加傾向にあると」
『不本意ながらそうですね』
『残念だけど、そうだよ~~』
「恐らくですが、魔物以外にもモンスターや、ならず者など厄介な者も身近に存在しているのではないでしょうか? しかも、それらに上手く対処しなければ、日常生活をまともに送ることが出来ない……?」
『確かにそういった者たちは存在していますし、それに対処する必要性はありますね』
『でも~~、デンジャラスでエキサイティングな、退屈しない毎日を送れるよ~~』
 やっぱりそうか。異世界=剣と魔法とモンスターの世界というのは、この手の話の定番だよな。でも、そうすると困っちゃうな。
「退屈はしないかもしれないですが、自分ではそんなもの対処が出来ないですよ。格闘技や武道とかって体育の授業ぐらいでしかやったことないですし、運動神経もそこそこって感じで、正直、腕っぷしには全く自信がないです。そんなんで魔物やモンスターなどの危険な生物が蔓延る世界で、普通に生活して暮らしていけるとは、到底思えないのですが……」
『まあ、普通に暮らしていけるとは、言いづらいところではありますね』
『楽しんで暮らしていくには、ある程度の強さが必要だよね~~』
 無理だな。オレにその強さが無いのだから、魔物やモンスターと戦うマッチョな生き方は出来そうもない。って言うか、したくないし。
 確かにモテモテになる話は魅力的だが、まともに暮らしていけない状況では、満足に楽しむことなんて出来ないだろう。
「そうですよね……。やっぱりこのお話は遠慮させてください」
『お断りになると?』
『ええ~~! モテモテだよ、モテモテ~~。美人さんがお待ちかねなのに、あきらめちゃうの~~?』
「いや、モテても強くなきゃ、普通に生活が出来もないのはちょっと……」
『……そうですね。それなら望み通りの強さにするとしたら、どうでしょうか?』
『もう~~特別の特別だからね~~!』
「望み通りの強さにする……? と言いますと?」
『文字通りそのままの意味になります』
『お望みのマッスル、マッスルにしてやるよ~~!』
 望み通りに……そんなこと出来るの? でも、それなら……。
「え……と、例えば北斗〇拳のマスタークラスにしてくれますか?」
 異世界ちゃんが嬉々として反応した。
『アタタタタタタタタ――ッ! フゥアタァ――ッ!』
 元の世界さんが冷静に答える。
『それは大人の事情によりダメです』
「真〇流でもいいですけど……」
『熱風KI〇S面白いよね~~!』
『先と同様の理由でダメですね』
 う~~ん、無理か。でしたら……。
「それじゃあ、異世界ですし、オーラ〇トラーが使えるようになるとかは?」
『必殺のオー〇斬りだァァ――!』
『世界観から逸脱しますし、当然、大人の事情も絡むのでダメです』
「ウィ〇ードでもいいですけど、ダメですかね……?」
『シー〇エンス パ〇ディウムとは、シブいところ突くね~~!』
『もちろんダメですね』
 ファンタジーな感じだから、ワンチャンイケるかもって思ったけどダメか。じゃあ、ちょっと違う方向で……。
「メガ〇マッシャーカッコイイし、ガ〇バー好きなんですけど、そっちなら……?」
『まるでビックバンの小型版ミニチュアだ……』
『ハイ、ダメです』
「ならば潔くいっそのこと、特撮ヒーローの誰かになれるとかは……?」
『へんし~~ん! トゥ~~!』
『ダメに決まっているでしょうが』
「……望むものみんなダメなんですけど」 
『具体的な固有名詞を提示して、そのままこれにしてくださいってのは困るのですよ。ちょっとアプローチを変えて欲しいですね』
『言いたいことはわかるけど、そこはかとなく上手くぼかして欲しいな~~。大人だったら事情を察して、大人の事情が発動されないように、玉虫色に答えて~~』
 う~~ん、厄介だな、大人の事情は。基本的に魔物やモンスターを倒せて、過酷な環境でも楽に暮らせていけるようになれればいいのだけど……。それで言うと、方向性は悪くはないと思うけどな。
「あ~~……こう言うことですかね。ラ〇ウのように圧倒的で、特撮ヒーローのようにバリエーションに富み、ガ〇バーさながら過酷な環境でもものともしない強さが欲しいです」
『それなら問題ないでしょう』
『まかしといて~~!』
 あ、それでイケるんだ。
「じゃあ、それでお願いします」
『これで異世界への不安は解決したでしょう』
無問題モーマンタイだね~~』
 異世界に危険が待ち構えているのは、この際目をつぶるとして、対処できるようになるのだから、普通に生活していくのは困らないだろう。取り敢えず問題なしってことで……いや、待てよ……。


「あの……もう一つ確認してもいいですか?」
 光なので表情は全く分からないが、元の世界さんと異世界ちゃんの言葉には、どこかウンザリした調子があった。
『まだ、何かありますか?』
『今度はなに~~?』
「その異世界って、この手のものでよくある、中世ヨーロッパのような世界になりますか?」
『厳密にいうと違うのですが、概ねその認識で問題ないでしょう』
『大体そんな感じ~~』
「唐突ですけど……ウォシュレットってありますか? 後エアコンも……」
『ありませんね。一般的な家電製品は、無いものだと思ってください』
『ありゃしませんがな~~』
「車やバイク……と言いますか、移動手段は……?」
『基本的には徒歩になります。それ以外ですと、馬や牛と言ったところですかね』
『ガンバレばモンスターを手なずけて、乗ったりすることも出来るよ~~』
「マンガやゲーム、ネットは……?」
『無いですね。家電製品が無い時点で、推し量るべきでしょう』
『あたしゃも欲しいよ~~』
「煙草が購入できるコンビニ的なもの……それ以前に、煙草ってありますか?」
『コンビニは流石にありませんが、煙草自体は存在します』
『刻み煙草があるよ~~。手巻きにしたり、パイプで嗜む感じ~~』
 まあ、そうだよな。現代日本とは違う世界なのだから、これも当然か。
「えぇ……と、やっぱりこのお話は無しにしてくれませんか?」
『どうしてですか?』
『どゆこと~~?』
「真面目な話、先程言った物が無いのは、かなりツライです。現代日本ってなんでもあって、何不自由なく暮らせるじゃないですか。お国柄、便利な家電製品は豊富にありますし、インフラやライフラインが整備されていて、交通手段や流通網もしっかりしています。当然のように色々なサービスもどこでも受けれますし、コンビニなんて基本どこに行ってもありますからね。そういったものの恩恵に、骨の髄まで侵されている者としては、実際に異世界で生活していくことを考えると、結構切実な問題でして……」 
『そういうものですか?』
『この軟弱者め~~!』
「いや~~でも、便利な生活って一度慣れてしまうと、後戻り出来ないじゃないですか? 実際、職場や自宅関係なく、常日頃エアコンの整った部屋で暮らしていますし、移動も電車や車が身近にありますから、あんまり歩くこともありません。休みの日はネットやゲームにマンガ三昧で、お腹が減れば食べ物だってコンビニやファミレス、最近ではアプリで簡単に出前が取れますからね。文明の恩恵? と言いますか、それらを手放すことは簡単じゃないですよ。それと煙草が手軽に吸えないのは、地味にツライです。喫煙者の悲しい業ですが……」
『随分と文明の恩恵にあやかっている、と言いますか、怠惰と自堕落に浸りきっているように感じますね』
『ダメな奴め~~! だからフラれるんだよ~~!』
 また、ハートに矢が突き刺さったが、どうにか堪える。
「ウグゥ……でも、今の日本人ってこんなもんですよ」
 絶対に違うと思うけど、ここはそう言い張っておこう。
『納得出来ないところは多々ありますが、仕方ないですね。ここは一考せざる得ないでしょう。分かりました。その件については、出来るだけ善処しましょう』
『しょうがねぇな~~! 調子コクのもこれが最後だからな~~!』
「マジですか!」
 まさか通るとは思わなかったな。何事も言ってみるもんだ。しかし、それはそれで疑問が……。
「でも、どうやって……? 自分が言うのもなんですけど」
『流石にネットやゲームにマンガなんてものは無理ですが、要するに、現代日本と近いような形で、日常生活を送ることが出来ればいいのですよね?』
『特別に異世界式で合わせてやるよ~~! あくまでも異世界式だからな~~!』
 異世界式? 異世界式ってどうなんだろう……? ちょっと引っかかるけど、まあ、いいや。いくら何でも悪いようにはならないだろう。それに、ネットなどは兎も角として、ここまでわがままを聞いてもらって断ったら、元の世界さんと異世界ちゃん二人ともブチ切れてしまいそうだ。
「ありがとうございます。それで大丈夫だと思います。しかし、それにしても随分と太っ腹ですよね? 自分が言うのもなんでけど、ここまでしてくれるのは、何故でしょう……?」
 もしかして何か裏があったりする? 煽てと畚に乗っちゃて、酷い目に合うパターン?
『そちらに事情があるように、こちらにも事情があるのですよ。異世界に無理やり行かせることも可能ですが、その場合かえって毒素が溜まりやすくなってしまいます。それでは本末転倒ですからね。なるべく当人が望むように促しているのです』
『気持ち良く行ってもらいたいよね~~』
 ふむ……あまり裏は無さそうな感じだな。じゃあ、いっか。
「なるほど、そういうことなんですか」
『まあ、もっとも今まで断った人はいませんでしたので、物珍しさも手伝っての行いではあります』
『みんな「生き返るなら!」って、喜んで転生していったよ~~!』
 オレのような考え方は、少数派って訳か。ちょっと意外だな。みんな強気だね。
「まあ、普通はそうかもしれませんね」
『念の為の最終確認ですが、もう他にはないですよね?』
『ファイナルアンサ~~?』
 色々と我がまま言い出して、要求を呑んでもらった手前、もう後には引けない。
「えぇっと、ハイ、ファイナルアンサーです。よろしくお願いします」
『それでは異世界ちゃん、宣言を……』
 異世界ちゃんが強く煌めき、高らかに声を張り上げた。
『修行の始まりだ――――ッ‼』
「……ハイ?」
 異世界ちゃんの唐突な言葉に、目を丸くするしかなかった。
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