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変化

初めて

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  優しい温かい、そして数秒で終わったキスだったけれど、私は直ぐに大きく息を吸った。

「何……、美海、息止めてたの?」

「う、うん」

  颯斗くんがそんな私を抱き締める。

  背中と胸元に感じる男の子の力。

「実は俺も!」

 硬くて大きな温もりに目眩がしそうだった。

 ドキドキしながら聞いてみる。


 「颯斗くん、……もファーストキス?」

 「当たり前じゃん! 初恋なんだから!」

 「そっか」

  写真で見た幼い時の颯斗くんは可愛かったから、とっくに誰かと両思いだったり、ふざけてチュとかしたことあったかな、なんて思ってた。

「美海、思ったより柔らかいのな」

「へ?!」

  突如、ストレートな感想を言われて思わず包み込む颯斗くんの両腕から逃げる。

「それ、ボッチャリってこと?」

「そーじゃないよ、そんなんじゃなくて!」

 ちょっと、″ しまった ″ という感じの表情を浮かべて、颯斗くんは恥ずかしそうに言った。

「女の子らしいって思ったんだよ。やっぱり美海は女の子だなって」

  フツーならイヤらしく聞こえるそんな表現も、心がやっと思春期に突入した颯斗くんが言うと、素直な感想に聞こえた。


「……うん、そうだよ。私は女の子だし、颯斗くんは男の子……」

 私もたくましい身体にドキドキしたし、お互い様だ。

  フフ……と、二人で笑ってると、

「里さーん、帰れそう?」

 カーテンを割って養護の先生が顔を出した。


「は、はいっ!」

 キスしている時じゃなくて良かった。
颯斗くんと二人、慌てたような返事をしたけれど、先生に怪しんだ様子はない。

「……里さんのお母さんに電話したんだけど、来なかったわね」

 それよりも、親が迎えに来ないことを不憫そうにしていた。

「俺が自宅まで送り届けますから」

「あら、そう? 帰り遅くなるわよ?」

「俺は男だから」

 ベッドから降りた私を颯斗くんが支える。
 絵に描いたような紳士的な男の子。

 こんな子が本当に私を好きになってくれたんだろうか?
  いまだに信じられない。


 「……ありがとうございました」

 二人で鞄を持って、保健室から出ていこうとすると、

「あ。待って」

 先生が颯斗くんを呼び止めた。

 「熊川くんも、あれから倒れたりしてない?」

 先生は、以前、サッカーしてる颯斗くんが倒れて、その倒れ方が不自然だと脳の病気ではないかと察知した。


「……はい。ないです。あん時は当たったボールが半端なく速いやつだったから」

「そう、……ならいいけど」


 そう言いながらも養護の先生は心配な様子。

 じつは私も気になってた。


 「俺の身体の悪いところは、全部無くなってるんで」

 「そうね、今は悪性腫瘍もキレイに治る時代だものね」

 「はい」

  どんなに医学が進歩した今でも、どこかしら颯斗くんの身体が無理をしていないかと。


  
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