ごーいんぐ魔人うぇい~魔人に転生しての気ままに我儘な異世界ライフ~

伊達メガネ

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第二章

急に修行と言われても、しかし、スキルってよくよく考えると凄いよな。

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 突如として足元に土の地面が現れた。
 浮遊感が一気に無くなり、重力が体を抑えつける。
「お……⁉」
 元の世界さんから小さな光が出てきて、自分の中に入って来た。
 すると、スーツ姿だった恰好が、一瞬にして道着に変わった。
 今度は異世界ちゃんから小さな光が抜け落ちて、どんどんと膨らみ始める。
 小さな光は人の大きさほどまで膨れ上がると、光が弾けて中身が姿を現した。
 自分と同じぐらいの身長に黒光りする体色、円筒の胴体から顔の無い丸い頭を突き出し、円筒と球体で構成された四肢が生えていた。
「マネキン……?」
 元の世界さんと異世界ちゃんが言葉を発する。
『こちらの方は「鉄人君てつじんくん」と言います。これから色々とお手伝いしてもらいますので、仲良くしてやって下さい』
『「鉄人君」って名前だけど、材質は鉄じゃないんだよ~~』
 鉄人君は声を発しなかったが、恭しくお辞儀をした。
 仲良くしてくださいか……。あまり人のことは言えないけど、コミュニケーション能力は低そうだな。それ以前に口が見当たらないから、しゃべれるような感じがしないけど。それにしても名前といい形といい、何か既視感があるな。
「あ、どうも、よろしくお願いします。因みにですが、材質は何でできているのですか?」
『うふふ、秘密だよ~~』
 秘密なんだ。木製だったらアレかな? って思ったけど。
『それでは鉄人君と、一分間のスパーリングをしてもらいます。異世界ちゃん合図をよろしく!』
『カ~~ン!』
「って、いきなり⁉ ちょちょっと待ってください! まだ、心の準備が――」
 だが、無情にも鉄人君は、こちらがセリフを言い終える前に動いた。
 鉄人君はダッシュで一気に間を詰めると、その勢いを乗せて右のボディストレートを放った。
「ウグゥ‼」
 腹部にこれまで経験したことのない痛みが走った。
 鉄人君は更に、痛みに耐えかねて崩れ落ちるオレの頭を捕まえると、追撃の膝蹴りをかち上げる。
「ガァ‼」
 目から火花が飛び出し、一瞬にして意識はどこかに飛んでいった。
 そして、倒れ込んだオレに、鉄人君はマウントポジションから容赦のないパンチの嵐を放っていく。
 意識が飛んでいるおかげで、さながらマネキン状態のやられたい放題だ。
『それまで、それまで――ッ!』
『カンカンカ~~ン!』
 意識が途切れ途切れで混濁する最中、スパーリングを終える声が微かに聞こえてきた。


 元の世界さんと異世界ちゃんが、呆れた口調で言い放つ。
『ダメダメですね』
『ダメダメだね~~』
 あまりにも理不尽な仕打ちに、怒りから声を荒げて立ち上がった。
「そりゃそうでしょ‼ いきなりこんなこと‼ こっちはスパーリングなんてやったことないですし、そもそもまともにケンカすらやったことないですよ‼」
『おや、初体験でしたか』
『良かったね~~。新しい体験が出来て~~』
「そう言うことじゃないでしょ! こんなボコボコにされて、良いことなんてある訳ないじゃないですか!」
『体に痛みはありますか?』
『どっか痛い~~?』
 そう言われて気が付いた。
 あれだけボコボコにされたのに、今は体に痛みが全く無かった。
「あれ……⁉ なんで?」
『ダメージ効果があるのは、スパーリング中のみになりまので、ご安心ください』
『スパーリングが終わると、ケア〇ガやア〇イズかける感じだよ~~』
「ア〇イズかけられる容体だったらダメでしょ! ア〇イズかけられる状態だったら! いや、それ以前にいきなり修行って、そもそもなんですか!」
『修行は修行ですね』
『修行は修行だよ~~』
「すみません、全く意味が分からないです! 自分にもわかるように説明してくれませんか!」
『異世界へ転生する条件としてお約束しました、「ラ〇ウのように圧倒的で、特撮ヒーローのようにバリエーションに富み、ガ〇バーさながら過酷な環境でもものともしない強さ」を実現する為に、これから様々な力を貴方に授けます』
『でも~~、せっかく力を与えても、上手く使えなかったら意味ないでしょ~~? その為の修行だよ~~』
 予想外にまともな内容が返ってきたな。
「なるほど……。その為の修行だと。でも、ド素人がいきなりスパーリングから始めて、効果あるのですか?」
『無いと思いますね』
『無いでしょ~~』
「無いのかいっ!」
『遊びでヤラせてみましたけれど、想像以上にダメでしたね』
『ホント~~、ビックリするぐらいダメダメだね~~』
「オイ! 遊びってなんだよ! ちょっと責任者出て来いよ!」
『まあまあ、落ち着いてください。そんなダメダメな貴方のことを思って、ちゃんと対策を用意してあります』
『うふふ~~、知りたい~~?』
「……知りたいような知りたくないような。取り敢えずなんですか? その対策って」
 異世界ちゃんがドヤ顔で言い放った。基本、光なので表情は全く分からないが、何故かそう感じた。
『今こそダメダメな君に授けよう~~! 無敵の「異世界殺法」を~~!』
「いっ「異世界殺法」……?」
 なんだ、そのネーミングは……。
 しかし、思っていたけど口には出せなかったセリフを、元の世界さんがあっさりと吐いた。
『恐らく、今適当に思い付きで付けた名称だと思われますが、それを加味しても、正直ダサいですね』
 異世界ちゃんがブーブーと声を上げる。
『ダサい言うな~~!』
 ダサいな。自己紹介の時に言いたくないな。
「ダサいかどうかは兎も角として、その「異世界殺法」というものは?」
 無敵って言うぐらいだからな。ちょっと気になる。
『それじゃあ、ご期待に応えまして~~と、その前にホイっと~~!』
 異世界ちゃんが強く煌めいた。
 急に強い力で体全体を抑えつけられる。
「おっも……⁉」
 まるで体中に重りを着けられて、水の中にいるような抵抗を感じる。
「こ、これは……?」
『重力をちょっと上げたの~~』
「重力を⁉ 上げる⁉」
 そんなことが出来るのか! なんだかんだ言ってもスゲェな。こんなんだけど。
「……それで、何故に重力を上げる必要が?」
『修行のためだよ~~。重いもの着けたりするでしょ~~』
「亀〇人の甲羅的な……? まあ、修行の定番と言えば定番ですけど」
『そだよ~~』
 元の世界さんがしれっと口を挟む。
『最も現在は肉体が消失しているので、魂だけの状態になります。肉体が無い訳ですから当然ですが、筋力も増えることは一切ありません。つまり、重力で負荷をかける意味は、一切無いことになります』
「無いのかい! じゃあなんの為に?」
『雰囲気だよ~、雰囲気~~』
「雰囲気の為なのっ⁉」
『雰囲気も盛り上がってきたことですし、それでは始めるとしましょうか。異世界ちゃんよろしくお願いします』
「いや、そこスルーされても困るんですけど!」
『応よ~~! 張り切って行こぜ~~! 正拳突き千本、始め~~~~ッ‼』
「……はい? いきなり何を言っているのですか? そんな正拳突きを千本も、出来るわけないじゃないですか。無理ですよ!」
『やる前から出来ないと、言う奴がいるか~~! やってみなきゃわからないだろうが~~!』
「いや、わかりますよ。こっちはダメダメなんですから!」
『先ほども言いましたが、現在は魂だけの状態になります。肉体が無いですから、乳酸が溜まるなど疲労が蓄積されることはありません。時間さえかければ、ダメダメな貴方でも簡単に出来る筈です』
「……それでやる意味あるんですか?」
『魂だよ~~! 魂に技を刻み込むのだよ~~!』
「マジで言っている意味わからないですけど!」
 イマイチ納得は出来なかったが、どうにも埒が明かないので、仕方なく異世界ちゃんの要求通りに、正拳突きを千本行うことにした。
 しかも、その後に正拳突きだけではなく、追加で空手やプロレス、柔道などの色々な技や型を、繰り返し何回もやらされ、最終的には鉄人君と寝技や、関節技サブミッションの乱取り稽古までやらされた。
 全てを終えるのにかなりの時間を要したが、元の世界さんの言う通り疲労は一切感じることが無かったし、鉄人君が見本を見せてくれたり、色々とサポートしてくれたおかげで、予想外に割と難なく最後までこなすことが出来た。
 ただ、結局のところ「異世界殺法」が具体的になんなのかは、さっぱり分からなかった。
 まあ、特にわからなくても、別段困ることは無いような気がするが……。


 鉄人君が勢いよく突き出した右拳を、半歩後退してヒットポイントをずらしながら片手で捌いた。
 慣性に押し出され、鉄人君の体勢が勢い余って流れる。
 この隙に、鉄人君の胴体に、右の中段回し蹴りを打ち込んだ。
「ハァッ!」
 重い感触が蹴り足に伝わってきた。
 鉄人君はそれをものともせずに、振り回すように右フックを放ってきた。
 即座に身をかがめて躱すと、今度は返しの左フックが襲ってきた。
 だが、これも後ろに下がりながら上体を逸らして躱した。
 鉄人君が更に追撃をかけようとする動きを見せる。
 このまま強引に押し切られるのは、ちょっとマズイな。ここは思い切って――。
 鉄人君の出足を止める為に、押し込むように前蹴りを腹部に打ち込んだ。
「フンッ!」
 それでも鉄人君は強引に前に出て、右拳を振りまわした。
 上体を後ろに逸らして右拳躱すと、間髪入れずに間を詰めて、カウンター気味に右の正拳突きを、鉄人君の顔面に打ち込んだ。
「ウラァッ!」
 しかし、鉄人君はダメージどころか全く怯みもせずに、すぐさま左の拳を振り回してきた。
「オワァッ!」
 慌てて身をかがめて、それを避ける。
 追撃を警戒して後ろに下がり、鉄人君との距離を大きく取っていく。
 マジかよ、ちょっとは怯んだりしろよ。これどうしようかな……。
 有効な攻撃が思いつかずに攻めあぐね、鉄人君と一定の距離を保ち続ける。
 場が硬直し、時間だけが流れていった。
 そして、元の世界さんと異世界ちゃんの声が聞こえてきた。
『ハイ、それまで――ッ!』
『カンカンカ~~ン!』
 緊張から解放されて、気持ちが落ち着いていく。
「ふぅぅ……」
 最初はぼろ雑巾のようにされた鉄人君とのスパーリングも、何回か繰り返していくうちに段々と様になってきた。
 ただ、正直に言えば、この結果は元の世界さんと異世界ちゃんに無茶ブリされて行った、形稽古などの影響が大きいだろう。あれだけ何千回もやらされれば、流石に否が応でも体に染みついて、思い通りに体を動かすことが出来る。後は、スパーリングに慣れるだけだ。
 ……認めたくないものだな。元の世界さんと異世界ちゃんあの二人のおかげだということは。
『大分、上手くなってきましたね』
『イイ感じだよ~~』
「ええ、どうにかってところではありますけど……」
『では、スパーリングは、ここでいったん一区切りにしましょう』
『ホイじゃあ、次行こう~~、次~~』
「……次?」
 元の世界さんと異世界ちゃんが強く煌めくと、一瞬にして周りの情景が切り替わった。
 空には太陽が燃え上がり、足元の土が砂へと変わると、地平線まで続く広大な砂丘が現れた。
 周りには強く砂塵が吹いていたが、強い日差しで気温が一気に上がり、体中から汗が垂れ流れ始めた。
「……ここは?」
『砂漠ですね』
『砂漠だよ~~』
「それは見ればわかりますけど、何故に……?」
『こちらをご覧ください』
 いつの間にか元の世界さんの目の前に、消しゴムぐらいの大きさをした、輝く鉱石のような物が幾つも浮かんでいた。
『これはダイヤモンドになります』
「ハァ……?」
『こっちも見て~~』
 異世界ちゃんの目の前にも、似たような輝く鉱石のような物が幾つも浮かんでいた。
『こっちはレプリカだよ~~』
 パッと見、ダイヤモンドとレプリカの区別は全くつかなかった。
「……それがどうかしたんですか?」
『ダイヤモンドとレプリカは、共に各々十個あります』
『それじゃあ、鉄人君よろしくメ〇ドック~~』
 鉄人君は浮かんでいるダイヤモンドと、レプリカを無造作に掴まえると、腕を振って手の中で混ぜ合わせた。そして、トルネード投法よろしく体を大きく捻ると、力いっぱいに放り投げる。
 鉄人君の持前の腕力に加え、強く吹き荒れる砂塵の影響も受けて、ダイヤモンドとレプリカは砂漠の彼方へ消えていった。
 何ともシュールな光景である。
「え……と?」
『それでは、始めましょうか』
『ホイよ~~! 「二度とはやりたくないけど、一度くらいはやってみたい。砂漠の中でダイナマイトをパリイしてからの~~、ダイヤモンド探し――!」の始まりだ~~!』
「はぃぃぃ――――――ッ⁇」
『今、鉄人君が放り投げたダイヤモンドとレプリカを、この砂漠の中からダイヤモンドのみ拾い集めてきてください』
『因みに、レプリカは強力なダイナマイトになっているから気を付けてね~~。間違えて拾っちゃうと、一瞬で木っ端微塵になっちゃうよ~~』
「なんだとぅ――――――っ⁉」


 ――二時間後。
「暑い……しんどい……」
 灼熱の砂漠を、汗まみれになって歩いていた。
 砂塵吹き荒れる中、ダイヤモンドを彷徨い探したが、一粒として見つからない。
 そもそも広大な砂の中から、小さなダイヤモンドを探すこと自体ハードモードだ。
 オマケに灼熱の暑さと吹き付ける砂塵に加え、行く手を阻む砂丘が容赦なく体力と気力を奪っていく。更に、どこかで休憩しようにも、砂漠の中では満足に休める様な場所は皆無だ。
 無理だぜ……ダイヤモンドどころか、レプリカのダイナマイトの影さえ見てねぇよ……。もう無理……もう無理だ、ヨシ! ギブアップしよう。
 暑さで意識が朦朧としながらも硬く決断を下すと、踵を返した。
 ……あれ⁉ オレどっから来たっけ?
 周りは砂ばかりで目印になるようなものは無く、砂塵が吹き荒れているおかげで、自分の足跡さえもよくわからなくなっていた。
 ……これってもしかして遭難してないか? いや、マジ⁉ こういう場合はどうなるの?
 血相を変えて周りを見渡していると、視界の端に小さな光が反射した。
 んん⁉ あれは!
 近づいて確認すると、砂の上にキラリと光る物があった。
 これは……ダイヤモンドか!
 勇んで光る物を摘まもうとした瞬間、異世界ちゃんの言葉が頭をかすめた。

『因みに、レプリカは強力なダイナマイトになっているから気を付けてね~~。間違えて拾っちゃうと、一瞬で木っ端微塵になっちゃうよ~~』

 これは……どっちだ?
 残念ながら宝石についてなんの知識も経験も無い自分に、ダイヤモンドとレプリカを見分けることなんて出来ない。
 頭の中に何故か井上〇水の曲が流れる中、必死に考えた。
 う~~ん、どうしよう? マジわかんねぇ。もしレプリカ、ダイナマイトなら木っ端みじんになるんだよな。木っ端みじんになるのは勘弁してくれ。どうしようかなぁ……。
 散々迷ったオレの答えは――。
 砂の上にある光る物を、おもむろに指で摘まんだ。
 その瞬間、体に凄まじい衝撃を感じた。
 気が付いたら、元の世界さんと異世界ちゃんが目の前に見えた。
『お帰りなさい』
『お帰り~~』
「…………………………」


 開口一番、断固たる決意で宣言した。
「ギブアップします!」
『オヤ、もう諦めてしまうのですか?』
『諦めたらそこで試合終了だよ~~』
「いや、そう言うのもういいですから、兎に角ギブアップします!」
『それは困りますね』
『ええ~~! それはダメだよ~~!』
「そう言われても、無理なものは無理なんです! 砂漠の中からダイヤモンドを探すなんて、自分には出来っこありません!」
『仕方ないですね。予定より少々早いですが、貴方に「スキル」を授けましょう』
『スキルキルキルスキルキル~~!』
 なんだ、その妙チクリンな歌は?
「「スキル」……ですか?」
 元の世界さんから小さな光が出てきて、自分の体の中に入った。
 その瞬間、体が一瞬、強く煌めいた。
「なに⁉」
『今、貴方に「スキル」を授けました』
『付けたのは「マップ」「鑑定」「サーチ」の三つだよ~~』
「「スキル」……。その「スキル」ってのは、ゲームや異世界物でよく出てくる定番のアレですか?」
『その認識で問題ないです』
『萌えてくるでしょ~~!』
 ちょっと不本意だけど萌えるかも。
『あの、先程「スキル」を授けたっておっしゃってましたけど、それじゃあもう使うことが出来る訳ですか? もしそうならどうやって……?」
『まずはスキルを疑いなく認識して、明確にイメージすることです』
『我思う故に我在り、だね~~』
 異世界ちゃんが言っていることは、ちょっと違う気がするけど。う~~ん、認識? イメージ?
「えぇ……と、それは……」
『そんなに難しく考えなくても大丈夫です。対象の「スキル」の後に「ONオン」を付けて声に出してください』
『慣れてくれば、意識するだけで使えるようになってくるよ~~』
「それじゃあ……「マップ……ON」?」
 目の前にA3サイズほどのウインドウが現れた。
「おお⁉」
 ウインドウには周りのマップと思われるものが表示されていたが、一部はグレーアウトになっていた。
『「マップ」に表示されるのは、一度足を踏み入れた地になります。全く未踏の地は表示されません』
『ウインドウは基本的に、他の人は見えないの~~。ピンチやスワイプしてサイズを調整してね~~』
「なるほど。グレーアウトになっている部分は、未踏の地ってことですね」
『「鑑定」のスキルは、まあ、よくあるものではありますから、特に説明も必要ないでしょう』
『これを鑑定してみて~~』
 異世界ちゃんの前に、二つの小さな鉱石が浮かんでいた。
「わかりました。鑑定ON」
 目の前に小さなウインドウが現れた。 

 ダイヤモンド:希少価値の高い、無色透明の硬い鉱石。

「えっと、これはダイヤモンドですね。もう一つも鑑定ON」

 ダイナマイト:小さな見た目に反して、10階建てのビルを、一瞬で跡形無く消し去るほどの威力を持つ高性能爆弾。

「ちょっとオーバーキルじゃないですかね!」
『苦しまないように配慮した結果ですけどね』
『中途半端な威力だと~~、死にきれずに痛い思いしちゃうよ~~。そっちの方が趣味~~?』
「そんな趣味はないです! そもそもダイナマイトじゃなくても、いいんじゃないですか!」
 こちらの質問など無かったかのように、元の世界さんと異世界ちゃんは話を続ける。
『「サーチ」は探査スキルになりまして、任意のものを瞬時に探し出すことが出来ます』
『鑑定したものなどをイメージして使うと~~、マップに表示されるよ~~』
「……イメージ? まあい、取り敢えずこう言うことかな……」
 先程のダイヤモンドと、ダイナマイトを頭に浮かべ、「サーチ」のスキルを使用した。
「サーチON」
 マップの中に黄色い光点が幾つも現れた。それと同時に赤く点滅するドクロマークも。
「黄色い光点はダイヤモンドですよね。ドクロマークはダイナマイトですか……?」
『そうなります』
『当たり~~!』
「……嫌な表示ですね。まあ、色々と言いたいことはありますけれど、これらの「スキル」を使えば、確かに、ダイヤモンドのみを探し出すことが出来そうですね」
『そうでしょう』
『それじゃあ、レッツリトラ~~イ!』


 授けてもらったスキルのおかげで、ダイヤモンドの探索はこれまでと比べると大分楽になった。
 確かに、探索は楽になったのだが、根本的な困難は変わらない。
「暑い……暑いよ……」
 依然として灼熱の暑さと吹き付ける砂塵、足を取られる砂丘に体力と気力を擦り減らした。
 マジしんどいなぁ……。
 それでも、どうにかダイヤモンドを、全て探し出すことが出来た。
 前回が一つもダイヤモンドを、探し出すことが出来なかったことを考えれば、スキルの恩恵はかなり大きいだろう。
 ただ、思いの外、広範囲に散らばっていたので、三時間ほどかかったけど……。
 疲労に色づいた声で報告を上げる。
「……これで、どうですか……?」
『確かに、全部集まっていますね』
『ご苦労~~、ご苦労~~』
 鉄人君が探し集めてきたダイヤモンドを、無造作に受け取ると、当然のように大きく振りかぶった。
「へっ……⁉」 
 そして、鉄人君はまたしても、砂漠に向かってトルネード投法を繰り出した。
 あっという間に、砂漠の彼方に消えていくダイヤモンド。
 脳が目の前の出来事を理解出来ず、それをただ呆然と見ていた。
『では、もう一度お願いします』
『ワンモァチャ~~ンス!』
「何がチャンスなのォォォ――――――ッ⁉」
 …………………………
 …………………………
 ――二時間後。
「ハァ……ハァ……集めて……きましたよ……」
『思っていたよりも早かったですね』
『ヤルではないか~~!』
「もう……ハァ……「ワンモァチャ~~ンス!」って言っても……ハァ……絶対にやりませんからね!」
『心配しなくても大丈夫です。これは今回で終わりです』
『それじゃあ、次いってみよう~~!』
「今回は⁉ 次~~⁉」
 元の世界さんと異世界ちゃんが強く煌めくと、元いた空間にまた戻ってきた。
 そして、目の前に光が出現し、一瞬にして机に変わる。
 その机の上には、ピストルのような物が一丁ポツンと置かれていた。
『こちらは「魔光まこうブラスター」と言います』
『手に取るがよいぞ~~!』
 想定外の展開に若干面喰いながらも、言われるがままに魔光ブラスターを手に取った。その瞬間、主であることを認めるかのように、独特な電子音が短く鳴り、バレルの中央付近が点線状に光った。
「おお……!」
 ズシリとくる重量感には、妙な高級感を感じる。
 魔光ブラスターはリボルバー式の拳銃に、分厚く少し長いバレルを覆いかぶせたようなフォルムで、トリガーガードの前面に円筒のレンズのようなものと、本体上部に四角いスコープ、握りやすそうな手形に窪んだハンドグリップが付いていた。
 銃のことはあんまりよく分からないけど、近未来のピストルって感じでカッコイイなぁ。
『魔光ブラスターの使い方の前に、まずは掌に意識を集中させて、「格納」と唱えてください』
『ホラホラ、やってみて~~』
 なんだそれは? ヤレと言われればヤルけど……。
「わかりました。それじゃあ……」
 掌に意識を集中させるって、こんな感じかな。それで――。
「格納」
 手に持っていた魔光ブラスターが、一瞬にして消えて無くなった。
「ええっ⁉ どうなったの?」
 こちらの驚きようなどお構いなしに、元の世界さんと異世界ちゃんが話を続ける。
『今度は同じように掌に意識を集中させて、「展開」と唱えて下さい』
『どうなっちゃうのだろうね~~!』
 同じように……、それじゃあ――。
「展開」
 今度は右の掌に、一瞬にして魔光ブラスターが出現した。
「おお!」
 何かよくわからないけど凄いな! これは魔法的なものなのか?
『その魔光ブラスターは自身のMPマジックポイントを、閃光として放つことが出来ます。つまりMPがある限りは、幾らでも撃てるということです』
『閃光ってレーザみたいな感じだよ~~。カッコイイでしょ~~!』
 MPを消費するのは、如何にも異世界って感じだな。レーザってのは、如何にもSFって感じだけども……。アレか、特撮ヒーローみたいにしてくれって言ったからかな?
「ええ! 確かにカッコイイです!」
 まだ魔光ブラスターを一度も撃ってもないのに、説明だけで舞い上がっていた。
『魔光ブラスターは基本的にオートマチックになっていて、引き金を引くだけで撃つことが出来ます。それと、ハンマーを起こすことで、溜め撃ちすることも出来まして、エネルギーのチャージ具合は、バレルに光る点線で表示されます』
『更に、もう一つ機能が付いていて~~、側面のスイッチでフラッシュバンモード切り替えることで、目くらまし効果のある、閃光弾を撃つことも出来るよ~~』
「へ~そうなんですね」
 側面のスイッチって、コレかな? 閃光弾って特殊部隊とかが突入の際に使っている、強烈な光を放つアレだよな。
 適当に魔光ブラスターをガチャガチャと動かしてみる。不思議と使い込んでいたかのように手に馴染む感じがあった。
『元々武道や格闘技の経験が無いですからね。こういう武器の方が馴染みやすいでしょう』
『ちゃんと考えているでしょ~~』
「ええ、本当に助かります!」
 そうだよなぁ。剣とかで直接斬ったり斬られたりなんて、正直怖くて出来ないよ。これなら離れて戦えるし、精神衛生上の負担も少ない気がする。
『それでは、実際に撃ってみるとしましょう』
『レッツトラ~~イ!』


 三十メートルほど先に、映画やドラマなどで見ることがある、円が幾重にも描かれた射撃の的があった。
 魔光ブラスターを両手で握り、射撃の的に向けて構えた。
 スコープを覗き、しっかりと狙いを定めると、引き金を引いた。
 銃口から目にもとまらぬ速さで閃光が飛び出し、狙い通り射撃の的を、正確に撃ち抜いた。
 自分でも予想以上の結果に、驚きの声を上げた。
「お、当たった!」
『お見事です』
『ヤルじゃないか~~!』
 元の世界さんと異世界ちゃんからの称賛の声に気を良くしながらも、慎重に狙いを定め、射撃の的に閃光を撃ちこんでいく。
 一通り撃ちこんだ結果は、ほぼ狙い通りの場所に閃光は着弾していた。
 上々の出来だな。嬉しい誤算なんだけど、これは自分の力じゃないな。魔光ブラスターの性能のおかげだろう。ピストルこういう事あまりよくわからないけど、閃光だから一直線に飛ぶし、撃った反動も無いからよく当たるのだと思う。ただ、少し引き金が固い感じがするんだよなぁ。他がわかんないから比べようが無いのだけど、誤射とかの防止の為かもしれないな。
 今度は溜め撃ちを試してみることにした。
 魔光ブラスターのハンマーを起こすと、独特な電子音が鳴って、銃口からバレルの中央付近に点線状の明かりが灯り出した。
 点線状の明かりコレがチャージ具合を表していて、全部光ったらフルなったってことか。
 バレルに全ての点線状の明かりが、全て灯ったのを確認すると、魔光ブラスターの引き金を引いた。
 銃口から野太い閃光が発射され、射撃の的の大部分を貫き、吹き飛ばした。
『おお――! スゲェー!」
 これ滅茶苦茶カッコイイ! R-T〇PEみたいでスゲェーイイよ! ちょっと溜める時間は長い気がするけど、カッコイイから全然オーケー!
『大分慣れてきましたね。試し撃ちはそろそろ切り上げて、次の段階へ進みましょう』
『そうだね~~。実戦としゃれこもうぜ~~!』
「実戦……?」
 例のごとく元の世界さんと異世界ちゃんが強く煌めくと、一瞬にして周りの情景が変わった。
 ここは……? 何か見覚えがあるような……あ⁉
 足元の床はきれいにワックスが塗られていて、少し離れた両側の端には黒く塗られた溝、背後には白いピンが幾つもそびえたっていた。
 ボウリング場か! でも、何かサイズおかしくないか……?
 確かに、周りの様相は生きていたころに垣間見た、ボウリング場その物ではあるが、両側のガーターどうしの距離は十メートルほどあり、すぐ背後に並び立つボウリングのピンの大きさは、自分の背丈の二倍以上はあった。
 なんでこんなに大きいの……?
 何故だかよくわからないが、悪い予感しかしなかった。 
 遠く離れたレーンの先から、元の世界さんと異世界ちゃんの声が聞こえてきた。割と距離はあるのだが、不思議とハッキリと聞こえる。
『それでは、異世界ちゃんタイトルコールをお願いします』
『「ハジけろ青春! エクスプロージョンカウンターボウリング――!」の始まりだ~~!』
「……なんですか、それ……?」
 いつの間にかレーンの先に設置されていた、ピッチングマシンと戦車を合わせたような形の機械に、鉄人君が乗り込んだ。
 そして、ゴツンと重量感のある音が響くと、次の瞬間、砲口のような部分から勢いよく飛び出した。
 ピンやレーンと比例するように、巨大なボウリングの球が。
 巨大なボウリング玉が唸りを上げて、もの凄いスピードを襲い掛かってきた。
「ちょちょっと待ってぇぇぇ――――‼」
 勿論、そう言われてボウリング玉が待つもずもない。
 きれいにワックスが塗られているおかげで、やたらと滑るレーンの上を、ジタバタしながら慌てて横に避ける。
「ひぇぇぇ――――!」
 直前まで居た場所を、巨大なボウリング玉がもの凄い勢いで通過した。
 巨大なボウリング玉は、これまた巨大なピンに上手い角度で当たり、轟音と地響きを立てながら全てを弾き飛ばし、見事にストライクを叩き出した。
 だが、助かったと思った直後、何故か巨大なピンが次々と大爆発を起こす。
「なんでぇぇぇ――――――ッ‼」
 近くに居たおかげで、訳も分からずピンの大爆発に巻き込まれていく。
 気が付くと、いつの間にかレーンの上に横たわっていた。
 周りは、爆発など無かったかのようにきれいになっていて、巨大なピンはレーンの上に整然と並んでいた。
 一瞬、状況がつかめずに混乱したが、これまでの経験もあって直ぐに察しがついた。
 ……ケア〇ガかアレ〇ズでもかけられたのかな?
 きれいにワックスが塗られたレーンの上を、滑り転ばないように慎重に立ち上がる。
 そして、レーンの先に向かって声を張り上げた。
「なんですか、これっ‼」
 レーンの先から明るい声が聞こえてきた。
『「ハジけろ青春! エクスプロージョンカウンターボウリング――!」ですね』
『「ハジけろ青春! エクスプロージョンカウンターボウリング――!」だよ~~』
 これだけで理解できるなら、生きていたころいいように使われて、長時間労働などしていなかっただろう。
 また、レーンの先に向けて声を張り上げる。
「全然わかんないですっ‼」
『迫りくるボウリング玉を、魔光ブラスターで撃ち落としてください。ボウリング玉には赤く点滅する丸い部分がありますので、そこを正確に撃ち抜くと破壊されます』
『そこ意外に当てても破壊されないし~~、迎撃に失敗してピンが倒れちゃうと、大爆発を起こしちゃうから気を付けてね~~』
「そこじゃないっ‼ そこがわかんないじゃないっ‼」
『それでは、鉄人君お願いします』
『鉄人君よろシシカバブ~~』
 先程と同じように重量感のある音が響き、デストロイピッチングマシンの砲口から、巨大なボウリング玉が勢いよく飛び出した。
「クッソ! 全然話を聞かないな!」
 滑るレーンに対応する為、その場で片膝をついて座り、魔光ブラスターを構えた。
 狙いを定める為、スコープを覗いた。
 スコープ越しに映る巨大なボウリング玉は、何故か更に迫力が増して見えた。
 確か赤く点滅する丸い部分を、撃てって言っていたな……。
 目を凝らして確認する。だが、そういった部分は全く見当たらない。巨大なボウリング玉には、不規則な赤いラインが入っているのみだ。
 ……無い⁉ 無いんだけど。なんで? いや、ちょっと待て……あっ!
 丸い赤い点滅は見えない訳ではない。見えてるけど、認識出来ていなかっただけだ。
 高速で回転しているせいで、丸い赤い点滅がラインのように見えているのかっ!
「こんなの出来るか――――っ‼」
 思わず怒声を上げた次の瞬間、巨大なボウリング玉は、オレの上をそのままの勢いで通って行った。
 圧し潰されて某ド根性なカエルのようになったオレを、囃し立てるかのようにピンたちは大爆発していった。
 再び復活したオレは、レーンの先に向けて声を張り上げた。
「ギブしますっ!」
 動いている目標に当てるのは、かなり難しい。ましてや、高速で回転する的を見定めて撃ち抜くなんて、超一流のスポーツ選手やゴ〇ゴでもなければ不可能だろう。生憎こっちはギリギリ普通ライン? って感じのポテンシャルだ。そんな大層な動体視力なんて持ち合わせていないし、凄腕の射撃技術も持っていない。それでどうやってこのゲームを、成功させられるというのだ。
『しょうがないですね。では、新たにスキルを授けましょう。今度は「心眼」と「ピッチコントロール」になります』
『「心眼」は視野が広くなって、周りの状況が把握しやすくなったりするよ~~。「ピッチコントロール」は動体視力をイイようにして、見えている速度を変化させるの~~』
 自分の体全体が強く光った。恐らくスキルが授けられたのであろう
「ギブアップはスルーですか……って言うか、これ視野や動体視力ぐらいでどうにか出来るものなの?」
『まあ、やってみればわかるかと』
『危ぶむなかれ~~ヤレばわかるさ~~!』
 チョイチョイ猪〇出てくるな。


 レーンの上に片膝をついて、魔光ブラスターを構えた。
 重量感のある音の後に、デストロイピッチングマシンの砲口から巨大なボウリング玉が発射された。
 接近する巨大なボウリング玉に備えて、「心眼」と「ピッチコントロール」をONと唱えた。
 これは……⁉
 周りの景色が変わった。色彩が淡くなり輪郭が少しぼやけたように見える。
 これはスキルの影響なのか? なんでこんな感じに? いや、今はそれを考えているところじゃないや。
 迫りくる巨大なボウリング玉へ目を向ける。
「お!」
 ボウリング玉が高速で回転する為に、これまでラインのようにしか見えなかった丸い赤い点滅が、回転して流れていくのがゆっくりと見て取れた。
 それと、不思議な感覚だが、足元の滑るレーンの状態を、直接見なくとも手に取るように把握することが出来る。
 これがスキルの恩恵か。ちょっと見え方は変な感じだけど、これならどうにかなりそうだ!
 スコープを覗いて、巨大なボウリング玉の回転する丸い赤い点滅に、慎重に狙いを定める。
 そして、タイミングを合わせて引き金を引いた。
 銃口から目にも止まらぬ速さで閃光が発射され、巨大なボウリング玉に命中する。
 しかし、巨大なボウリング玉は閃光が命中したことなど、どこ吹く風で迫ってくる。
「外れたか⁉」
 これまで銃なんて撃つどころか、触ったことすら無かったのだ。スキルの恩恵があるとはいえ、少し練習したぐらいで上手くいくほど、世の中甘くはないだろう。
 ただ、それでもスキルを使用する前よりは、遥かにマシだ。
 こうなったら当たるまで、撃ちまくってやる!
 すぐさま狙いと、タイミングを見計らって引き金を引いた。
 発射された閃光は、残念ながら丸い赤い点滅には命中しなかった。
 だが、それでも今は構わない。兎に角レスポンスが大事だ。ひたすら一連の動作を繰り返していく。
 繰り返すごとに固い引き金が指を煩わせ、恨めしく思ったが、今は泣き言など言ってられない。
 一発、二発、三発と閃光は巨大なボウリング玉には命中していったが、それでも丸い赤い点滅には当たらない。
 巨大なボウリング玉は唸り声を上げて、間近まで迫った来た。
 チィ、ダメか……。
 諦めかけて引き金を引いたその時、閃光が丸い赤い点滅に命中した。
「あ、ヤッタ⁉」
 しかし、ここで思いもよらない展開が待っていた。
 丸い赤い点滅に閃光が命中した次の瞬間、巨大なボウリング玉が大爆発を起こしたのだ。
「はぃぃぃ――――――⁉」
 間近から爆風と破片をモロに食らい、オマケに後ろに設置されていたピンまで誘爆してくる始末。
 辺り一面は大惨事と化した。
 三度みたび復活したオレは、またまたレーンの先に声を張り上げた。
「どういうことですかっ! 丸い赤い点滅に命中したら、破壊されるんじゃないのですかっ!」
 元の世界さんと異世界ちゃんがしれっと言った。
『ええ、爆発して破壊されます』
『爆発は破壊だ~~!』
「……そんなんインチキじゃん」
 その後も「ハジけろ青春! エクスプロージョンカウンターボウリング――!」は、まだまだ続いた。
 デストロイピッチングマシンから発射される巨大なボウリング玉は、球筋がストレートだけではなく、カーブやシュートとなどの変化球も加わって、更に難易度を増していった。
 それでも、爆死という極限状況のなせる業か、何度も酷い目に合いながらも繰り返していくうちに、射撃技術も格段に向上し、巨大なボウリング玉を爆発の影響の範囲外で、どうにか撃ち落とせるようになっていった。
『大分、上達してきましたね』
『ホント~~。デューク〇郷や、東〇秋に肩を並べる姿が目に浮かぶよ~~』
 元の世界さんと異世界ちゃんからの言葉に目を細めた。
「……………………………………」
『おや、反応が悪いですね』
『リアクション薄いな~~』
「……そりゃそうでしょ。これまでのことから察するに、これで終わりって訳じゃないですよね? 今度は何をやらせるつもりですか!」


『それでは、ご期待に応えまして、次へとまいりましょう。異世界ちゃん、タイトルコールをお願いします』
『ホイよ~~。お次は「成層圏まで飛んで行け! 驚愕の爆裂人間ファイヤーワークス大車輪――!」だよ~~!』
「……相変わらず内容がわかるんだか、わかりにくいんだか、よくわからないタイトルコールですけど。ホントに修行なんですか、それ?」
『一度やってみれば、直ぐにわかりますよ』
『「習うより慣れよ」って言うでしょ~~』
「習いたくも慣れたくもない、タイトルコールなんですけど」
『取り敢えず、これをしっかりと持っていてください』
 唐突に元の世界さんからポンと渡されて、思わず両手で掴まえた。筒が幾つも束ねらていて上部に導火線の付いた、如何にもダイナマイトという代物を。
「ん⁉」
『それじゃあ、火を点けるね~~』
 異世界ちゃんが至極当たり前のように、導火線に火を点けた。
「へっ⁉」
『それでは、鉄人君よろしくお願いします』
『鉄人君、ヨロピクルス~~』
「えっ⁉」
 いきなり鉄人君に強烈なタックルをかまされた。
「オゴッ⁉」
 自分でも不思議であったが、タックルで強引に打倒されても、律義にダイナマイトは放さずにしっかりと掴まえていた。
 地面に横たわって無防備な状態のオレの足を、鉄人君はしっかりと掴まえる。そして、強引に振り回しながら回転し始めた。
「えっ⁉ えっ⁉ えっ⁉ なに⁇ なに、これ――――――‼」
 十分に回転して勢いをつけると、鉄人君は力いっぱいに空へ放り投げた。
 オレを。
 そして、ダイナマイトが爆発し、断末魔が空に響き渡った。
「ウギャァァァ――――――‼」
 無論、いつもの様にア〇イズで復活したオレは、開口一番、元の世界さんと異世界ちゃん二人に怒りの声を張り上げた。
「なんですか、これっ‼」
『「成層圏まで飛んで行け! 驚愕の爆裂人間ファイヤーワークス大車輪――!」ですね』
『「成層圏まで飛んで行け! 驚愕の爆裂人間ファイヤーワークス大車輪――!」だよ~~』
「いや、まったくわからないですし、わかりたくもないですけど、なんなんですかっ!」
『世に言うジャイアントスイングで、空に目がけて全力で放り投げます。貴方を』
『花火に見立てたダイナマイトを爆発させて~~、その散り際の儚さと美しさを競う感じだね~~』
「なっなんで⁉ なんでそんなこと! って言うか、これって修行なの? これのどこに修行の要素があるのですかっ‼」
『修行と言えば修行ですね。ただ、いささか趣味の趣に偏っていますが』
『修行と言ったら修行だよ~~。ちょっと面白いかなぁって、思ってのところもあるけど~~』
「なんじゃそりゃぁぁぁ――――――っ‼
 …………………………
 …………………………
 …………………………
『それでは、次のゲームへと行きましょう』
「いや、もう完全にゲームって言っちゃっているし、修行はどこいったのですか?」
『今度は「何が出るかな? 何が出るかな? インド人もビックリ! 運命のガラガラ爆弾――!」だよ~~!』
「……言っている意味は、さっぱりわかりませんけど、爆発するのことだけはわかりますね」
『こちらをご覧ください』
 元の世界さんが示したところには、いつの間にか福引などで使用される、抽選機がポツンと置かれていた。
「……今までのものと比べると、えらい地味な感じが……」
『抽選機の中には、白玉と黒玉が入っています』
『ガラガラを回して、白玉が出ればセ~~フ!』
「……黒玉が出たらどうなるのです?」
『黒玉には火薬がギュウギュウに詰まっていて、落ちた瞬間に大爆発するよ~~。因みに、破壊力は関東一円が木っ端みじんに無くなるぐらい~~』
「強力すぎるでしょ! なんでこんな地味なものに、そんな破壊力を求めるんですか!」
『それでは、ハンドルと回してください』
『命ある限り回すのだ~~!』
「……そりゃあそうでしょう。黒玉が出たら爆死するじゃないですか。もう今更いいですけどね。取り敢えず回しま―す!」
 一応祈りを込めて、抽選機のハンドルを回す。
 ガラガラと音を立てて出てきたのは――。
 黒玉であった。
「あ⁉」
 その瞬間、強い光と衝撃を感じた。
 …………………………
 …………………………
 …………………………その他諸々色々なことを以下省略。
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