アイ・アム・ヒーロー・イン・マイ・ドリーム!

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一話 イン・ユア・ドリーム

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パンッという衝撃が頭に走って目が覚めた。



「...い、おい!夢野!」

「はいぃ!」



咄嗟に大声が出てしまった。



「あのなぁ、夢野。っていうかお前、教科書は?」

「え?いや、あの...忘れました。」

「はぁ。もうこれ何度目?え?どうすんの?」



私は隣の席のスガさんを見て言った。



「あの、教科書見せてもらっていいですか?」

「別に良いケド」

「ありがとう。」



この答えの決まった問答をして私はスガさんの机に自分の机を寄せた。



「授業は居眠りして、他人に迷惑かけて、勉強もできなくて。 もうお前、いいよ。」

「すんません...」

「よし!じゃあ授業再開するよー!」



私はぼっちだ。

正真正銘の。

親もいない。

友達も見ての通りだ。

努力はした。



新学期が始めるたびに頑張ってグループ入った。

でもそういうグループってのは少し時間が経てば、誰かを馬鹿にして笑いを取ったりする奴が必ず現れる。

自分ではどんなに上手くやってるつもりでも私はいつもすぐにグループから追い出された。

一つのグループで失敗すれば最後、終いには先生にさえ嫌われる。



まぁ、忘れ物した私が悪いんだけど。

寝てた私が悪いんだけど。

でもまぁ、五時間目に国語の授業を入れる、頭のイカれた教師の方が悪いと思うけど。



そんなことを考えていたら、やっとホームルームが来た。

私は誰よりも早く席を立ち、帰路に向かった。



あいらぶマイホーム。

ボロアパートだけど。

今日バイトあるけど。

サボろうかな...

いやそれはダメだ。

今回は真面目にやるって決めた。

じゃなきゃいつか風俗で働かなきゃいけなくなる。

それは嫌だ。



「ユメノさん!」



私は反射的に声のする方に振り向いた。

そこにはクラスでもかなり大きい男子グループのリーダ格の男が立っていた。



「斎藤さん?」

「うん。あのさ、あのさ、ちょっと話があるんだけどいい?」

「え?」



彼が私の手を引いて向かった先は使われていない教室だった。

薄く埃の被った机が不恰好に並んでいる。



「それで話って?」



私は聞いてみた。

内容は予想できた。





パターン1



「好きです!付き合ってください!」



パターン2



「ずっと前から好きでした!付き合ってください!」



パターン3



「大好き!!!!俺と付き合って!!!」







どれが来ても返事は一つ。



『ちょっと考えさせて』



正直、付き合いたい。私だって男子とイチャイチャしたい。

でもここで一旦焦らすのが『イイオンナ』てヤツじゃないかしら。



「あのさ、あのさ、ユメノさんさ、いじめられてるじゃん?」

「え?」

「いやさ、いやさ、俺さ、分かるんだよね。だからさ、俺さ、 助けてあげようと思って。」



彼は顔を赤らめながら興奮気味でそう言った。



「それは...ありがとう。」



正直、『いじめ』っていう程でもないし放っておいて欲しかったけど、彼の善意が感じられた。



「うん!任せてよ!それでさ!それでさ!あのさ!代わりにさ! 俺たちとさ!!セックスしてよォ!」



「え?」



その瞬間教室のドアが開き何人かの男子生徒が一斉に入ってきた。

あぁ。そういう事か。

なるほど。

私はいつもこんな感じだった。

ちょっといい気になった瞬間、どん底に落とされる感じ。

施設にいた時も割とこんな感じだったし。

毎日サイアクな日々だけど嬉しいこともちょっとある。

でもその瞬間に一気にどん底に落とされる。



男子生徒たちは私の手足を押さえつけ、誰かはスマホを私の 方に向け、誰かはベルトをかちゃかちゃと外していた。

まぁ、いいか。

レイプが初体験でも、風俗が初体験でも。パパ活が初体験でも。

どうせ私の人生はこれからもっとサイアクになるし。

私は諦めて、抵抗をやめた。

それでも、やっぱり怖くてギュッと目を瞑った。



死ね!ぶっ殺してやる!ファッキュー!このイカれ◯ンポ野郎!



って言いたかった。

どうせ犯されるなら思いっきり暴言吐いてやろう、

人に言った事ないくらい汚い言葉言ってやろう。

そう思ったけど口は動かない。

そして男子生徒たちが乱暴に私の服を脱がそうとした時、ガラガラというドアが開く音が埃っぽい空気を通して私の耳に伝わった。

男子生徒たちも手を止めて音の方を見る。

その瞬間、



「お前たちはファキューだぜぇ!ロイヤルストロングパーンチィ!」



と言いながら走り出し、少し私たちに近づいたところで地面を蹴り、

体がフワッと浮かび、私を犯そうとした奴らがその場を離れ、

アンパンマンさながらの姿勢のまま頭から地面に衝突した男子生徒がいた。



「いっっっっっったぁぁあぁ!!」



そんな彼の叫び声が教室中に響いた。

そして、その叫び声と同時に男子生徒たちは一目散にドアの方へと走り出した。



...沈黙。

沈黙である事だけが理解できた。それ以上は何も分からない。

例えばそう、私は今下着姿ってコトとか。



「ひゃあ!」



自分でも乙女っぽい声が出たなと思う。

私は脱がされたワイシャで体を隠す様に覆った。

ふと地面に倒れている男を見た。

学生服を着ていることは分かるが顔は見えない。



「あ、あの、ありがとうございます。」



私がそういうと男はモゾモゾと動き出した。

そして立ち上がり、埃を払った。



「別に失敗じゃない!」

「え?」

「別に失敗じゃない!」



何回言うんだ?



「あ、そうですね。」



私は適当にそう言っておいた。

すると男は私の言葉を背中で受けるように振り返り教室の外に出て行った。



一体何だったんだろう。

というか頭から血ぃ出てたけど。

とにかく助かった。

私はくしゃくしゃになった制服を着て、そのままバイトに行った。



バイトが終わり、家に帰ると風呂に入り、そのまま寝床に着いた。

お金に余裕がないから夜ご飯は食べない。

だから私は基本的に寝る時間は早い。

目を瞑ると、すぐに眠れる。



ほら、今もこうやって...







-------







肩に人がぶつかった衝撃で気が付いた。

ん?

何だ?

なんだか騒がしい...

私は周りを見渡した。

そして私は目の前に広がっている光景を見て絶句した。



だって空には大量の車が飛んでるし、高速道路的なのはガラス張りでジェットコースターみたいにくねくねしている。



「何これ...どういう...」



私はしばらく唖然としていたが、我に返りこの辺り探索し始めた。

歩けば歩くほど、意味が分からない。

なんで私こんなところに?

ここはどこ?

しかしその他諸々の疑問もすぐに解決した。



私の最後の記憶はベッドに入ったとこだ。

ということはコレは夢だ。

いわゆる明晰夢ってやつ。

そうとしか考えられない。



なら、いつか目が覚めるし、こんな不思議な体験そうそうそうできるものじゃない。

私はそこら辺の車を盗み、爆速で飛んでやろかと思い盗めそうな車を探した。



「え?放課後の...?え?コレどういう...」

私はそんな声が聞こえたので振り返った。

そこにはあの『ロイヤルストロングパンチ』の男が立っていた。

「え、あんたは...」

『あんた』なんて人に向かって言ったことはなかった。

「やっぱり!あなた放課後いじめられてた人だ!」



なんで?っと思ったが別に不思議な事じゃないとすぐに気が付く。

だって夢で人が出てくるなんて普通の事だし。

しかし彼はこう言った。



「これ、夢ですよね!?」



「え?」



いや、いやいやいや。

おかしいおかしい。

どういう事!?



「これ、アンタも夢ってこと?」

「いや、そうです!多分だけど。だってそうとしか考えられない!」



いやどういう事だよ!

こんなことあり得る!?



「だってこれは夢だとしか考えられない!なぜなら俺は...」



彼はよっぽど興奮しているのか一人でそこそこ大きい声で何か言っている。



「あ、あの~」

「つまりこれは神からの...」

「おい!てめぇ!!」

「ひっ!?」

「とりあえず座れるところに行きませんか」



私達は町を歩いて腰を掛けれる場所を探した。

それにしてもすごい。

これが夢なら私はとてつもない想像力を持っていることになる。

通りすがる人の顔。

看板に書いてあるよく分からない文字。

建物の中まで、作りこまれている。



そんなことを考えていると公園を見つけた。

私はベンチに腰を掛け彼に話しかけた、



「まず、あなたの名前は?」

「夢見です。」

「私は夢野。確認だけど夢見さんは昼間のパンチの人だよね?」

「えぇそうですとも、あのパンチはロイヤルストロングパンチと言いまして、空気中の酸素を肺に取り込んでそして...」



夢見さんもこれは夢だと言った。

昼間の出来事が印象的過ぎて私が夢の中で想像したのが目の前にいる彼だとすると、『僕もこれが夢なんです!』なんて言うだろうか。それに勝手に人に名前を付けるだろうか。



いや、あり得ないことではない。

これはただの夢だ。



---



「ねぇ、これどういう事?」



あれからかなり時間が経った。

正確に言えば一夜が過ぎた。

今は朝方。

お腹は減ったし、眠い。

悪夢だ。



「分からない・・・。でもそろそろ起きてもいい頃だと思うんですけどね。 あ!そうだ。こういうのってすごい衝撃とか与えたえられたら覚めるんじゃないですか?」



彼はふとそう言った。



「試しに僕の事を思いっきり叩いてみてください!」

「え?」

「ほら!」

「ほんとにいいの?」

「えぇ!」



彼は自分の左頬を突き出すようにして目を瞑った。



「はぁ!」



私は彼の頬に思いきりビンタした。



「いったぁあぁ!」



彼は赤くなった頬を両手で抑えた。

そりゃそうだ。

だってアンタは私が想像して夢の中に登場させた人物の一人なんだから。

『ソレ』で目が覚めるとしたら、私だ。



「なんで嬉しそうなの?まぁいいわ。今度は私の事を殴ってみて。」

「え?」



彼は一瞬戸惑ったがすぐに

「行きますよ」と言いながらベンチを立ち助走を始めた。



「え?いや、そんなに本気で来なくても...」



「ピースアンドダークネス!時は満ちたりィ!ファイナル・ストライカー・終焉のアルベルト、ここに参上!!行くぞ!この世を終わらす、終幕の拳ィ!ザ・エンディング・スラッグゥゥゥウ!」



彼はそう言いながら私の方に走ってきた。

そして思い切り拳を握り締め私の顎を殴った。

私はベンチから崩れ落ちた。



「何すんだテメェ!イカれてんのか!ブチコロスぞォ!!」

私は思わずそんな言葉が出た。

「ヒィ!ごめんなさぁい!でも殴れって夢野ちゃんが言ったんじゃ無いですかぁ!」

「だからってあんな殴り方するヤツいねぇだろ!」

「いやでもぉ!」



私は顎を抑えながらベンチに座った。

自分でも少し驚いた。

現実世界ではどんな事があっても言えなかった言葉がスラスラと出てきた。

そもそもこんな口調で話した事自体が初めてだ。



「ごめん。言いすぎた。」

「いえ、この『終焉のアルベルト』正直、美女の罵倒は最高でした。」



え!?美女??

今、美女って言った?



「ってちがーう!そこじゃない!キモい!夢見さんキモい!」

「罵倒ありがとう!」

「キッモ!」



私たちはそこから昼過ぎまで二人でふざけながら、笑いながら過ごした。こんなに笑ったのは人生で初めてだったと思う。

そしてお互い、笑い疲れてきた頃、これが夢だという事を思い出した。

全然目が覚める雰囲気は無い。



「で、どうする?」



私はこの人生で初めて仲良くなれた彼が、私が都合よく夢の中で作り上げた人物であるという事は、信じたくなかった。



「こうなったら最終手段に行くしかない!」

「ほう、その最終手段とはなんだね?」

「ソレはズバリ『自殺』!」

「自殺?」

「夢の中で死ねば現実世界で目が覚める。よくある話じゃん。と、言うわけであの空飛ぶ車を盗んで空から飛び降りましょう!!レッツラゴー!」

「ゴー!」



色んな感覚が麻痺していたんだと思う。

常識的に考えればここでなんの迷いもなくし死ねるわけがない。

夢の中とは言え、『死』なんて物は本能的に拒否するはずだ。

でも、本能が麻痺するほど、私は興奮していた。

初めて出来た友達が夢の中のイマジナリーフレンドだなんて惨めだけど。

はぁ、これが現実ならなぁ。



「よし!行くよ!!」



かなり高い所まできた。



「せーの!!」



私は思い切り車からから飛び降りた。



---



「っ!!はぁ、はぁ、はぁ。」



目が覚めた。

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