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追い込みと反撃
ゴシップと見合い
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【家具のUMENO 三代目社長に家庭内DV、二代目に背任隠蔽と私文書偽造の疑い】
週刊誌の影響はさほど無いと思っていたのに、この記事がネットで拡散されるや否や、取引先からの問い合わせや、顧客からの契約破棄の連絡が後を絶たなかった。
汚職の件は時効を迎えていたため、私への虐待がネット上の炎上の火種となっていた。
当然、瑠衣のお見合いも破談に。
あれから私は出社していないけれど、会社には記者が取材に来ているらしい。
「どいつもこいつも、あんなゴシップネタに振り回されやがって!」
かく言う兄雅夫兄さんと継母も、世間の目が怖くて外には出ていない。
「私だって恥ずかしくて学校行けないよ、どうしてくれんのよ!」
彼氏と別れさせられたものの、お見合い相手が一流企業の御曹司だったからか乗り気になって、友達にも結婚を仄めかしていたという。
「明日美のパパ、何で横領とかしたわけ?」
こんな状況なのに食欲はあるらしく、私が作った料理を皆で囲んで食べている。
食欲がないのは、アル中の病状が進行した凱也と、記事の中で注目を集めている、被害者の私だ。
「俺以外にも隠し子がいて、そいつらの生活費に回してたんだとよ、な、母さん」
継母は頬を引きつらせている。
「女癖悪かった上に騙されやすかったからね」
その父を騙していたのは、きっとこの継母もだ。
横領の件で深く関わってるに違いないと私は見ていた。
「週刊誌にネタ売ったのは藍野だよな」
雅夫兄さんがキッチンに立つ私を睨む。
「……」
それは間違いないと思う。タイミング的にも、記事の内容からも。
″性的虐待″と書かせなかったのは、彼の、私への慈悲と思いたい。
「仕事への悪影響を狙って対象先のゴシップ書かせるなんて、藍野も羽取ホールディングスも卑怯な真似するわ」
「ホスティル・テイクオーバー(敵対的買収)とか倫理に反する行為だろ」
倫理なんて、どの口が言うの?
「M&Aなんてしたら、梅野家の人間は退陣させられるからね。絶対に折れちゃいけないよ」
黙々と食器を片付けている私に向かって、継母がこう付け加えた。
「瑠衣の見合いは失敗したけど、明日美と結婚したら支援してもいいって社長が現れたからね」
「……え……」
食器を洗う手が止まった。
――結婚?
「へぇー、すげーじゃん。でも何で瑠衣じゃなくて明日美?」
雅夫兄さんが興味津々な声を出した。
「だって、瑠衣は私の連れ子だからね。相手は梅野家の血を引いた娘が良いって言うのよ」
「財産分与は連れ子も実子も平等なのにな」
「それでも、死んだジジイが″屋敷は明日美に″って遺言遺してるからねぇ」
継母が溜息をついて、広いリビングを見回す。
「ねぇ、その物流会社の社長ってイケメンなの? 何歳?」
瑠衣がちょっとだけ羨ましそうにする。継母は愉快そうに口角を吊り上げた。
「四十代半ば。明日美よりふた回り上だね。ちょっと髪は薄いけど金持ってるせいか肌はツヤツヤよ。顔はフレンチブルドッグに似てるわね」
「ぶはっ!」
雅夫兄さんが豪快に笑い、瑠衣が「えー、かわいそう」と私を気の毒そうに見た。
ふた回り上。
フレンチブルドッグ……。
相手の容姿が容易にイメージ出来た。
「人は見た目じゃないからね! 明日美、見合い断ったら今度こそタダじゃ済まないよ!」
私に断る権利なんてない。
収入ゼロとなった私は、唯一、私のモノであるこの家に住み続けるしか生きられない。しかし、それも、この人たちの手によって奪われるに違いなかった。
「……分かりました」
竹林さんが言っていたように、私がこの家族から自由になるには、結婚しか方法は残っていないように思えた。
週刊誌の影響はさほど無いと思っていたのに、この記事がネットで拡散されるや否や、取引先からの問い合わせや、顧客からの契約破棄の連絡が後を絶たなかった。
汚職の件は時効を迎えていたため、私への虐待がネット上の炎上の火種となっていた。
当然、瑠衣のお見合いも破談に。
あれから私は出社していないけれど、会社には記者が取材に来ているらしい。
「どいつもこいつも、あんなゴシップネタに振り回されやがって!」
かく言う兄雅夫兄さんと継母も、世間の目が怖くて外には出ていない。
「私だって恥ずかしくて学校行けないよ、どうしてくれんのよ!」
彼氏と別れさせられたものの、お見合い相手が一流企業の御曹司だったからか乗り気になって、友達にも結婚を仄めかしていたという。
「明日美のパパ、何で横領とかしたわけ?」
こんな状況なのに食欲はあるらしく、私が作った料理を皆で囲んで食べている。
食欲がないのは、アル中の病状が進行した凱也と、記事の中で注目を集めている、被害者の私だ。
「俺以外にも隠し子がいて、そいつらの生活費に回してたんだとよ、な、母さん」
継母は頬を引きつらせている。
「女癖悪かった上に騙されやすかったからね」
その父を騙していたのは、きっとこの継母もだ。
横領の件で深く関わってるに違いないと私は見ていた。
「週刊誌にネタ売ったのは藍野だよな」
雅夫兄さんがキッチンに立つ私を睨む。
「……」
それは間違いないと思う。タイミング的にも、記事の内容からも。
″性的虐待″と書かせなかったのは、彼の、私への慈悲と思いたい。
「仕事への悪影響を狙って対象先のゴシップ書かせるなんて、藍野も羽取ホールディングスも卑怯な真似するわ」
「ホスティル・テイクオーバー(敵対的買収)とか倫理に反する行為だろ」
倫理なんて、どの口が言うの?
「M&Aなんてしたら、梅野家の人間は退陣させられるからね。絶対に折れちゃいけないよ」
黙々と食器を片付けている私に向かって、継母がこう付け加えた。
「瑠衣の見合いは失敗したけど、明日美と結婚したら支援してもいいって社長が現れたからね」
「……え……」
食器を洗う手が止まった。
――結婚?
「へぇー、すげーじゃん。でも何で瑠衣じゃなくて明日美?」
雅夫兄さんが興味津々な声を出した。
「だって、瑠衣は私の連れ子だからね。相手は梅野家の血を引いた娘が良いって言うのよ」
「財産分与は連れ子も実子も平等なのにな」
「それでも、死んだジジイが″屋敷は明日美に″って遺言遺してるからねぇ」
継母が溜息をついて、広いリビングを見回す。
「ねぇ、その物流会社の社長ってイケメンなの? 何歳?」
瑠衣がちょっとだけ羨ましそうにする。継母は愉快そうに口角を吊り上げた。
「四十代半ば。明日美よりふた回り上だね。ちょっと髪は薄いけど金持ってるせいか肌はツヤツヤよ。顔はフレンチブルドッグに似てるわね」
「ぶはっ!」
雅夫兄さんが豪快に笑い、瑠衣が「えー、かわいそう」と私を気の毒そうに見た。
ふた回り上。
フレンチブルドッグ……。
相手の容姿が容易にイメージ出来た。
「人は見た目じゃないからね! 明日美、見合い断ったら今度こそタダじゃ済まないよ!」
私に断る権利なんてない。
収入ゼロとなった私は、唯一、私のモノであるこの家に住み続けるしか生きられない。しかし、それも、この人たちの手によって奪われるに違いなかった。
「……分かりました」
竹林さんが言っていたように、私がこの家族から自由になるには、結婚しか方法は残っていないように思えた。
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