【虐げヒロインはドSエリートに翻弄される】〜囚える鎖を放すか否か(仮)

光月海愛(こうつきみあ)

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追い込みと反撃

危ない人

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 私が返事をする前に、藍野さんは賃金台帳から必要分を取り出した。

「データでは持ってたけど、やはり現物もあった方がいいから」

 まるで、私がお父さんの横領の件を知ってると思ってる口ぶりだ。

「……雅夫兄さんとは買収の話だけをしたんですか?」

「いや。向こうは俺の事、色々調べてたみたいでね。明日美も聞いただろ?」

「藍野さんのお父さんのことは、竹林部長から聞きました」

「そう」

 短く返し、藍野さんは倉庫の隅の、小さな段ボール箱に視線を向けた。

「梅野二代目の社長、つまり、明日美のお父さんは、取引先と通謀して、高額な請求書を発行させて正規の金額との差額をキックバックとして受け取っていた可能性がある」

「……不正をしていたのは、藍野さんのお父さんじゃなかった?」

「あぁ」

 箱から過去の請求書を取り出し、中を確認して頷く。

「発覚時の時のために、父の給与に一部を加算しておいたんだろう。当時から労務がやるべき給与明細入力も経理部長である父が行い、その後に社長がチェックして承認していたらしいから」

「藍野さんのお父さんは、嵌められたと分かって何故会社を訴えたりしなかったんでしょうか?」

「証拠を掴めなかったんだろう。当時から規模の割にはアナログでクラウド上に改竄の痕跡もなかったみたいだし、何より、社員達に冷たく横柄に接していた分、皆が父の汚職に疑問を抱かなかったらしい」

「藍野さんのお父さんって、そんな感じだったんですか?」

 ――意外だ。

「そう。ドS通り越してサイコパス。俺はそんな父に似ているんだよ」

 サイコパスと言い切った藍野さんの目が怖かった。
 ゾクッとしたし、反面、可哀想にも思えた。

 藍野さんは、お父さんに虐待されていたのかもしれない。
 私もS気質の雅夫兄さんに虐められているが、半分しか血は繋がっていないし、愛情こそ薄かったものの、父は暴力は振るわなかった。

「……私は、あなたが酷い人とは思えません」

「いや、俺はそういう奴だよ。明日美に公然猥褻同然な事をさせて、他の男にその姿を見られたのを知って興奮するような変態だ」

「……え」

 雅夫兄さんが探偵事務所に撮らせた写真の事だ。
 見せられた時、顔から火が出たかと思うほど恥ずかしかった。

「だから、そうやって羞恥で泣きそうになる明日美を可愛いと思うんだ」

 藍野さんは、私の頬を撫で、そして指を開いたシャツに引っ掛けた。

「このまま、ここで犯したいと思う、危ない奴だよ」

 



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