【虐げヒロインはドSエリートに翻弄される】〜囚える鎖を放すか否か(仮)

光月海愛(こうつきみあ)

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長い冬

明日美の虐げられ日常 (オフィス)

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「明日美さん、外線二番に北営業所からお電話です」

 上野さんの無愛想な声に、私は重い腰を上げる。手を汚しながら、複合機に詰まった用紙を取り除いていた所だ。

「……はい」

 詰まらせた張本人である上野さんにシワシワになった紙を渡し、受話器を取る。

「お疲れ様です。梅野です」

「お疲れ様ですー。実は昨日、所長が買ったパソコンの設定を明日美さんにお願いしたいんです」

 間宮という営業マンの頼みに、私は顔をしかめた。

「本社に稟議をあげず、営業所独断で新品を買われたんですよね? それなら、そちらで使えるようにして頂けますか?」

「明日美さんはUMENOのIT担当者でしょ? それくらいチャチャっとしてくださいよ」

「チャチャっと出来ないから、稟議回ってきたものを事前に設定してパソコンをお送りしてるんです」

「いいから今日中にお願いしますね!」

 ガチャ! と一方的に電話を切られ、私は深い息をついた。
 IT担当と言っても、全然詳しくないのに、ある日突然 若いという理由だけで兄である社長に無理やり就かされたのだ。
 UMENOは、インテリアの総合商社として、本社を初めとした関東域に七つの営業所を持つそれなりの企業だ。
 パソコンもリースにすれば、設定を遠隔操作でサポートしてくれる所もあるのに。
 うちの会社の場合、″IT担当″という肩書の私の元へ壊れたパソコンや端末が届いては、修理可能なものはデータを取り出して初期化、直ったら弊社用にカスタムして使えるようにする、というのを繰り返している。

「今から北営業所に行ってきますね」

 事務員の上野さんに声を掛け、部屋を出ようとするも、

「あ、明日美さん、その前に応接室の蛍光灯を替えて貰っていいですか?」

「急いでるんですけど」

「こっちも今から昼休憩に入りますので、社長達に気付かれる前にお願いします」

 どんなにぞんざいに扱われようと、一応、経営者の家族である私は、従業員の休憩を確保しなければならない。
 手荷物を一旦置き、備品室から蛍光灯を見つけて応接室へ。
 パンプスを脱ぎ脚立に乗っていると、入り口のドアが突然開いた。

「ようやく替えてるのか」

 ハイブラスーツに身を包み、小馬鹿にしたような表情で私を見上げているのは、現社長の雅夫まさお兄さんだ。
 経営者としてはどうかと思うミディアムロングのパーマヘアで、眉は綺麗に整えられ、細い目元が余計にキツく見える。しかし肌は少年のような艶がある。
 私より八歳上の三十三歳だけど、実年齢よりもうんと若く見えるのは、装い云々の前に苦労知らずだからかもしれない。

「切れてるの知りませんでした」

「口答えすんなよ、総務課なら全体に目を配っとけ!」

 雅夫兄さんが脚立に軽く蹴りを入れた。

「あっ……!」

 













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