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恋心

キス

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 ″ 美海のことが女の子として好き……″


 「……う、うそ」

  信じられない。


  布団からすっかり身体ごと出てしまった私は、颯斗くんの告白がまるで夢の中の出来事みたいに感じられて……、


「私、まだ寝てるのかな?」

 ほっぺをつねって、颯斗くんを笑わせた。

「俺が美海の夢に現れることが出来たら、こっぱずかしい位の愛の告白を何度でもするよ」

 そして、つねる手を退かすように、掌を掴んだ颯斗くんは、私の頬をキレイな大きな指で包み込んだ。



「せっかちかもしれないけど、……キス、していい?」


 「……キス?」

 男の子に好きと言われたことも人生初経験だったうえに、そんなことをまさか求められる日が来るなんて。
 しかも、それが、この颯斗くん……。


 「あ、あの」

  私の頬を掴む颯斗くんの目は、優しさでいっぱいだけれど本気っぽい。


 「……イヤ?」

 「そんなこと……!」


  あるわけない。

  颯斗くんなら、全然……。

  でも、展開が急過ぎて、気持ち追い付かない。


「眠っていた時が長かった分、欲しいと思ったりやりたいと思ったことは成し遂げたい」


「……颯斗くん……」


 驚きまくりだけど、そんなこと言われたら……、


「自己中だけど、実現させて」


 目を閉じるしかない。

 瞼をおろしたと同時に何故か呼吸も止める。

 そんな私の頬を、もう一方の手が包み込んだのを感じたと同時に、温かい空気が鼻と口を覆った。

  柔らかいものが唇に触れて、そして、直ぐに離れた。

  とても、優しいキスだった。



 
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